プーチンの目に映る世界と交錯する各国の思惑

今日はこの話題です。
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1.何も奪っていない、奪い返したのだ


6月9日、ロシアのプーチン大統領は、生誕350年を迎えたロシアの皇帝ピョートル1世にちなんだ展示会を視察した後、若者との対話集会に出席しました。

その中でプーチン大統領は、世界情勢は急激に変わっているとし「指導的役割を求める国なら主権を確保する必要がある。主権ある決定ができない国は植民地であり、その中間はない」と述べました。

そして、プーチン大統領は、18世紀の大北方戦争を取り上げ、「皆さんは、ピョートル大帝はスウェーデンと戦い、土地を奪ったのだと考えているかもしれない」と前置きした上で、だが、その地域には何世紀にもわたってスラヴ系民族が住んでいたと主張し、「大帝は何も奪っていない。奪い返したのだ!……今の私たちにも、奪い返して強化する責任がある」と述べ、笑ったそうです。

この発言は、現在のウクライナ情勢への言及と受け止められています。

日露平和条約締結交渉中断と半主権国家」でも述べましたけれども、プーチン大統領は「自分で自分のことを決められない国は主権国家ではない」と見るきらいがあります。

プーチン大統領にとっては、ウクライナ侵攻も「自分で自分のことを決めた」だけのことなのかもしれません。


2.産地ロンダリングするインド


更に、プーチン大統領はこの集会で、ピョートル大帝がサンクトペテルブルクにロシアの新しい首都を置いた時、その領有権を認めた国は「欧州にひとつもなかった」と指摘しています。勿論、今では、サンクトペテルブルクはロシア領だと認められています。

こうしたことから、プーチン大統領は、ロシア軍がウクライナで作り出そうと戦っている現実を、西側諸国が最終的には受け入れるはずだと信じているという見方もあるようです。

6月1日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、アメリカと欧州が対ロシア制裁で石油輸入を表向き禁止したものの、いわゆる「産地ロンダリング」を経て依然として取り引きされていると報じました。

記事では、制裁以降、国際石油企業らはロシア産原油をガソリンや軽油、または他の化学物質などに精油し、産地を曖昧にしてから取引し、その取引にはインド企業が主要な役割を果たしていることがわかったとしています。

中には、石油を公海で密かに別の船に積み替える、いわゆる「瀬取り」も使われ、主に地中海や西アフリカの海、北海などで行われているらしく、このように積み替えられたロシア産原油は中国、インド、欧州に持ち込まれているそうです。

実際、ロシアの石油輸出は西側諸国のロシア制裁が初めて始まった3月には急減したものの、1ヶ月でほぼ回復。4月のロシアの石油輸出量は侵略以前の水準である810万バレルに達しています。

この取引で存在感を高めているのがインドです。

ロシアは、自国産原油をインドに相場(ブレント原油)より1バレル当たり35ドルも低い値段で販売していて、これによりインドのロシア産石油輸入量は、戦前の1日3万バレルから最近は80バレルへと26倍以上に急増しています。

インドはこれをガソリンや軽油などで精油した後、欧州やアメリカ、中国に転売しているそうで、インドの精油輸出は戦前より欧州では3分の1、アメリカでは43%も増えています。

西側諸国が対露制裁に勤しむ中、インドは独自の外交で国益を確保しています。これをプーチン大統領が認めるかは別として、ある意味、インドは「自分で自分のことを決めている」といえるのではないかと思います。


3.ウクライナへの武器供与は進んでいない


ウクライナのゼレンスキー大統領は世界に向けて、武器を供与するよう訴え続けていますけれども、少なくとも、ゼレンスキー大統領が期待しているほど武器供与はされていないようです。

5月9日、アメリカはレンドリース法(武器貸与法)を成立させ、いくらでも武器を供給できるようにしたのですけれども、そのレンドリース法に基づく武器供与は当初の想定より2ヶ月遅れ、未だされていません。

また、NATOは軍事同盟組織としてはまったくウクライナを支援していません。侵攻当初こそ50トンの燃料を供与したのですけれども、その後は一切何の支援もないそうです。

また、スペイン政府が以前にドイツから購入した10~15両のレオパード2A4戦車をウクライナに供与するのをドイツ政府が渋っているとの報道もあります。

なんでも、NATOのパートナー国を含むすべての武器輸出と同じく、ドイツ製のレオパード戦車は最終用途を明確しなければならない対象であるため、スペインはウクライナに戦車を提供する場合には、ドイツから許可を得なければならないのだそうです。

件のレオパード戦車は、もう10年も使用されていないのですけれども、保管しているスペイン北部のサラゴサの軍事基地は、乾燥した気候では、特に保存が効くのだそうです。これらの戦車からオイルやバッテリーなどの感光材料は取り除かれているのですけれども、タンクの修復には時間がかかるのではないかと言われているようです。

今のところ、ドイツ政府はスペインからの正式な輸出申請を受け取っていないとしていますけれども、これまでウクライナに新型戦車を納入した相手国はないことを理由に、新型戦車の供与を拒否していることから、レオパード戦車についても拒否するのではないかとも見られています。

このように、西側諸国によるウクライナ支援はNATO加盟国ではあるものの、各国がパートナーとして個別に支援する形をとっていあます。もちろん、ドイツとは反対に、供与に関しては特に熱心な国もあります。中でもイギリスはアメリカよりも先に最先端の精密兵器を提供しています。

一部にはそうすることで、ウクライナ支援に関して、アメリカの尻を叩いているのだという見方もあるそうです。

また、ウクライナも兵士に闇雲に銃を持たせて前線に送りだすことはなく、西側の最新兵器が入ってくるのに合わせて兵器を扱えるよう訓練して前線に送りだしています。

西側諸国も表向きの言葉とは裏腹にそれぞれの国がそれぞれの思惑で動いています。もし、プーチン大統領が、そんな西側諸国すら「自分で自分のことを決められない国」と見做しているのであれば、国際政治学の大家であるミアシャイマー教授ではないですけれども、プーチン大統領にとって世界には、アメリカ、ロシア、中国の三ヶ国くらいしか主権国家はないのかもしれません。


4.ゼレンスキーは聞く耳を持たなかった


イギリスにウクライナ支援を促されているともいわれるアメリカですけれども、ここにきて少しずつ立ち位置を変えてきているような気配がでています。

6月10日、アメリカのバイデン大統領は、ロサンゼルスで開かれた政治資金パーティーで記者団に対して、ウクライナへの継続的な支援について語った際、ロシアがウクライナを攻撃する可能性があると事前に警告していたことに言及し、「第二次世界大戦以来、このようなことは起こっていなかった。多くの人に大げさだと思われていたことは知っている……だが、我々には裏付けるデータがあった……(プーチン氏が)ウクライナに侵攻するつもりだったのは明らかだった……だが、ゼレンスキー氏は聞く耳を持たなかった。多くの人もそうだった」と語りました。

いままで散々、プーチン大統領を犯罪者などと罵り、ウクライナ側に立つなどと煽っておいて、今度はゼレンスキー大統領批判です。

ネットでは「責任転嫁だ」とか「内輪揉め」だとか批判されていますけれども、支持率がどん底を張っている中、ウクライナに熱を上げる暇があるなら、国内をなんとかしろとの声を気にし出したのかもしれません。


5.弾薬も人員も不足するウクライナ


6月10日、ワシントンポスト紙は「戦場の展望が暗くなり、弾薬が不足するウクライナ」という記事を掲載しました。その概要は次の通りです。
新たに約束された西側の兵器システムが到着しつつあるが、ウクライナ東部のドンバス地方におけるロシアの漸進的だが容赦ない利得を防ぐには遅すぎ、量も不足している。

ウクライナ側はまだ反撃しているが、弾薬が不足し、戦争の初期段階よりはるかに高い割合で死傷者が出ている。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領補佐官が金曜日にBBCに語ったところによると、ウクライナ兵の死者は先月末の100人から毎日約200人に増えており、負傷者を含めると毎日1000人ものウクライナ人が戦場から離脱していることになるという。

ロシア軍は、紛争初期の数ヶ月に比べれば少ないとはいえ、依然としてミスを犯し、人員や装備を失っている。装備不足の兆候として、ソ連時代のT-62戦車をウクライナに送るために倉庫から運び出す映像がソーシャルメディアに投稿されている。

しかし、戦争の全体的な軌跡は、予想外に悲惨なロシアの失敗というものから、明らかにロシアが強いという方向に傾いているのは間違いないだろう。
このように、ウクライナ側は弾薬が不足し、死傷者も増えているというのですね。

弾薬が不足している原因として、武器庫が炎上しただけでなく、西側からの武器供与の遅れや、政府内で誰が武器供与の交渉を仕切り調整し、まとめるかが曖昧だという指摘もあります。

更に、ネットの一部では、ウクライナの徴兵年齢を18歳から16歳へと下げ、子供のいない女性も徴兵する計画があるなどという噂も流れているようですけれども、本当であれば、弾薬だけでなく、人員も不足しつあることになります。

今のところ、NATOに、兵器は供与しても軍隊を送る気がない以上、ウクライナは自軍が壊滅する前にロシア軍を追い出せなければ終わりです。

ロシアとて通常戦力を磨り潰しながら侵攻を続けていますけれども、ウクライナの損耗もそれなりに大きいとなると、停戦できないまでも、互いに睨み合って、たまに砲弾を打ち合うだけという半停戦状態で現状のまま長期間固定されてしまうこともあり得ると思いますね。




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