イエスマンに囲まれたプーチンの誤算

今日はこの話題です。
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1.イエスマンに囲まれたプーチン


3月30日、アメリカのベディングフィールド報道官は、ウクライナ侵攻を行っているロシア軍について「プーチン大統領が軍に惑わされたと感じ、軍指導部との摩擦につながっているという情報を入手している……プーチン大統領の側近は真実を伝えるのを恐れており、ロシア軍の侵攻がいかにうまくいっていないか、欧米の制裁措置でロシア経済がいかに打撃を受けているかについて、誤った情報を伝えられているとわれわれは確信している」と語り、この情報が「ロシアの戦略的な誤り」を示していると述べました。

この日、アメリカ当局者も「プーチン氏は露軍の徴集兵がウクライナに動員され戦死していることさえ知らされていなかった。正確な情報の伝達系統が明らかに破綻している……プーチン氏と国防省の間には現在、不信感からくる拭い難い確執がある」と指摘してういます。

更に、国防総省のカービー報道官はこの日の記者会見で、プーチン大統領がこのまま正確な報告を受けられずに戦況を見誤れば、ウクライナとの停戦交渉にも影響する恐れがあるとの懸念を示しました。

これについて欧州の上級外交官は、アメリカの分析は欧州の見解と一致しているとし、「プーチン大統領は実際の状況よりも事が順調に進んでいると考えていたようだ。この問題は『イエスマン』に囲まれ、長テーブルの端に座っていることに起因しているのだろう」という見方を示しています。

欧州外交筋によると、ウクライナ侵攻前、ロシアの徴集兵は軍事演習に参加すると伝えられると同時に任務を拡大する文書への署名を義務付けられたそうで、外交筋は、現時点でロシア軍の反乱を助長するような兆候は見られないとしつつも、状況は「予測不可能」と述べています。


2.キエフ方面は囮だ


3月30日、ロシア国防省はウクライナの首都キエフ周辺など北部に展開していた部隊について、「作戦の主要方面」である東部にウクライナ軍を集結させないための〝おとり〟であり、目的を達成したため「再編成」を開始したと主張しました。

これは、ウクライナ北部に展開したロシア軍部隊について、米英の国防当局が「補給不足やウクライナ軍の抵抗で進軍が停止し、一部では後退している」と分析し、29日にはアメリカ国防総省のカービー報道官が、ロシアはキエフを制圧してウクライナを支配下に置くとの目標の達成に失敗したとの見解を表明していたことを否定するもので、ロシア国防省はキエフへの突入は当初から予定しておらず、アメリカなどが発表したロシア部隊の後退は「計画された再編成」だとも説明しました。

無理やり感が漂う説明です。

ウクライナ軍を引き付けておくための〝おとり〟にしては被害が大きすぎます。かえってウクライナ軍の士気を上げる結果となったことは否めません。それがまたウクライナ軍の東部での攻勢に勢いを付けている面もあると思います。

一方、ロシア軍はグダグダです。

31日、イギリスの通信傍受機関である政府通信本部(GCHQ)のフレミング長官は、訪問先のオーストラリアの大学での講演で、ウクライナに侵攻したロシア軍が自軍の航空機を誤って撃墜したと述べ、指揮系統が乱れており、士気低下の影響が出ているとの見方を示しています。

また、ニューヨーク・ポスト紙やデイリー・メール紙などによると、ウクライナのビクトル・アンドルシフ内務大臣は、降伏したロシア兵の話として「食糧はほぼ残っておらず、軍の指揮系統はカオス状態であり、存在しないも同然の状態となっている。戦意喪失は驚くべきレベルだ」との内情を明かしています。

こんな状況で「計画された再編成」をするのは簡単なことではないように思ってしまいます。


3.満身創痍になるロシア


ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍について兵站に問題があることは、かねてから指摘されていますけれども、西側情報当局の分析として関係筋が明らかにしたところによると、中国が食料や通信機器など兵器に当たらない物資を支援しているようです。

以前のエントリーでも、ジャーナリストの鳴霞氏の情報として取り上げたことがありますけれども、やはり本当だったということです。

ただ、ロシアが再三再四要求している兵器を含む軍需品の支援には中国は応じていないようです。

となると、ロシアは国内の軍需産業で大幅な増産態勢を取る必要があるのですけれども、今のところ、平時に比べ稼働率に大きな変動はなく、軍需物資の生産は停滞気味と見られています。

情報当局によると、ロシア軍が現在のペースで軍事行動を続けると、5月上旬にはミサイルや弾薬、燃料など作戦に不可欠な物資が払底状態に近づく可能性が高く、6月上旬にはロシア経済にも壊滅的な影響が出始めると予想されているようです。

既に、ロシア最大の起業家組合であるRSPP通信およびIT委員会は、現時点でロシアの業界が直面している実際的な課題を反映し、それらを軽減するために特別に作成された一連の提案を提示する文書をまとめました。

それによると、電気通信事業者の機器の備蓄があと6ヶ月しか続かない上に、購入可能な機器の価格も40%上昇しており、ルーブルが引き続き下落すると、サービスプロバイダーの経済的複雑化はさらに深刻になるとしています。

委員会は、最大の通信事業者の資本的支出は、投資プログラムの削減があっても、2021年の3900億ルーブルから2022年の4500億ルーブルに増加するだろうと述べ、通信事業のコスト増を警告しています。

これら警告を受けRSPP通信は、ロシアデジタル開発省に次の措置を提案しました。
・2022年のユニバーサル通信サービス基金への寄付にモラトリアムを課す
・無線周波数スペクトルの料金を50%削減
・固定資産税率をゼロにし、業界の従業員の収入を税金から免除する
けれども、現時点でロシアデジタル開発省が急進的な行動を取る可能性は低いだろうと見られています。

物資が不足しているのはロシア軍だけなのは今のうちで、あと数か月後には、ロシア国民の生活にも影響が及ぶと見られている。

プーチン大統領にこのことがどこまで伝わっているか。

軍だけ正しい報告が上がってないだけで、経済のそれが何も問題ないなんて保証はありません。

今後、ウクライナとの停戦合意がなされたとしても、そのころのロシアは既に満身創痍になっているかもしれませんね。


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