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1.報道ステーションの報道事故
6月16日、テレビ朝日「報道ステーション」で行われた参院選に向けた9党の国政政党党首が参加した党首討論中に、NHK党の立花孝志党首が"途中退席"するという事件が起こりました。
これは、ウクライナ情勢を受けて、国民の安全をどう守るかの安全保障がテーマとなった議論で、スタジオとは別室からリモートで出演した立花党首は「テレビをご覧のみなさん。テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。テレビは国民が知る権利を隠している。本日お昼過ぎ、テレビ朝日のプロデューサーからお手紙を頂戴しました。テーマから逸脱する発言は控えていただくよう、万が一そのような発言があった場合はしかるべき対応をとる場合があるとご承知おきください」と切り出しました。
この発言に大越健介キャスターが「立花さん、今の発言はおっしゃる通り、認められません。発言を止めてください」とストップがかかったが、立花党首はそのまま「これについて電話を差し上げたところ、追い出されると。政治家の発言をテレビ局の方が事前にあれをするな、これをするなと介入は恐怖を感じます」と発言。大越キャスターが「その発言は認められないので、ここで打ち切らせてもらいます」とストップをかけると、立花党首から画面が切り替わりました。その後、立花党首の姿は画面から消え、9党首のワイプ画面でも無人の椅子が映し出される「放送事故」となりました。
この事態にネットは騒然。「シッカリ安全保障ど真ん中に迫る発言、武器による侵略はその裾野でしかない事を実感した」とか「確かにそうだ。そして、テレビが一政治家の発言を制限したり抑えたりするなんて、何の権限でそんなことするんだ?」とテレビ局を批判する声が挙がりました。
他方、「自称目覚めてる人達のガス抜きでしょう。追い出されたのも含めて演技。わかりやすくウクカラーのお召し物ですしこれに騙されないで欲しい」とか「公共の電波ですからね。クーデター軍が電波ジャックするようなやり方は感心できません。一方で、テレ朝も思い切ったなと。映像はそのままにマイクのボリュームを絞ってスタジオで引き取るとか、できなかったものか」とか「N党も立花氏も99%否定派だが、情報統制は100%反対だ。どんなに掛離れた話しの様に思えても、最後に繋がりを明かした可能性が0では無いのだから」などという否定的な意見もあり、賛否両論で沸き立っています。
テレ朝「発言中だったがテーマから逸脱してると判断した、立花党首は自ら退席した」 pic.twitter.com/uFER0J5mEf
— JapanPoliticsChannel (@JpPoliticsChl) June 16, 2022
2.マスコミの既得権益を破壊し始めた立花孝志
テレビ局から出てきた立花党首は自身のYouTubeチャンネルに出演。テレビ朝日から送られてきたという文書を手に「みっともないから、追い出される前に出てきました……今日のお昼ごろに、本日放送の報道ステーションの出演について改めて下記の部分についてご確認お願いします」と来たとし、この日のテーマは「1、日本の安全を守る体制について 2、物価高など、日本国内の暮らしへの影響について」と紹介。「上記のテーマから逸脱する発言は控えていただくようお願いいたします万が一、そのような発言があった場合にはしかるべき対応をさせて頂く場合もあることをご承知おきください」と書かれていると説明しました。
テーマから逸脱する発言をするなという"圧力"をしていたこと自体驚きなのですけれども、なんでも立花党首は同じく番組に呼ばれた国民民主党の玉木雄一郎党首に確認して、玉木党首にはそのような文書は送られていなかったと明かしています。
立花党首は「そもそも政治家の発言に、事前にテーマ通りにしゃべりなさいと圧力をかけてくることが、テレビの怖さをすごい感じましたよ。怖いでしょ。テレビ局の人は、無意識に圧力をかけるんですよ。テーマ通りにしゃべろ。そうしないと追い出すぞ、と。僕にだけに警告しているのおかしいでしょ。報道機関にいた人間として、事前に出演者にこのような警告文を出すんだったら、最初から出すなってことですよ。一番やっちゃいかんことでしょ。出演者の発言に対して、事前に制限をかけるというのは一番やっちゃいけないことだし、何より怖いんですよ」と述べました。
そして、さらに、途中退席のもう一つの理由として「どのレベルならつまみだされるんですか。原稿書いて、その通り話すから、チェックして下さい」と言ったところ「事前にテレビ局が発言をチェックするのは、恐れ多くてできません。原稿を見ることはできませんってくるんですよ。ほんま、どっちやねんって」と怒りを露わにし、「無意識に政治家の発言に圧力をかけるのがテレビ局だな」と主張しました。
恐れ多いなんて言葉で誤魔化していますけれども、党首討論の発言を事前に検閲することは、選挙そのものの否定に繋がりますからね。流石にそれは出来なかったのでしょう。
とはいえ、テーマから逸脱する発言をするなという"圧力"をかけていたなら同じことです。しかも国民民主の玉木代表にはその旨の「警告文」は送ってないのであれば、猶更です。
自分の気にいらない発言はさせないのなら最初から出演させなければいいのです。けれども、それだど政党要件を満たす国政政党の党首を出さないことになり、選挙における公正中立の原則を自ら破ることになります。ですから局としてはしぶしぶ出演依頼をしたのかもしれません。
要するに、表で「公正中立」を謳っておきながら裏で工作していたことを、公に暴露されてしまったという訳です。
6月6日のエントリー「10億で議席を買おうとした帰化中国人」で、立花党首の政治活動そのものが既に、既得権益を破壊しているのだと述べましたけれども、ここでも、マスコミの既得権益を一部なりとも破壊し始めたといえるかもしれません。
3.信頼度最低の朝日新聞グループ
6月15日、イギリスのロイタージャーナリズム研究所は「デジタルニュースリポート2022」を公表しました。この研究所は、デジタル時代にメディアや報道の影響がどう変化しているかを毎年調査しており、リポートはネットを主体に読者・視聴者に行ったアンケート調査に基づき、世界各国の各メディアへの信頼度を示しています。
今年の調査は全世界で9万人超を対象に行い、日本では2015人が調査に応じました。ニュースへの信頼について尋ねたところ、「信頼する」は前年比2%増の44%で、30%台に落ち込んだ2019年と2020年と比べて、やや復調傾向を示しました。
注目のニュースメディアに対する信頼度調査は今回、新聞(読売・朝日・毎日・産経・日経・地方紙)、テレビ(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)、雑誌(週刊文春、週刊新潮)、ネットメディア(ヤフーニュース)の15社についてそれぞれ信頼できるかどうかを尋ねたのですけれども、「信頼できる」と答えたニュースメディアは、NHK(57%)が最も多く、日本テレビ(52%)、日本経済新聞(同)、地方紙(51%)、TBS(50%)となりました。
この中で朝日新聞グループは、朝日新聞が42%と新聞社で最も低く15社中13位。テレビ朝日は47%と15社中9番目と、テレビ局では最も低い順位となりました。
去年の調査でも朝日新聞は15社中12位で新聞社で最も低く、テレ朝は15社中7位と中位ながらテレビでは最後列という結果だったことを見ると、朝日系列の信頼度の無さは、今年だけの話ではないということです。
その中での今回の放送事故は、信頼度の低下を駄目押しすることになると思います。
4.テレビはこんなに嫌われているんだ
このようなテレビの傲慢さについて、当事者はどれだけ気づいているのか。
これについて、報道番組で司会を務めるTBSの井上貴博アナウンサーは「Yahoo!ニュース Voice」に次のように答えています。
――平日は毎日テレビに出られていますが、視聴者からのテレビに対する反応はどのように感じていますか?井上アナウンサーのように、視聴者からテレビは嫌われていることを感じ、一番多様性をなくしているのはテレビメディアだと自覚している人がいることが、まだせめてもの救いなのかもしれませんけれども、今後テレビが自浄作用を発揮することもなく、「無意識に政治家の発言に圧力をかける」ことを続けるのであれば、国民から見捨てられ、メディアの世界の単なるワンオブゼムとなって、その既得権益を失う未来しか残ってないのではないかと思いますね。
井上貴博: テレビカメラの前で話していて「わー、こんなに嫌われているんだ」と日々思うんですよね。同業の皆さんも同じようなことを感じていらっしゃると思いますが……。目の前にお客さんがいるわけではないのに「あ、お客さんがいますごく引いたな」っていう感覚があるんですよ。こっちの勝手な感覚なので間違っているかもしれないですけど。インターネット上の反応や会社に送られてくる声を見ても、やっぱり嫌われているんだと思います。
でも、もう一回「テレビメディア、捨てたもんじゃないな」「テレビって面白いね」というところに持っていきたいですね。私自身テレビ嫌いを公言しているのに何なんだと思われるかもしれないけど。テレビがいつまであるかわからないですけど、もう一回テレビへの価値観をひっくり返したいという気持ちは、ものすごく強くあります。
局アナという職業も人気がなくなりつつあって、入社試験に来てくれる人が本当に減っています。だけど、もう一度「なりたい職業ランキング」にランクインしたいっていうのも、自分の原動力になっています。
――テレビが嫌われているという感覚は、入社当時とは異なりますか?
井上貴博: 違いますね。やっぱり年々、逆風が強くなっている感じがします。でも、今まで傲慢な進め方をしてきたのは我々なので、それも当たり前だと思うんです。そのツケが回ってきているというのも、もちろんわかるんですけど「ここまで厳しいのか……」とも思います。
厳しいからこそ“ひっくり返しがい”がありますけどね。最近は、なんとなく自分の人生自体をRPGだと思っているので、「こうやって厳しいダンジョンが続いた方がやりがいがあるな」とポジティブに捉えています。
――井上アナは自分の意見をはっきり言うことで有名ですが、社会人になる前からそうでしたか?
井上貴博: そうだったと思います。目上の人に対して、なるべく意思表示をしなければ状況は変えられないし、自分がやっている意味がないと思っていたので、学生時代から意思表示はしていました。
でも、オンエアで自分の意見を言うことに関しては、番組全体のバランスを取る意味も含めて、あまり言うべきではないとずっと思っていました。局アナの職業病でもありますが“自分の発言は局の発言である”という意識も強かったので、コロナ禍前はオンエア上では自分の意見を発することを控えていました。しかし、コロナ禍をきっかけにその考えを変えることにしました。
――コロナ禍で自分の意見を言うようになったとき、周りの反応はいかがでしたか?
井上貴博: 視聴者の方からの反応がとても強かったです。大多数は「局アナがなんでそんな意見を言っているんだ」というお叱り、ご指摘ですね。「よくぞ言った」という反応は少なかったです。社内的にも「おいおい…」といった雰囲気がありました。
自分の意見を言って思ったことは「何を言っても叩かれるし、人間性まで全て否定されるんだな」と。名前も顔もさらしてしゃべっているので、逃げ場がないんですよね。もちろんある程度覚悟はしていましたし、辞めることになっても仕方ないなと思っていました。それはそれで僕の人生なので。でも、テレビに対してここまで鬱屈したものがあるならやってみようと覚悟して、やり続けて、言い続けました。
ただ、意見を言うときは、誰かを傷つける発言だけは絶対にしないと決めて、“個人的には”とか“僕は”「こう思います」と述べるようにしています。「国民がこう思っています」とか「若者がこう思っています」という言い方は絶対NGにしているんです。このようにオンエアでは“自分”を主語にして意見を言い続けて自由に泳がせてもらっているので、会社には本当に感謝しています。
――テレビ業界の中で、特に変えたいと思っていることはどんなことですか?
井上貴博: 近年、“多様性”が重視される中で「なぜテレビは全部一つの方向に伝えているのか」「これだけたくさんの局があるなら、もっと各局の特色があっても良いんじゃないか」と、ずっと疑問を持っていました。もちろん放送法には準じますし、人を傷つけるような発言はNGです。
一方、新型コロナウイルスに対してもさまざまな見方があるなかで、「一つに偏っていないか」「本当にそれで良いのか」というのは、もう少し提示すべきなんじゃないかと思います。
多様性が叫ばれている中で、一番多様性をなくしているのは自分たちテレビメディアなんじゃないかなと。多様性がないことの窮屈さは全てのニュースですごく感じますし。だから、新型コロナウイルスに関してはテレビで出されていないような発言をするようにしています。例えば「コロナは怖い」と言うだけではなく、他のデータと比較するようにしたり、“感染者”ではなく“検査陽性者”という言葉を使い続けたりするように心がけています。
もしかしたら「命が大切です」と誰もが必ず肯定することを伝えるほうが安全なのかもしれません。でも、本当にそれで良いのかなと。コロナから命を守ることも大事だけど、経済も命だし、全部命ですからね。まあ、僕はこういう人間ですし、もともとテレビ嫌いなのにテレビ局に入社した生意気な人間なので、一人くらい他とは違うこういう奴がいても良いかなと思ってやってますね。
正解とかは全然わからないですけど、こういうところからも「テレビは本当に変わらなきゃいけない」と心の底から思っているんです。
――自分の意見を言うことに怖さはありますか?
井上貴博: 怖さはありますね。怖さはないといけないんじゃないかなと思います。怖さがなくなって、公共の電波でわがままを言いたい放題言うようになっては良くないと思うので。でもテレビ全体、メディア全体が一つの方向に向かうことは気持ち悪い。
令和の時代、“誰も傷つけない”ということがすごくキャッチーになって、良いものとされていますよね。そこは僕も良いと思います。誰も傷つけちゃいけないし、傷つけるべきではないですから。一方で傷つけないことを大前提とした上で、誰も傷つけない言葉は、もしかしたら誰にも届かない言葉なんじゃないかとも思うんです。要は自分が傷つく覚悟があるかないかで、結局誰かを傷つけていると思うんですよ。1億人いたら、1億人全員を傷つけない言葉なんてあるのかなと、どこかでうそぶいている自分もいます。
――後輩や後生に対してはどんな思いがありますか?
井上貴博: 僕はやっぱり、生意気な後輩の方が好きですね。僕も生意気でいつづけたいし、後輩も僕に対して生意気でいつづけてほしいなと思います。言いたいことを言ってほしいし、歳を重ねたら丸くなるんだから若いうちくらいはトガっていないと。先輩としては後輩が生意気でいられる環境を作ってあげたいです。
あとは、世の中を動かしている人や経済を動かしていると言われるTwitterやInstagram、TikTokで人気を得ている若い世代が声をあげやすい環境を作っていかないとテレビはもちろん、日本社会全体の先がないんじゃないかと思います。報道で「最近の若者が~」とか言っている場合じゃない。若者がどれだけ優秀で感覚が優れているか、ちゃんと向き合おうよと思いますね。若い世代が声をあげやすい環境を作れると良いですね。
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