橋下徹の上海電力疑惑と千粒のパネル

今日はこの話題です。
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1.橋下徹と上海電力


ここ最近、「橋下徹氏と上海電力」を巡る問題がネット上で大きな盛り上がりを見せています。

これは、橋下氏が大阪市長時代の2014年に、大阪の南港咲洲(さきしま)に、メガソーラー発電所を建設したのですけれども、そのメガソーラー発電所を運営しているのが上海電力という中国の企業だったことが発覚。上海電力がこの事業を受注した経緯にも疑問があり、安全保障上問題があるとして入札後に参入した経緯について橋下氏に説明を求める声があがっています。

これに対し、橋下氏は「入札の一案件に知事・市長が関与できるわけがない」などと疑惑を否定しています。

そして、5月29日、松井一郎大阪市長はあるネット番組で、橋下徹氏の上海電力疑惑について次のように発言しました。
松井:「上海電力がメディアを賑わせている」と言うが、ネット社会のメディアだけを賑わせている。上海電力は当時、東日本大震災の後、民主党政権で固定価格買取を決めて、とにかく「自然エネルギー、太陽光発電をどんどん増やせ」と。当時の菅(直人)さんは、「俺を総理にしておくのが嫌なら、とっとと再生可能エネルギーの固定価格買取制度の法案を通せよ」と言っていた時。その時、国から地方自治体に対して「(地方で)やれる場所があれば、国も後押しするから増やしていけよ」ということで。

上海電力の話は当時大阪市で、いま僕は市長だから、当時の経過を全部調べました。大阪市でいくと、副市長案件で、それほど大きくないんです、あれは。副市長案件で、あの制度を決めた。

最初は上海電力じゃなかったんです。最初は日本の企業が中心でグループ組んでた。それが何年か後に、2年か3年後かな、そのグループの一角に上海電力が入った。でも事業はグループがそのまま同じことやるんで、これは認めていこうと。ただこれだけのことです。

だから一部で橋下さんが、「中国といろんな結託してどうのこうの」と、橋下さんはその時点で詳しいところは知らなかったと思いますよ。僕自身市長になって初めて知ったんだから」
このように、上海電力の件は副市長案件で橋下氏は知らなかった筈だというのですね。

これに対し、翌30日、作家の百田尚樹氏は「松井さん、何も問題ないって言ってしまったね。しかも当時の副市長案件だったと。橋下はまったく関係ないと。ただ、その発言内容は、各所に相当にごまかしというか無理がある」とツイートしています。

ただ、一般には"副市長案件"というだけで問題ないといわれても、しっくりこない感じは否めません。





2.港湾局が土地を貸しただけ


では、副市長案件なら市長は知らないのか。

これについて、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、行政では全ての案件の決済事務の判子は市長が押すわけじゃないと指摘。市長は権限を委譲して副市長で終わるもの、局長で終わるものと色々なものがあって、多くは局長案件になるのだそうです。ただ、だからと言って、知らなかったというのは言い訳にならなくて市長が責任を取る形になっていると述べています。

高橋教授によると、副市長案件になると、その会議には市長は出席しないのが通例なのだそうです。そして、副市長が担当する案件は、局毎に決まっていて、今回の案件は港湾局で、そこを担当する副市長が見ていたと述べています。

高橋教授は、当時、港湾局とは別に環境局が担当する似たような事業があり、上海電力が関わっていたのは港湾局の事業だけで、環境局の事業には関わっていないとコメントしています。

高橋教授は、環境局が担当する事業は、価格よりも「提案」を基準に選ぶプロポーザル方式の入札であり、港湾局のそれは土地を貸すだけで、提案も何もないとその入札の違いを指摘しています。

高橋教授によると、普通、港湾局はメガソーラー事業はやらず、単に土地を貸しただけの扱いで、それも20年の賃貸契約で契約期限が切れたら、現状復帰、すなわち元の更地にして返すという契約になっているのだそうです。

こうしたことから高橋教授は、中国が日本のインフラ事業に入ってきているといっても、関電に売電するだけのことであり、他の太陽光事業と変わりなく、大阪市が、現在の上海電力の電力事業を駄目だといえなければ、当時の謙譲も不適切だったといいにくいと指摘。市議会でも百条委員会にもなりにくいだろうと述べています。




3.橋下徹と中国資本との長い歴史


高橋教授の説明通りであれば、橋下氏の疑惑についても、案件は知らなかった、入札問題なかったということで終わりそうに思えなくもありません。

高橋教授は「上海電力の電力事業を駄目だといえなければ、当時の謙譲も不適切だといいにくい」と述べていますけれども、だとすると、当時の入札が不適切だったのかどうかが次の焦点になります。

これについて、ジャーナリストの山口敬之氏が月刊「Hamada」で特集記事を連載しています。この連載は6月3日時点で9回を重ねているのですけれども、最初の5回でその経緯について詳細に語られています。

その5回までの記事の見出しとそれぞれの簡単な要旨を抜き出してみると次の通りです。
【橋下徹研究①】橋下徹と中国資本との長い歴史|山口敬之【永田町インサイド WEB第1回】

● 「ウクライナ降伏論」で大炎上!
要するに、3月末までは維新の法律顧問を務めながら、国内政局を含む森羅万象についてテレビ局でコメンテーターを務めていたのである。

● 橋下徹と維新は本当に無関係なのか
今回3月末までは大阪維新の会から顧問料を受け取っていたことも明らかになったのだから、「精神的支柱」のみならず金銭の関係も含んだ一心同体とも言える関係だったのである。今回顧問契約を終わらせたからといって、それで橋下氏と維新の関係が完全に終結するはずはない。

● 「外交素人」に外交は語れない
橋下氏は国際情勢の基本知識が欠如していることがわかった。責められるべきは、人間の命がかかっている戦争を扱う番組で、「外交素人」に外交を語らせているテレビ局である。

● 「炎上商法」の本当の狙い
橋下氏の過激発言は計算されたものであって、TPOに応じて自分を演じ分けているクレバーなタイプの人間だと見るべきなのかもしれない。しかし、一連のウクライナ情勢をめぐる発言は、一見するとクレバーには見えない。

● 維新とロシア大使館との不自然な関係
「橋下徹は、自分が愚かだと見なされても達成したい、『別の目的』がある」

● 意識しているのはロシアではなく中国か
ロシアが日本を侵略する可能性は限りなくゼロに近いのだから、「侵略時に降伏すべき」と主張してもほとんど意味はない。しかし、橋下氏が仮に中国を念頭に発言していたとすれば、俄然意味が深くなってくる。

● 「ありがたい」発言のオンパレード
「降伏論」に類する橋下氏の発言の文脈を整理すると、日本を侵略しようと考えている外国の指導者にとっては実に「ありがたい」発言のオンパレードだったことがわかる。橋下氏の発言はそうした「国に殉じる」という日本精神を過去のものにしたい侵略者の意向に、ピッタリと寄り添っているとも言えるのである。

● 上海電力とカジノプロジェクト
カジノの運営などIR関連プロジェクトについても、中国系企業の様々な形での関与が取り沙汰されている。このカジノ構想を2008年の大阪維新の会発足時から強力に推進してきたのが橋下氏本人なのだ。

【橋下徹研究②】上海電力「ステルス参入」の怪|山口敬之【永田町インサイド WEB第2回】

● 「咲洲地区は大阪の宝石箱」
橋下徹氏が2008年に大阪府知事になると「咲洲地区は大阪の宝石箱」などと言って知事主導で咲洲開発に邁進。そのシンボルがWTCビルの買収プロジェクトだった。その後大阪府は、議会や府職員の反対にもかかわらず、府の行政機能の多くを買収したビルに順次移転し、ビルの名前も「大阪府咲洲庁舎」となった。

● 当初の発電請負は日本企業だった
「咲洲庁舎」からほど近い、埠頭の北西端の広大な土地で、巨大メガソーラー事業が展開されている。2012年にはこの土地でメガソーラーを実施する事業者として、2つの会社が合同でプレスリリースを発表している。「伸和工業」と「日光エナジー開発」だ。ところが、発電事業は予定通りには始まらず、1年半後の2014年5月にようやく電力供給が始まった。そして、蓋を開けてみたらこの施設を実質的に建設・運営しているのは「上海電力」であることが明らかになった。

● すべての事象が橋下時代に起きている
メガソーラービジネスの中国企業への売り渡しの決定から実施に至る、すべてのプロセスが橋下氏と大阪維新の会が大阪府政を牛耳っていた時期に行われたという事実である。

● 「降伏論」と中国ビジネス
橋下氏がもし、中国企業の経営者と、その奥にいる中国共産党幹部が喜ぶような発言を意図的に繰り返しているのであれば、それはもはや単なるトンデモ発言ではない。特定の意図を持って国民を誘導しようという「特異な」発信という事になる。

【橋下徹研究③】上海電力、深まる謎 橋下徹の説明責任|山口敬之【永田町インサイド WEB第3回】

● 大阪取材で見えてきたもの
メガソーラーは大阪府咲洲庁舎から電車で一駅、咲洲埠頭の北西端の広大な土地に設置されている。広大な土地に、6000枚もの巨大なソーラーパネルが並ぶ様子は壮観だ。

● 消えた「日光エナジー開発」
大阪市が2012年12月26日、メガソーラー事業のため咲洲北西端の土地を民間に貸し出した。借り受けたのが「伸和工業」と「日光エナジー開発」という日本の会社2社。一方、不動産契約の9日後の2013年1月4日、「合同会社咲洲メガソーラー大阪ひかりの泉プロジェクト」という会社が伸和工業によって設立されている。この会社には、パートナー企業である日光エナジー開発は入っていない。

● 上海電力が参入したからくり
2014年3月18日、伸和工業は「『合同会社咲洲メガソーラー』が大阪市のメガソーラー事業を受注した」と発表した。そのおよそ1か月後の2014年4月「上海電力日本株式会社」が「合同会社咲洲メガソーラー」に加入(出資)する形で事業に参入した。この時、大阪市長を務めていた橋下徹氏は、「大阪市の発電事業に中国政府の支配下にある上海電力を参入させる」という極めて重要な変更について、市民に一切の説明をしていない。

● 中国企業と「国防動員法」
中国には2010年に成立した国防動員法という法律がある。中国企業に発電事業を任せていたら、中国政府が「有事」と決めるだけで、日本社会を混乱させダメージを与える目的で、発電を止めたり、異常な電流を流して送電網を壊滅させるなど、破壊工作をする可能性が否定できない。

● 上海電力、無許可工事の可能性
上海電力のステルス参入を巡ってはもう一つ、行政手続き上、重大な疑惑がある。2013年段階での受注者は「伸和工業」と「日光エナジー開発」の2社連合体。これが「合同会社咲洲メガソーラー」に移管したのが2014年3月18日。一方、上海電力が工事に着手したのが2日前の2014年3月16日。3月16日から4月11日まで、上海電力はどういう根拠と資格で工事をしていたのだろうか。

● 伸和工業の本社に行って見た
伸和工業の本社の住所は「大阪市天王寺区玉造元町2-32-203」。エントランスの看板には伸和工業の表示はなかった。資本金89億円という中国国営の巨大企業「上海電力」のパートナー企業としては、かなり控えめな佇まいと言えよう。

● 橋下徹は説明責任を果たすべき
「合同会社咲洲メガソーラー」のほうの住所は「大阪市天王寺区玉造元町2-32-205」。商業スペースの2階部分には「合同会社咲洲メガソーラー」は見当たらない……ところが、この居住スペースの郵便受けに、「伸和工業」と「合同会社咲洲メガソーラー」の名前を見つけた。……「伸和工業」と「合同会社咲洲メガソーラー」は事実上一体化しているのだろう。伸和工業が日光エナジー開発との2社連合体で咲洲メガソーラー事業を落札した9日後に、日光エナジー開発を入れずに「合同会社咲洲メガソーラー」を設立していた……伸和工業は2013年段階から日光エナジー開発ではなく上海電力と組むつもりだったのではないか。日本の安全保障にかかわる危険なリスクを日本に持ち込んだのが大阪市で、当時の市長が橋下氏。橋下氏は様々なテレビ番組に出演してウクライナ戦争を巡って珍説を開陳するヒマがあったら、咲洲メガソーラーに上海電力が参入した経緯について、説明責任を果たすべきだ。

【橋下徹研究④】上海電力による日本侵略|山口敬之【永田町インサイド WEB第4回】

● 大阪取材 咲洲メガソーラーを再訪
4月21日はあいにくの荒天だったので、翌週、咲洲メガソーラーを再訪した。
「現場100回」
社会部記者は取材が大きく展開したり行き詰まったりすると、同じ現場に何度も足を運ぶ。

● プロの目から見た異常な“現場”
メガソーラー事業を手掛ける友人に同行してもらい、現場を観察してもらったのだ。地表面の未処理→下草が生え放題→一部のパネルには雑草が覆いかぶさっているという、プロの目から見たらあり得ない現場だというのだ。

● 最低限のモラルもルーティーンもない
現場を見る限り、咲洲メガソーラーの実質的事業者である上海電力には、大阪市民の生命と生活を守るという発電事業者としての最低限のモラルもルーティーンもないことは明らかだ。そして上海電力に発電事業を任せた大阪市にも、事業者を適切に監督するという行政側の仕事をしている様子はない。丸投げ、任せっきりだ。

● 咲洲ははじまりに過ぎなかった
咲洲に続く上海電力の日本進出の第2号となった兵庫県三田(さんだ)市メガソーラーの参入経緯を見てみよう。このプロジェクトの事業体は、新華社の報道写真に写っている横断幕に示してある通り、「合同会社SJソーラー三田」。この合同会社にも、咲洲メガソーラーで上海電力を参入させた伸和工業が噛んでいる。

● 全国を侵略する「橋下スキーム」
合同会社を作って公共発電に参入するという、「橋下スキーム」の咲洲での成功に味を占めた上海電力が、三田でもまったく同じ形で参入した。そこで、伸和工業が登記している合同会社を調べてみたところ異常な事態が判明した。少なくとも13のメガソーラー関連の謎の合同会社を自社内で登記していた。

● 岩国メガソーラーも上海電力!
岩国メガソーラーでも複数の合同会社が登場しては消え、蓋を開けてみたら実質的な事業者が上海電力であることが後から判明した。三田も岩国も、咲洲参入時と同じく、事業開始まで上海電力の名前を隠蔽する、いわば「橋下スキーム」を採用している。

【橋下徹研究⑤】独断で日本を一帯一路に引きずり込んだ橋下徹|山口敬之【永田町インサイド WEB第5回】

● 「上海電力」社長のインタビュー
市民・国民に何の説明もなく上海電力を咲洲メガソーラーにステルス参入させた「橋下徹スキーム」。これが日本進出を狙う上海電力にとってどれだけ大きな恩恵をもたらしたか。

● 「紅船」という言葉に込められた本音
中国共産党によって指導された現代中国からの恩恵を、東夷(東の野蛮人)たる日本に施してやろうというのが「紅船」という言葉に込められた本音だ。しかし、この刁旭社長の「暴言」は、単なる大言壮語ではなかった。習近平直々のプロジェクトだからこその自信の表れだったのである。

● 「一帯一路」にビルトインされた日本
上海電力の日本進出は、中国政府による一帯一路構想の一環として始まり、いまでは一帯一路のエネルギー分野の中核事業にしっかりと組み込まれている。日本は、国民も国会議員もまったく知らされないまま、橋下徹氏の一存で勝手に中国の一帯一路に組み込まれていたのである。

● 世界中で混乱と軋轢を呼んでいる一帯一路
中国が強力に推し進めている一帯一路だが、その個別プロジェクトは多くが暗礁に乗り上げている。多くの国々がいま中国との一帯一路の大規模プロジェクトの見直しを余儀なくされているのは、「最初は『友好』を標榜しているが、結局は中国の覇権主義の本性が剥き出しになり、受け入れ国の主権と経済をリスクに晒す」からに他ならない。

● 「軍事の一帯一路」と化す危険性
アメリカの国防総省は一帯一路を巡って2020年にまとめた『中国の軍事動向に関する年次報告書』で、重大な警告を発している。一帯一路の参加国は、……ほとんどすべてが一帯一路構想に沿う形で点在していて、「経済の一帯一路」が「軍事の一帯一路」と化す危険性を帯びているというのである。

● 「橋下徹スキーム」がすべてのはじまり
様々な問題点が指摘されている一帯一路に日本が参画するか、するとすればどのような形がふさわしいのか。これはオープンな国民的議論の末に決定されるべき国策であり、地方自治体の一首長の一存で決めていいわけがない。日本政府や日本国民と一切の議論も合意もないまま、勝手に日本を一帯一路に巻き込んだ橋下徹氏のやり方は、あらゆる手段を持って糺されねばなるまい。

このように、山口敬之氏は上海電力の問題を単なる発電事業ではなく、「一帯一路」の一環であり、国家安全保障上の問題だとしているのですね。行政上の問題だとする大阪市や高橋洋一教授とは論点が違うということです。

これは、ある意味、何を行うかという戦略の下位階層と、何の為に行うのかという戦略の上位階層との視点の違いだともいえるかもしれません。


4.「陰謀論」のレッテル張り


今回の上海電力疑惑について、渦中の橋下徹氏は自身を批判する百田尚樹氏、山口敬之氏らを「陰謀論を振り撒く百田グループ、国際政治の中で中国だけにヒステリックになっている福井大学の学者、恥ずかしい裁判を抱えている元自称ジャーナリストはしっかり指摘して来い!」と口汚く罵っています。

けれども、この問題を「何を行うか」と「何の為に行うのか」の視点の違いで見てみれば、この問題の構造もスッキリしてくるように思いますけれども、どうも、この問題を国家安全保障上の問題だという見方は、人によっては、「陰謀論」に映るようです。

ノンフィクションライターの窪田順生氏も「橋下徹氏『上海電力疑惑』にモヤモヤ、河野太郎氏の親中疑惑騒動と瓜二つ」という記事で、「『中国』と「『太陽光パネル』という、人々のイマジネーションを刺激して巨大な陰謀を想起させるようなキーワードによって、やや話が一人歩きしているきらいがある」と述べています。

最近、なにか「疑惑」が起こると直ぐに「陰謀論」だとレッテルをはって、言論を封じてくるような風潮が見られますけれども、これも高じると全体主義に通じる道であり、非常に危険だと思います。

そもそも、「何を行うか」は事実確認できるものですけれども、「何の為に行うか」は、本人が正直に話さない限り事実確認が非常に難しいものです。かといって事実が明らかになるまで放置すると、いざその狙いが明らかになったときには既に手遅れになっていることなんて往々にしてあります。

それが国家安全保障に関わることであったら国家存亡の危機に繋がりかねません。

一帯一路にしても、中国が資金を貸してくれるからといって、「何を行うか」だけをみてホイホイと乗っかっても、「何の為に行うか」を考えなければ、"債務の罠"に嵌って、領土や権益を奪われたりするわけです。

その意味では「何の為に行うのか」という視点からの議論に対し「陰謀論」のレッテル張りを行うことは、それ自体が誰かの「陰謀」であるかもしれないという警戒心は持っていてもよいように思います。


5.岩国のメガソーラー


では、上海電力のメガソーラー事業になんらかの「陰謀」が隠されているのか。

山口県岩国市の山林でメガソーラー事業計画が進んでいますけれども、この事業は昨年9月にファンド運営会社、アール・エス・アセットマネジメントから上海電力の日本法人「上海電力日本」が224億円で買収していたことが明らかになっています。

この事業は、元々合併前の岩国市旧美和町時代にゴルフ場として開発計画があったのが中止となり、平成27年ごろからメガソーラー建設に向けて土地の買収が動き出したのが発端です。事業会社による地元説明などを経て、令和元年8月に県が開発を許可したのですけれども、事業主である事業会社の親会社は数回にわたって変更された挙句、今回の上海電力の買収となった訳です。まさに、山口敬之氏が指摘する「橋本スキーム」です。

計画では、旧美和町の元ゴルフ場開発用地を造成し、敷地面積214ヘクタールのうち110ヘクタールに太陽光パネル約30万枚を設置。出力は75メガワットで、一般家庭約2万2500世帯分に相当します。全て中国電力に売電する予定で、売電収入は年約36億円を見込んでいるとのことです。

建設工事は2019年11月から24年6月までの予定で、工事完了後、2040年9月までを送電期間とし、総事業費は約300億円に上ります。

そんな大事業が次々と転売され、中国の会社に買収された。地元民が不安に駆られるのも無理ありません。地元住民は林地開発許可の見直しなどを求める請願と1403人分の署名を県に提出したそうなのですけれども、メガソーラーのパネルは建築基準法の対象外であるため、地元住民との協議を必要としないのだそうです。

さらに問題なのは、メガソーラーパネルの立地場所です。

岩国市は、アメリカ海兵隊岩国航空基地と沖縄県嘉手納空軍基地を結ぶ航路に当たり、さらには瀬戸内海を見渡せるという地政学上の要衝です。地図を見ると分かりますけれども、メガソーラーパネルが設置されている岩国由宇太陽光発電所は、これら米軍基地、自衛隊岩国基地と隣接しています。しかも、このメガソーラーパネルの真上は、アメリカ空軍の訓練空域なのだそうです。

ここでパネルの中に隠しカメラでも仕込んでおけば、アメリカ空軍の装備や訓練内容がいくらでも取り放題になってしまいます。

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6.千粒のパネル


岩国の例をみるまでもなく、「何を行うか」より「何の為に行うのか」という、戦略の階層のより上位の階層で物事を考えることの重要性は明らかです。

オーストラリアの学者クライブ・ハミルトンは、その著書「サイレント・インベージョン」や「ヒドゥン・ハンド」で、中国のスパイのやり方を「千粒の砂」戦略と呼び、前述の2冊の副読本で次のように解説しています。
米シンクタンクの国際戦略問題研究所(CSIS)が2000年から2019年初頭にかけて実施した「中国と関連したスパイ事件の報告書」によれば、137件の事件報告のうち、57%が「中国の軍人または政府職員」、36%が「中国の民間人」、7%が「中国以外の実行者(多くはアメリカ人)」だったという。

「中国の民間人」とは、華僑、学生、学者、研究者、ビジネスマンなど多岐にわたる。彼らは「千粒の砂」戦略に組み込まれ、大使館や領事館に積極的に情報を提供することを求められている。活動資金や報酬の提供、帰国した際の便宜などの「アメ」を与える一方で、従わなければ中国国内に残る親族が共産党から目を付けられるという「ムチ」も使いながら、広範囲の情報を収集するための「マイクロスパイ」として民間人が利用されている。

特に狙われるのは大学やシンクタンクなどの研究機関だ。(『副読本』より)
このように中国はところかまわず、なんでもかんでも情報をかき集め、その中から砂金となるものを抽出していく手をつかいます。

筆者は、中国のメガソーラー事業もこの「千粒の砂」戦略を使っているのではないかと睨んでいます。

つまり、日本の地方自治体や個人が土地を売ろうとすれば、まずは手当たり次第買い漁る。そして、その中で軍事なり資源なり何かに使えそうなものがあれば、そこに更に資本を投入して自らの拠点にしていく。そういうやり方です。

大阪咲洲のメガソーラーの現場をその道のプロと一緒に取材した山口敬之氏は、現場について、地表面の未処理→下草が生え放題→一部のパネルには雑草が覆いかぶさっているという、プロの目から見たらあり得ないという現状を紹介していますけれども、これなどは、「千粒の砂」でいえば、「砂金ではなかった」だけのことで、それゆえ放置も同然にしているのではないかと思います。

咲洲のメガソーラー事業について前述の高橋洋一教授は20年の賃貸契約だからあと10年したら現状復帰させて戻ってくる筈だといっていますけれども、筆者は現状復帰などせず、そのまま放置する可能性もあると思います。

中国にとって、咲洲のソーラーパネル事業が、日本にばら撒いた千粒のうちの一粒にすぎないとするならば、砂金でない「ただの砂」の後始末など一々する理由がありません。

インドネシアで計画されている中国高速鉄道建設が遅れに遅れ、途中で放り出されて残骸を放置される懸念が出ているそうですけれども、同じことが日本で起こらないという保証はありません。

結局、中国企業の参入を日本基準で考えてはやられる一方であり、たとえ参入を許すにしても、「何を行うか」より「何の為に行うのか」という、戦略の階層のより上位の階層で考え許可すべきであることを行政も国民もよく知っておく必要があるのではないかと思いますね。
※6/6追記:咲洲メガソーラーは海底トンネルの真上に位置するという話もあるようです。



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この記事へのコメント

  • トオル?オツム大丈夫か!子子!
    2022年06月05日 09:43

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