現代の「兵農分離」が選挙をぶっ壊す

今日はこの話題です。
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1.参院選序盤情勢


参院選2022議席予測!議席を伸ばす党はどこ?選挙プランナーの予測を解説!選挙ドットコムちゃんねるまとめ

参院選が始まり、早くも各党の獲得議席予想が報じられています。

選挙プランナーの松田馨氏は、自民党が6、日本維新の会が6、れいわ新選組が3、議席を増やし諸派の中で参政党が新たに議席を1獲得すると予測。一方で立憲民主党と共産党が2、国民民主党は3、社民党は1議席減らし、公明党とNHK党は増減なしという予測になっています。

また、衆院選の議席予測が的中したことで話題になった選挙プランナーの三浦博史氏は、自民党は現有議席から5、6議席増、公明党は現状維持か減らしても1議席、立憲民主党は3議席程減、国民民主党も4議席ほど減らす一方、日本維新の会は8~10議席増やす可能性があるとしています。

今回の参院選について政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、維新は2021年の衆院選で躍進したものの、その後の西宮市長選挙では勢いを落としていることや、ウクライナ情勢をめぐる一部関係者の発言で支持者の中でも維新の評価が割れたと述べています。

そして、参政党について「橋下さんが(維新を)創設したころの街頭演説に匹敵する熱量がある」と評価し、維新の票が参政党に削り取られる可能性について言及しています。

角谷氏は目下の世論について、ガソリン価格の高騰に物流コストの高騰で物が値上がりしているにも関わらず、自民党に対する怒りが沸騰してこないことを指摘。これまでの野党共闘は、安倍元総理から「こんな人たち」とか挑発されて「安倍政治を許さない」と熱を上げ、有権者も呼応したのに対し、岸田総理は「スミマセン」って謝ってしまうから、振り上げた拳の持って行き場がなくなって、熱にならない、と述べています。

角谷氏によると、4月の段階では野党が強いと言われた選挙区でも今では自民が押し返して来ているそうです。

実際、自民党が5月に実施した参院選の極秘情勢調査では、自民党は事前の予想を上回る高い支持を得ていて、全国で32選挙区ある1人区のうち、24選挙区でリード。比例区の得票数も前回選挙よりも1割以上増えて1900万~2000万票に達し、20~21議席を獲得する勢いとのことです。

これにより自民党の議席数は、選挙区と比例区を合わせて60議席(改選54)を窺う情勢のようです。


2.なぜ自民党は勝ち続けるのか


では、なぜこれほど自民党に支持が集まっているのか。

2012年以降、国政選挙では、自民党による圧勝が続き、自公連立与党では3分の2前後の議席を獲得することが珍しくなくなりました。

勝った政党は、政権公約が支持されたとして、それらを実行していくことになるのですけれども、日本の有権者は本当にマニフェストに基づいて政党を選択しているのかどうかという視点からの研究が存在しています。

アメリカのダートマス大学政治学部の堀内勇作教授は、マーケティングで使われる統計分析手法「コンジョイント分析」をつかって、その解明を試みています。

コンジョイント分析とは、1980年代にアメリカで急速に発展して、多くの企業で活用されている調査方法で、回答者に開発している商品全体を評価をしてもらい、商品の各要素がどのくらい商品全体の評価に影響を与えているのかを明らかにするという特徴を持っています。

例えば自動車を購入する際、次の4つの選択肢があったとします。
・100万円で燃費が良く、無名デザイナーAが手掛けた車
・100万円で燃費が悪く、有名デザイナーBが手掛けた車
・150万円で燃費が良く、有名デザイナーBが手掛けた車
・150万円で燃費が悪く、無名デザイナーAが手掛けた車
これらを回答者に選んで貰うことで、複数の要素を同時に比較することが可能となり、自動車購入において消費者が重要視しているのが、価格なのか、燃費なのか、デザインなのかといった要素の軽重を明らかにするというのがコンジョイント分析です。

単に、消費者に個々の要素について質問を積み重ねると「高品質でなるべく安い製品が良い」という当たり前の答えしか得られないところが、このコンジョイント分析を使うことで要因に優劣がつけられるというのですね。


3.コンジョイント分析で見えた自民党ブランド


堀内教授は、日本の有権者がマニフェストに基づいて政党を選択しているのか解明するため。2014年、17年、21年と3回の総選挙で、若手政治学者たちとこのコンジョイント分析を用いて調査しました。

堀内教授は21年の総選挙で、全国の有権者を対象に実施したオンライン実験を行いました。

実験は、争点ごとにどれか1つの政党の政策をコンピューター上でランダムに割り当て、2つの架空政党を生成しました。例えば、下図の「政党2」は、国民民主党の「原発・エネルギー」政策、公明党の「外交・安全保障」、立憲民主党の「多様性・共生社会」、日本維新の会の「コロナ対策」、自民党の「経済政策」の組み合わせたものです。

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このような架空の政策パッケージを回答者に繰り返し選んで貰い、得られたデータを統計処理した上で、争点ごとに各政党の政策が、回答者の政党選択にどれだけ影響するか推計しました。

その結果、驚くべきことに、他の政党の政策に比べ、自民党の政策が必ずしも支持されていないということが明らかになりました。下図は21年の結果なのですけれども、赤い点が争点ごとに、各政党の政策が表示された場合の「政策パッケージ」選択確率です。

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選択肢は2つなので、50%(図中で「0.5」)ならその政策は平均的に、有権者にとってどちらでもよいことになります。

また、赤い点の左右に延びている棒は、統計用語で言う「95%信頼区間」で、この棒も0.5から外れると有意に正あるいは負の影響を与えていることを意味しています。

これを見ると、武漢ウイルス対策は、立憲以外の政党の政策はどれも0.5から乖離しておらず、政党を選ぶ上であまり重要ではなかったことが明らかになる一方、立憲の入国規制強化を強調した政策は明らかに不評だったことが分かります。

また原発の再稼働を推進し、選択的夫婦別姓の実現に向けた取り組みを明らかにしない自民党に「民意」は「ノー」を示し、0歳から高校3年生まで一律に10万円相当の給付を訴えた公明党の経済政策は、全争点の全政策提案の中で最も支持されていない結果となりました。

ところが、注目すべきは青い点です。

これは、同じ回答者に2回目の作業をしてもらい、「政党1」と「政党2」の代わりに「自民党」と、ランダムに割り当てられた別の政党を表示し、「どちらを支持しますか」と質問しました。

図中の青い点は、「自民党」の政策パッケージだと提示された場合に、その政策パッケージを選択する確率が跳ね上がることを示しています。平たくいえば、政策パッケージに自民党以外の政党の政策が含まれていても、「自民党」とラベルがあれば、そのパッケージを選ぶ確率が10ポイントほど増えるというのですね。

例えば、外交・安全保障の共産党の政策は、「安保法制の廃止、軍縮へ転換、敵基地攻撃能力の保有に反対」で、政党名が表示されない場合を示す赤い点は0.5を大きく下回り、明らかに支持されていません。

ところが、この共産党の安保・安全保障政策が含まれても、パッケージに「自民党」とあれば回答者は50%よりも有意に高い確率で選ぶという結果となっています。つまり自民党は、マニフェストとは関係なく、ただ「自民党」というブランドだけで、有権者の支持を得ていたという訳です。


4.国会議員という参入障壁


この結果は、選挙においては、政策の中味よりも看板が大事だということを意味します。戦後何十年も与党の地位を守り、そこそこ日本を導いてきたという安心感がそうさせるのかもしれませんし、あるいは、民主党に一度やらせてみたら、酷い目にあったという苦い記憶がそうさせているのかもしれません。

では、このまま自民党に国を任せ続けるのか、あるいは、他に任せられるところがないから仕方なく自民を選択し続けなければならないのか、というと必ずしもそうでない可能性が僅かにあります。

先述のコンジョイント分析では、自民党はその政策よりも「自民党」というブランドによって支持されているという分析結果を導いていますけれども、逆にいえば、そのブランド価値が棄損あるいは下がってしまえばその限りではなくなるということです。

筆者は、6月23日のエントリー「しどろもどろの岸田総理と破壊力満点の立花党首」で、NHK党の立花党首が岸田総理に、中国のサイレントインベージョンを質問してしどろもどろにさせましたけれども、ああいうのが重なっていけば、自民党というブランドが落ちていくこともないとはいえません。

また、件のエントリーで、NHK党は既得権益を破壊する役割を果たすだろうと述べましたけれども、振り返ってみれば、国会議員という存在そのものも最早「既得権益」となっているのではないかとさえ思えます。

なぜなら、現在の選挙においては、新規参入者の参入障壁が異常に高いからです。

複雑な公職選挙法や立候補の際、選管に収める高額な供託金は勿論のこと、政党要件という障壁もあります。

政党要件とは、衆参の比例区に候補者を立てられたり、政党交付金を受け取れたりする「政党」になる基準のことで、(1) 所属国会議員が5人以上 (2) 所属国会議員が1人以上、かつ、前回の衆院総選挙、前回の参院選挙、前々回の参院選挙のいずれかの選挙における全国を通じた得票率が2%以上のいずれかを満たせば政党と認められ、政党交付金を受けられることになります。

政党交付金は人口に250円を乗じて得た額を基準として決まるもので、億単位の額になります。

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例えば、2022年分の政党交付金の見込み額は自民党が160億3600万円、立憲で67億8600万円に上ります。所属議員が参院1人しかいないNHK党ですら2億1100万円あります。

さらに政党要件を満たせば、テレビ討論などにも呼ばれますし、いわゆる「諸派」扱いではなくなります。

今回の選挙で社民党が消滅するのではないかといわれていますけれども、斜陽の社民党が未だにテレビ討論で顔を出しているのも、現時点では、まだ政党要件を満たしているからです。

政党になることでこれだけ優遇されるのですね。

今、一部で話題になっている、参政党でも、この政党要件を満たしていない為にテレビ討論には出演できないでいます。




5.現代の「兵農分離」が選挙をぶっ壊す


筆者は、この既得権益化している選挙制度を、NHK党の立花党首が破壊し始めていると見ています。

筆者は、2019年9月のエントリー「戦略の階層からみた立花孝志とN国党の危険性」で、立花党首が、NHK党の選挙において、政治活動と選挙活動を分離したことに着目し、これを現代の「兵農分離」であると述べました。

この立花党首が導入した「政選分離」は、信長のような革新性に満ちた手法だと思いますけれども、もしこのやり方を他の党が真似して一般化したらどうなるかというと、おそらく、いままで政治の世界には足を踏み込まなかったような優秀な人材が政界に入ってくるようになるのではないかと思います。それほど選挙に出るのはハードルが高く、勝つのはもっと高い。

そのハードルを下げることは、優秀な人材を呼び込む起爆剤になる。それこそ世界有数の企業を一代で築き上げた経営者や、ノーベル賞級の科学者だとか、世界第一級の人物が国会の赤絨毯を踏む可能性が出てきます。

実際、前回の参院選で当選した立花党首が議員辞職して繰り上げ当選した、NHK党の浜田聡参院議員は聡明かつキレのある質疑で高く評価されています。なにせ麻生太郎副総裁をして「面白い男」といわせ、名刺交換まで求められるという逸話もあるほどです。



こういう議員がどんどん増えてくれば、必然的に、どこぞのパパ活して雲隠れするような人とかクイズばっかり出しているような輩といった凡百な政治家は排除されていくことになります。

これは歓迎すべき変化であり既得権益の破壊だと思います。

尤も、既成政党は政治と選挙を分離するというNHK党の常識破りのやり方には中々踏み込めず、排除される側になる可能性は多いにあると思いますけれども、その中でも残るような政治家は逆に本物といえるかもしれません。

そんな既得権益を破壊している立花党首ですけれども、別に法を無視する無頼漢ではありません。あくまでも法の範囲内で、打開策を作り出しているのですね。ただ、そのやり方があまりにも過激で突飛に映るために批判を受けるのだと思います。

信長にしても若いときは「尾張のうつけ者」と呼ばれ、誰も天下を窺う者になるとは思いませんでした。立花党首にしても当初は「バカ」を演じていたようですけれども、最近は真面目な顔を見せる場面も多くなってきました。

23日のBSフジ「プライムニュース」に出演した立花党首は政策を問われ「NHKをぶっ壊す」というワンイシュー以外の政策も述べており、次の段階への準備も始めているように見えなくもありません。

その様子の動画をみてちょっと面白いと思ったのは、立花党首に質問している反町キャスターが腕を組んでいたことです。

腕を組むという行為は心理学的には、相手を警戒しているとか、緊張しているという心理の表れだとも言われていますけれども、あるいは反町キャスターも無意識のうちに立花党首の言説や攻撃力を警戒しているのかもしれません。

立花党首があと何年NHK党を引っ張っていくのか分かりませんけれども、天下を獲る獲らないに関わらず、国益を棄損する既得権益は出来る限り破壊していただきたいと思いますね。


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