改もがみ型護衛艦オーストラリアへ 《防衛装備品輸出シリーズ#2》

今日はこの話題です。
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1.平和へ五類型撤廃を急げ


防衛装備移転三原則の運用指針改正について、たとえば産経新聞は賛成の論陣を張っています。

3月7日、産経新聞は「武器の輸出 平和へ5類型撤廃を急げ」という社説を掲載しています。

件の社説から一部引用すると次の通りです。
・これまでも国際共同開発や外国のライセンスを用いて生産する武器の輸出は例外的に認められることがあったが、国産品の輸出ができないといった制約があった。
・武器輸出は平和国家の理念に触れるといった反対論があるが、間違いだ。日本が武器輸出に二の足を踏めば、中国やロシア、北朝鮮といった反日的な専制国家が喜ぶだけである。
・欧米の民主主義国が日本の従来の姿勢にならって武器輸出を控えれば世界はどうなるか。ウクライナは抗戦の術(すべ)を失い、侵略者のロシアに蹂躙(じゅうりん)される。武器輸出反対論は、道義にももとる似非(えせ)平和主義にすぎない。
・日本は朝鮮戦争当時、多くの銃砲弾を生産して国連軍の主力である米軍へ納入し、北朝鮮の侵略を阻むことに貢献した。この史実を思い起こすべきだ。
・防衛装備品、とりわけ武器を輸出すれば同盟国や有志国、友好国の抑止力が高まり、日本をとりまく安保環境の好転にもつながる。軍の装備は国家の生存にかかわるだけに日本製武器を調達する国と日本の絆は強まっていく。
・輸出によって日本の防衛産業は成長し、自衛隊の調達する武器の価格も安くなる。武器輸出の解禁で防衛生産、技術の基盤が整えば、国益と世界の平和に寄与するのである。
今の防衛装備移転三原則は、第2次安倍政権がそれまでの「武器輸出三原則」を改め、14年に閣議決定したものです。そこでは輸出先を我が国と安全保障上の協力関係がある国などに限定し、厳格な審査や適正管理の具体的なルールを「運用指針」で定めています。

その一方で、近年は各国から日本の防衛装備品に関心が寄せられています。2025年8月、オーストラリアは海軍の次期汎用フリゲート艦として、三菱重工業が提案した能力向上護衛艦「もがみ」型を採用したと発表していますけれども、それ以外にも、ニュージーランドはその「もがみ」型護衛艦の取得に関心を示していますし、フィリピンとは中古の「あぶくま」型護衛艦の輸出に向けた協議が進められています。更にインドネシアは海上自衛隊の中古の潜水艦に興味を示しています。

けれども、現在は殺傷能力が高い護衛艦や潜水艦は、現状では他国との「共同開発」と位置付けなければ輸出することができないことになっています。

そのため、日本の防衛産業は事実上、自衛隊向け装備品の開発・製造に販路が制限され、生産量の少なさから製造コストが高騰し、自衛隊は高額な装備品を取得せざるを得ない状況にあります。また防衛産業は莫大な研究開発費を投入する余裕を欠き、高性能の国産装備品を生み出すことも難しくなっているのが現状です。

つまり、防衛装備移転三原則の5類型を撤廃して、価値や理念を共有する友好国に防衛装備品を供給することで、友好国全体の防衛力を高めることで結果として日本のみならず、地域の安全保障に資することになるのはいうまでもありません。


2.もがみ改


先述した、護衛艦もがみ型をオーストラリアに輸出する件ですけれども、オーストラリア政府は、2023年3月に「原子力潜水艦能力獲得計画」を発表。翌2024年2月には水上戦闘艦隊に関する国防戦略を見直し、新たな汎用フリゲート艦の就航計画を承認しています。

もがみ型の輸出が、オーストラリア政府のこの計画の中で最大規模の調達となります。

この計画では、10年間で100億オーストラリア・ドル(約9,600億円)が割り当てられ、調達する全11隻のうち初期の3隻は日本で建造し、その後の8隻はオーストラリアで建造する「共同生産」の形態をとっています。これは現在の防衛装備移転三原則の指針にある「国際共同開発・生産に伴う移転」にあたり、このちょっと裏技的な方法で、もがみ型の輸出を可能としました。

実は、日本製の護衛艦がドイツ、スペイン、韓国といった他の造船大国の競合を抑え、海外の主力艦として採用されるのは史上初のことです。

その決め手は、徹底した省人化にあったとの指摘があります。

今回オーストラリア海軍に選ばれた、もがみ型護衛艦は、海上自衛隊で運用中のもがみ型をベースに船体を大型化し、さまざまな改良を盛り込んだ新型モデルです。

海自のもがみ型が基準排水量3900トン、全長は133mだったのに対し、新もがみ型は基準排水量が4880トン、全長142mまで拡大され、ミサイルの垂直発射システム(VLS)も16セルから32セルへ倍増するなど、能力が大幅に強化されています。

にも関わらず、新もがみ型は徹底した省人化がなされています。

現在、オーストラリア海軍主力の「アンザック級」フリゲート艦は全長117.5メートル、基準排水量2800トンと、新もがみ型、海自のもがみ型よりも小さい艦艇なのですけれども、運用に約170人が必要となっています。ところが、「アンザック級」よりも大型の「新もがみ型」は約半分の90人で動かすことができるのですね。

オーストラリア海軍も日本同様に深刻な人手不足に悩まされており、その解決策として、日本の省人化技術が評価されたという訳です。

新もがみ型では、艦の頭脳である戦闘指揮所(CIC)に入ると指揮官を取り囲むように、部屋一周ぐるりと360度の大型円形モニターが並び、従来は別室だった「航行管制」「機関監視」「武器管制」の機能はCICに集約されています。

当然ながら、人が減っても仕事が減る訳ではありません。乗員は「戦闘」に加え、「掃海」と呼ばれる機雷の除去まで担うこととなり、従来は専門の掃海艦や掃海艇が行ってきた危険な機雷処理は、無人ロボットで遠隔実施できる能力も備えているそうです。

これほど高性能の艦艇を配備すれば、それだけで抑止力は向上します。けれども、今の防衛装備移転三原則では、「共同開発」という裏技を使わなければ移転できませんし、どの国も「共同開発」という体裁が取れるとも限りません。

それを考えると防衛装備移転三原則の今の運用指針は、「足枷」になってしまっているといって差し支えないと思います。


3.兵器とインテリジェンス


それに、今のタイミングは、日本の防衛装備を海外輸出するのに最高のタイミングがやってきています。

それは、ベネズエラのマドゥロ大統領拘束や、今のイラン戦争で、中国製の防衛装備がまったくのポンコツであったことが明らかになったからです。

これまで親中だったベネズエラは、ロシア製のS-300VM、ブークM2、パンツィリ-S1などで多層防空体系を運用し、これらを補完するために中国製の長距離対ステルス監視レーダー「JY-27A」を配備していました。

中国は、このレーダーが米軍のF-22やF-35などの第5世代ステルス戦闘機を数百キロの距離から探知できると宣伝していたのですね。

アメリカは、マドゥロ大統領拘束作戦でF-22ラプターとF-35ライトニングII、F/A-18スーパーホーネット、そしてB-1Bランサーなど、150機を超える戦闘機や爆撃機、偵察機を投入していました。ところがこれらがベネズエラの首都カラカス上空を飛び回っている間、ベネズエラ軍は迎撃どころか、ロシアの防空体系も中国のレーダーも、事前探知すらできなかったといわれています。

これはイランでも同じでした。

専門家の間では、中国製レーダーは目標を「捉える」ことはできても、米軍の最新鋭機や精密誘導兵器の動きを追尾し、物理的に「迎撃する」能力が著しく不足していたと指摘されているのだそうです。

台湾の著名コメンテーター温朗東氏は、中国メディアですら「中国の電子戦能力は米国に10年遅れている」と厳しく批判していると指摘。今回の空爆でも、中国製レーダーや防空システムはほとんど存在感を示せなかったことについて、温氏は野球にたとえて、「観客は大谷翔平の投球を見ることはできます。しかし、打席に立ってそのボールを打つことはできません」と述べています。つまり、「見える」ことと「阻止できる」ことの間には決定的な差があるということです。

これについて、経済学者の高橋洋一氏は自身の動画で次のように述べています。
高橋洋一: あれだよな。あの今の兵器ってインテリジェンスがなかったら、はっきり言ってクソ役に立たないっていうかね。威力の何ぼしかなっちゃうわけだよね。この間もちょっと自衛隊のね、あの元防衛幹部の人と話した時に「インテリジェンスがなかったらどんだけいい武器持ってもダメですよ」って言ってたよ。だって、闇にやってね、なんか来てからなんとか対応しろって、そういう話じゃないからって言ってたよ。うん。ま、それそう。インテリジェンスがあって、いろんなあの敵の位置とかそういうのがピシッと分かった時に、いや、そのね能力がすごく発揮できるんだってね。アメリカはそこについてものすごいと。うん。もう格段にすごすぎると。この間のウクライナロシアの時の戦いですぐ分かるわけじゃない。ウクライナとロシアは4年経ってまだ終わんない。インテリジェンスがきちっとしてていれば、はい。実はゼレンスキーはもうやられてるよ。

聞き手: なるほど。

高橋洋一: うん。でもやり損なったわけ。ロシアがやり損なったっていうのは実はアメリカとイギリスがその情報を流してるっていうのが通説だよ。流したから実は寸でのところで逃げ切れたと。

聞き手: なるほど。逃げ切れたっていうことは逆に考えてみるとインテリジェンスではアメリカとロシアではすごい差があるってことでしょ。

高橋洋一: そうですね。うん。だから中国なりロシアがきちんとインテリジェンスの対応ができてるんだったら、はい。アメリカの動きを察知して情報流してあげるってことはできるんだけど、できてないからやられちゃったんじゃないの?ベネズエラもそうでしょ。だからベネズエラもさ、イランもさ、中国のね、防空システムたくさん金かけて入れたんだけど全く役に立ちませんです。

聞き手: 全くですよね。

高橋洋一: これはちょっとね、ここの2連敗はね、大きいよね。中国もね、最新だ、どうのこうの言ってもさ、こういう時に役に立たなかったものは意味がないからな。で、こういうのはみんな周りよくみんな見てるんだよ。これね、中国のね、インテリジェンスはダメだなとかね。うん。そういう形で皆見てるんじゃないかなっていう気がしております。
対象を見ることができたとしても、それを捉えることができる力が「インテリジェンス」だというのですね。

中国はイランの「戦略的パートナー」を自称してきたにも関わらず、イランへのアメリカ・イスラエルの攻撃が始まると、中国製レーダーはまったく役にたちませんでした。中国が行ったのは口先ばかりの非難だけ。中国外交部は「軍事行動の即時停止を求める」とする一般論の声明を出しただけで、実質的な支援は何一つ行っていません。

当然世界はこれを見ています。中国の軍事的信用度は暴落の最中にあります。


4.部品と完成品


ただ、インテリジェンスについては、日本とて怪しい。なぜなら戦後ながらく「インテリジェンス」がタブー視されてきたからです。

この日本のインテリジェンス体制について、もう今から10年以上前になりますけれども、2014年、ChGrandStrategyというネットチャンネルで、若き日の参政党の神谷宗幣氏が講師を招いての解説動画をアップしています。

その模様は次の通りです。
神谷宗幣:皆様、こんにちは。神谷宗幣です。本日からはじまります新番組『みんなで学ぼうインテリジェンス』。今回の講師は危機管理アドバイザーの渡辺浩さんにお願いしています。渡辺さん、よろしくお願いします。

渡辺浩:よろしくお願いします。

神谷宗幣:ちょっとね、肩書きを噛んでしまいましたけど(笑)、危機管理アドバイザーということで。危機管理というと、皆さん一般的に災害などを連想されると思うのですが、渡辺さんは防衛大学でいろいろと勉強されていて、研究分野としての危機管理には戦争や安全保障の問題も含まれています。地元仙台でも講義をされていますね。実は今回初対面ではなく、数年前から政治家の勉強会でお会いしていて、そこで繋がりをいただいていたので、今回このような形で皆さんに分かりやすくインテリジェンスとは何なのかをお教えいただきたいと思います。戦後の日本で一番と言っていいくらい大きく削がれたものの一つではないかと思うのですが。

渡辺浩:そうですね。本当にインテリジェンスが何なのかを国民の皆さんが忘れてしまっている、あるいは分からない人も多いので、入り口の部分になりますが、数回にわたって教えていきたいと思っております。よろしくお願いします。

神谷宗幣:よろしくお願いします。初回ですので、そもそもインテリジェンスとは何ですかというところからお願いしたいと思います。

渡辺浩:はい。まずは自己紹介をさせていただきます。私は民間を10年経てから、防衛大学校の大学院で社会人学生として学びました。その時の師匠が、元防衛省情報本部長の太田文雄提督です。この方は日本のインテリジェンス、特に軍事寄りのインテリジェンスの第一人者です。この方の教えをいただき、この道の造詣を深めました。太田提督は『国際情勢と安全保障政策』や『情報と国家戦略』といった、防衛関係者や自衛官が必ず読むような教科書の著者でもあります。

神谷宗幣:まさに日本の安全保障の教科書ですね。

渡辺浩:ええ。太田先生にはインテリジェンスの本質を一言で言うと、孫子の兵法にある「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という教えに通じるものがあります。「まず知る」こと、敵や相手の内部事情を知ることが、インテリジェンスの本質です。インテリジェンスという言葉は英語で「知性」という意味ですが、情報収集そのものを指すわけではありません。「情報」は英語で「インフォメーション」と言いますが、この二つの違いを簡単に説明します。インフォメーションは単なるデータやバラバラの知識です。一方でインテリジェンスは、そのバラバラのデータを組み合わせて、全体として何の意味があるのかを解釈し、意思決定に役立てるものです。

神谷宗幣:プラモデルの部品と完成体のようなイメージですか?

渡辺浩:その通りです。例えば冬の天気図があるとして、風向や雲のデータ、去年の降雪実績などのデータがインフォメーションです。それらをもとに「明日は車で出かけるべきではない」と判断することがインテリジェンスです。つまり、意思決定に関わらせるものですね。
インテリジェンスに関しては、手嶋龍一さんや佐藤優さんなどの本が一般に広まりましたが、本格的な学問としては中西輝政先生が非常に有名です。中西先生のお弟子さんである小谷賢先生の『インテリジェンス』という本は、非常にコンパクトで一番おすすめです。また、奥田先生という方の『国家戦略とインテリジェンス』も、情報強国であるイギリスの歴史を紐解いていて非常に勉強になります。
海外では、国際金融、核の知識、そしてインテリジェンスの3つが常識とされています。大学にインテリジェンス学科があるのも普通です。結論として、インテリジェンスは我々の必修科目なのです。特に専守防衛の国だからこそ、情報が重要になります。

神谷宗幣:私も21歳の時にヨーロッパに行きましたが、核やインテリジェンスの話が当たり前のようにされていて衝撃を受けました。日本はタブー視されていて、知識すら持っていない。完全に世界から取り残されていると気づき、それが政治家を志すきっかけになりました。なぜ日本はこうなったのかと調べると、戦争に負けてから教えちゃいけないと言われているのではないかと感じます。

渡辺浩:その通りです。戦後の「履修漏れ状態」は特殊な状況です。小谷賢先生の『日本軍のインテリジェンス』という本を読むと、戦前はそれなりにうまくやっていたことが分かります。
日本人が定期的に陥る病気として「情報軽視」があります。日本軍でいうと「作戦第一主義・情報軽視」です。参謀本部の中で、一番頭が良い人が作戦に行くという傾向がありました。一方でイギリスなどは、一番優秀な人がインテリジェンス部門に行くようになっています。

神谷宗幣:インテリジェンスとは単なる知識ではなく、意思決定のツールであるということ。そして世界では常識なのに、日本は教えてもらっていないという問題提起をいただきました。次回も詳しく聞いていきたいと思います。ありがとうございました。
インテリジェンスは部品を組み立てて完成品にしないと意味がない。インテリジェンスとは単なる知識ではなく、意思決定のツールである。この視点と教育を日本でももっともっと強化していく必要があるのではないかと思いますね。





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