

1.プーチンの健康不安説
ロシアのプーチン大統領の健康不安説が、イギリスのタブロイド紙を中心に報じられています。
かねてからプーチン大統領は近々、癌の手術を受けると噂されていたのですけれども、これについてミラー紙は、元ロシア対外情報庁中尉が運営しているとみられるロシアのSNSテレグラム・チャンネルGeneral SVRの情報として「今月16日夜から17日にかけて手術を受け、成功した」と伝えています。
更に、ミラー紙は、プーチン大統領の健康状態について「視力を失いつつある……頭痛に苦しんでおり、テレビ演説する際に使用する原稿は、すべて巨大な文字で書かれた紙が必要で、文字がとても大きいため1ページに数行しか入らない。弱さを見せることになるため、眼鏡を着用することを拒否している」と関係者のコメントを伝えています。
また、サン紙となると、プーチン大統領は健康問題を隠すために、すでにそっくりな影武者を使っているほか、事前に収録された映像を使用するなど工作を行っているとしています。
こうしたうわさに拍車をかけているのが、毎年6月に開催している国民からの質問に直接答える恒例の生放送によるテレビ出演を突如キャンセルしたことです。
これについて、3~4時間の番組で70もの質問に答えられるだけの体力がない可能性が指摘されているほか、侵攻から100日たっても目立った成果を示すことができない戦況と3万人とも言われるロシア兵が犠牲になっていることから、侵略への批判的な質問を受けることを恐れている可能性もあるとも言われています。
2.緊急の医療措置
中でも、デーリー・メール紙は、6月10日付の記事「Putin given 'urgent medical help' after falling ill while talking to military chiefs, Kremlin insider claims, with doctors advising him 'not to make any lengthy public appearances'(プーチン大統領は軍幹部との会談中に体調を崩し、「緊急の医療措置」を受けたとクレムリン内部関係者が主張、医師は「長時間の公の場に出ないように」と助言している)」で詳しく伝えています。
記事の概要は次の通りです。
・プーチン大統領は軍幹部との会談中に体調を崩し、「緊急の医療措置」を受けたとクレムリン内部関係者が主張、医師は「長時間の公の場に出ないように」と助言している。プーチン大統領の写真や映像から、健康不安の憶測を呼んでいることは確かですし、クレムリン内部からの「大統領の体調不良は、最近ますます隠すことが難しくなってきている」というコメントが本当であれば、しばらくプーチン大統領の健康不安説は消えることはないように思います。
・ウラジーミル・プーチン大統領は、軍幹部との話し合いの中で体調を崩した後、医師から「長時間の」公の場に出ないよう勧告されたと、クレムリン内部関係者が主張している。
・クレムリンに情報源を持つと称するテレグラムチャンネルGeneral SVRが昨日報じたところによると、ロシア大統領は最近、顧問や軍幹部とのビデオ会議の後、机から立ち上がる際に「鋭い病気、弱さ、めまい」を感じたという。
・このチャンネルは、癌やパーキンソン病など、プーチンの医療問題疑惑について繰り返し主張してきた。この主張は検証不可能だが、専制君主が数々の健康問題に苦しんでいるという説は、西側で広まっている。
・ここ数週間、ロシアの指導者が肥大して不快そうにしている写真やビデオが無数に出回っており、また他の映像では、制御不能と思われる足の震えや 連動性の悪い歩行を経験している様子が映し出されている。
・このチャンネルは、今週、プーチンが毎年行っている「ダイレクトライン」生放送(一般ロシア人からの質問に数時間かけて答えるマラソン形式の質疑応答)を延期し、代替日を決めないという突然の発表を行った理由もこの「めまい」事件を引き合いに出している。6月後半か7月上旬に予定されていたが、現在は日付が特定されていない。
・ウラジーミル・プーチンは、軍幹部との話し合いの中で体調を崩した後、医師から「長時間の」公の場に出ないよう勧告されたと、クレムリン内部関係者が主張している。
・「おそらくプーチンの健康状態が安定すれば、直談判は8月に行われるでしょう......。大統領の体調不良は、最近ますます隠すことが難しくなってきている」。
・過去5年のうち4年間、ダイレクトラインの放送は6月に行われた。ただし、2020年はパンデミックのために12月まで延期された。
・この形式では、通常4時間以上続く公開Q&A形式で、ロシア市民が投げかける質問の嵐にプーチンが答えるのだが、SVR総局は「最近、大統領の疲れが早くなっている」と述べている。
・これは、ロシアのセキュリティサービス担当者がミラー紙に、プーチンはあと『2年から3年』も持たず、視力を失いつつあると語ったわずか数週間後のことである。
・ロシア指導者の末期的な病気のニュースは、ロシア諜報員から逃亡中の元FSB諜報員ボリス・カルピチコフへの秘密のメッセージの一部として浮かび上がったものである。
・メッセージは、プーチンが弱さを認めることを恐れて眼鏡をかけることを拒否し、「制御不能の怒り」をもって部下に暴力を振るっていると警告している。
・タジキスタン大統領がプーチンの脚を見下ろし、ロシアの専制君主が脚の震えと格闘しているように見える最近の映像が撮影された。このニュースは、プーチンが先月ソチで盟友アレクサンドル・ルカシェンコと国営テレビに出演した際、2人が座って会談している間、足をぎこちなくひねっている様子がカメラに収められたわずか数時間前に浮上したものである。
・プーチンがこのような奇妙な動きをするのを撮影されたのは2度目。
・プーチンは、最近の健康問題の報道にもかかわらず、木曜日にモスクワでかなり珍しい公の場に姿を現した。
・プーチンはピョートル大帝の生誕350周年記念日に演説し、モスクワが率いる反スウェーデン連合がスウェーデン帝国を粉砕し、ロシアをヨーロッパの新しい帝国として確立した大北方戦争に言及した。
・プーチンは、かつてスウェーデンが所有していた土地にサンクトペテルブルクを建てたことについて話しながら、「(ピーターは)スウェーデンと戦って領土を奪っていたようだ」と、にやりとした表情で聴衆に語り掛けた。「彼は何も奪っていない。奪還したのだ」
・さらに、今度は開戦の舞台となった現在のエストニアにあるナルバの戦いについて言及し、「なぜ彼はそこに行ったのか? 取り戻すため、強化するために行ったのだ」と。そして、これらの価値を私たちの存在の根本とするならば、私たちが直面している問題にも勝てるだろうとのべた。
・大統領はその後、若い科学者や起業家とのセッションで、ロシア人がより良い生活を送るには、彼のウクライナ侵攻により制裁で世界から切り離された後、10年待たなければならないことを認めた。
・彼はセッション中に聴衆の一人から、『では、10年後にはもっと良い暮らしができるのでしょうか』と尋ねられた。プーチンは、『そうだ。最終的にはこれ(私が設定した目標の達成)が、より良い生活の質につながるだろう』と答えた。
3.プーチンにはロシア国家を運営していく気持ちがない
こうした健康不安説もあり、ウクライナ侵攻以降、色んな界隈でプーチン失脚説が取り沙汰されてきたのですけれども、6月10日、ロシア政治を専門とする筑波学院大・中村逸郎教授がMBSの情報生番組「よんチャンTV」で、プーチン大統領が6月末までに99%辞任すると断言しました。
その根拠は、直近のロシア国内の動きとして「毎年恒例となっている国民との対話番組が放送延期になった」ことや、「メドベージェフ前大統領やラブロフ外相が政権末期を思わせる発言をしている」こと、そして「政権崩壊に対応する国の体制作りが着々と進んでいる」ことを挙げています。
更に、プーチン大統領が毎年4月までに発表している年次教書に触れ、「ロシアの内外の基本政策を発表して、それに向けて議員達が、連邦議会が法案を作成しなくちゃいけない、非常に重要なものなんですが、今年はまだやってないし、やる意志もない。予定が出てきていない……もはやプーチン大統領はロシア国家を運営していく気持ちがない。または、辞任に向けて進んでいるんじゃないかということです」と述べています。
また、イギリスでも、情報機関MI6の元諜報員クリストファー・スティール氏が、BBCラジオの番組でプーチン大統領について「今後3~6ヶ月以上、政権にとどまっているとは思わない。健康が悪化している兆候が第一にあり、それが要因になる」とCIAを始めとする自身の情報源が話していることが正しければ、数ヶ月で権力を失う可能性があると述べています。
4.首相交代が退陣のサイン
これらを背景に、今後、ウクライナ情勢とプーチン政権はどうなっていくのか。
これについて、かつて時事通信でモスクワ支局長を務めた経験を持つ拓殖大大学院の名越健郎特任教授は、週刊誌の取材に対し次のように答えています。
──首都キーウの電撃陥落に失敗したロシア軍は3月下旬以降、東部ドンバス地方に兵力を集中していますが、戦況は泥沼化する一方です。このように名越特任教授は、ロシア国内で戦争継続に対するフラストレーションが非常に激しく、強くなっているもののプーチン政権打倒まではいかず、プーチン大統領はドンバス地方のルガンスク、ドネツク両州を支配下に置くまで戦争を継続しようとするだろうとしながらも、信頼のおける指導者を新大統領に据え、院政を敷くことは考えられると述べています。
名越特任教授:ロシア国内では当初、ウクライナ戦争を支持する空気が支配的でしたが、5.9対独戦勝記念日で潮目が変わりました。プーチン氏は戦局をめぐる新機軸を示さず、とりわけ出口戦略を打ち出せなかった。それで雰囲気が変わり始めました。モスクワから帰国した日本人に聞くと、「大っぴらに言うことはできないけれど、たいていの市民は内心では戦争に反対している」と。
──ウクライナにルーツがあったり、親族を持つ市民が少なくないからですか。
名越特任教授:そういった背景もありますし、「プーチンの戦争」の中でも、モスクワのアパート爆破事件に起因した第2次チェチェン紛争や、欧米がアサド政権打倒を狙ったシリア紛争への介入とは事情が異なります。国際社会による経済制裁の強化で生活苦が広がり、失業者も増えている。「ウクライナ戦争はいつまで続くのか」「この先の暮らしはどうなるのか」という不安が増幅しているのです。ただ、市民が抗議したり、反戦運動を展開してもプーチン氏には響きません。決して譲歩しない。というのは、ロシアの歴史を動かしてきたのはエリートだからです。
──プーチン体制を支えてきた政治家やオリガルヒ(新興財閥)の一部は離反しています。
名越特任教授:確かに、エリートの意識についても5.9以降は変化が見られます。戦争賛成派からも、戦争反対派からも反プーチン機運が高まっている。ロシアの通信アプリ「テレグラム」には賛否にかかわらず、退役軍人がかなり投稿しています。「これが戦争なのか」「作戦がズサンだ」「指導がデタラメだ」「兵器が古すぎてNATO(北大西洋条約機構)が支援するウクライナ軍には勝てない」といった批判が渦巻いている。戦争継続に対するフラストレーションが非常に激しく、強くなっている印象です。とはいえ、体制をひっくり返すような気概はまだ見られない。
──2020年の憲法改正で大統領の任期は2期12年に延長。プーチン大統領はギリギリいっぱいの36年まで職にとどまるつもりでしょうか。
名越特任教授:それはさすがに無理でしょう。2年後の24年3月17日に実施される大統領選で5選する目もなくなったと思います。戦争を仕掛ける前は出馬するつもりで、ウクライナを簡単にやっつけて属国にした、という成果を手に続投するシナリオがありましたが、完全に崩れてしまった。これだけ残虐行為が明らかになってしまうと、もはや外交はできませんからね。憲法改正では大統領の諮問機関「国家評議会」の権限も強化された。そのトップの議長に就き、信頼のおける指導者を新大統領に据え、院政を敷くことは考えられます。
──後釜をうかがう面々はどんな顔ぶれですか。
名越特任教授:ラトビアに拠点を移したロシアの反政府系メディア「メドゥーサ」(5月25日)は、エリートの間で「ポスト・プーチン」をめぐる議論がますます広がり、後継者の名が静かに話し合われていると報じています。候補者リストに名前が挙がっているのは、大統領直属の「安全保障会議」で副議長を務めるメドベージェフ前大統領(56)、モスクワ市長のソビャニン氏(63)、大統領府第1副長官のキリエンコ元首相(59)の3人。ウクライナ戦争に直接関与した国防省や情報機関の関係者はさすがに難しい。戦争との距離が軸になるでしょう。最有力視されているのが、メドベージェフ氏。経済運営に失敗して2年前に首相をクビになった上、反体制派指導者のナワリヌイ氏に汚職を暴露されたこともあって国民の評価は低いのですが、大統領を4年間務め上げ、プーチン氏を裏切らなかった信頼感がエリートの間で強い。つまり、利権の維持です。クレムリンのトップに立つ要素としては、利権の差配が最も重要。その点でメドべージェフ氏には安心感がある。本人も意識しているようで、メディアでの発信を強めています。本来はリベラル寄りなのに、あえてタカ派的な発言を繰り返しているように見えますね。
──NATOの北方拡大をめぐり、対抗措置として「当然、国境は強化されなければならない」「バルト海周辺で核のない状態という話はあり得ない」と発言し、核配備の可能性を示唆しました。残る2人は?
ソビャニン氏はモスクワの近代化に貢献したものの、新型コロナウイルス対策で失敗。シベリア系の少数民族出身なのもネックです。クレムリンの政治戦略を担当するキリエンコ氏は、ウクライナ対策の責任者に起用され、プーチン氏と頻繁に接触する立場にある。90年代のエリツィン政権下では30代の若さで首相に抜擢され、野心家とされるものの、ウクライナ風の姓がマイナスに働きそうです。戦勝記念式典でプーチン氏と親しげに話していた大統領府報道部のコバリョフ氏(36)が注目を集めていますが、ロシアの学者に尋ねたところ、「36歳の若者はさすがにあり得ない」と。父親が国営ガス企業「ガスプロム」の幹部で、プーチン氏とはクレムリンのアイスホッケーチームの仲間ですが、続報がないことからその線はないと思います。もっとも、戦争が続く限り、プーチン氏は後継者問題を表に出さないでしょう。レームダック化につながりますから。
──戦争終結とプーチン退陣。どちらが先になると見ていますか。
先は全く見通せませんが、少なくともプーチン氏はドンバス地方のルガンスク、ドネツク両州を支配下に置くまで戦争を継続しようとするでしょう。「特別軍事作戦」の実施発表に先立つ2月21日の演説で、親ロシア派組織が名乗る「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名し、ロシア軍に駐留を命じた。彼の論理としては、最低でも2州ということになる。大統領支持率が83%に達した3月下旬ごろはクレムリンが停戦に前向きだったのですが、交渉を重ねてもまとめきれなかった。現状では続けざるを得ないでしょう。もっとも、いったん目標を達成しても、米国を中心とするNATOなどから大量の武器支援を受けているウクライナが押し返す可能性もある。
──パーキンソン病や甲状腺がんなど、プーチン大統領の健康不安説が盛んに報じられ、4月にがん治療を受けたとも伝えられています。
テレグラムに投稿する謎の「SVR(対外情報庁)将軍」は4月末、「大統領の健康状態が急変した場合、国の運営をパトルシェフ安全保障会議書記に移管することで2人は一致している。医師は早期外科手術が必要としているが、プーチンは同意していない」「来年はポスト・プーチンの時代になる」と書き込んでいました。パトルシェフ氏(70)はKGB(ソ連国家保安委員会)時代のプーチン氏の先輩で、盟友。ただ、憲政は大統領が職務執行不能に陥った場合、首相が大統領代行に就き、3カ月後に大統領選を実施すると規定している。首相以外の人物に「権力の移管」はできません。
──プーチン氏もそうしたプロセスを経て大統領になりました。
一方で、現首相のミシュスチン氏(56)は2年前に連邦税務局長官から抜擢された経済テクノクラート。イデオロギーを持たないため、後継は厳しい印象です。
──首相交代が退陣のサインに?
それは十分にあり得ます。
──そもそも、なぜプーチン氏は無謀な侵略戦争に突き進んだのでしょうか。
最大の要因は安全保障観でも世界観でもなく、歴史観でしょう。ウクライナはソ連指導部の手違いで誕生したという歪んだ歴史観がコロナ禍の隔離生活で増幅され、凝り固まってしまった。「プーチン排除」に至ることがあれば、それが停戦への最短コースでしょう。
そして、プーチン大統領が排除されることになれば、それが停戦への最短コースになるとしています。
これは裏を返せば、プーチン大統領が健在である限り、ドネツク、ルガンスクの最低二州を完全制圧しない限り停戦にはならないということです。
今のままだとウクライナは十分6月末までなんか頑張ると思いますし、もし、筑波学院大の中村教授のように6月末までにプーチン大統領が退陣するのであれば、ようやく停戦の目が見えてくるという訳です。要注目ですね。
この記事へのコメント
mony
今はどの情報も信じずに見守っています。
とりあえず、数十年したら少し真実がわかるでしょう。
ネットの過激派みたいなのも跋扈してるので
気を付けないといけません。