ストックの電気とフローの電気

今日はこの話題です。
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1.節電、節電また節電


6月27日、東京都は電力需給が逼迫している状況を受け、節電をよびかけました。

この日の午前に開かれた危機管理対策会議で、小池知事は熱中症に留意しながらの節電として、冷房の室温は28度を目安、使用していない室内の空調停止を徹底する、冷蔵庫の温度設定を強から中に変更する、温水便座は暖房を消し、洗浄水の温度設定を切る、照明の照度の見直す、パソコン画面の明るさ抑制、店舗の広告灯を消すなどの対策を呼びかけました。

また、小池知事は都庁でこの1ヶ月に3.9%の節電を達成したと述べ、都は、今後エレベーターの間引きやコピー機など事務機器の使用制限、ライトアップ点灯の中止などを行う方針としています。

そして、この日の夕方の各局ニュースでは、スタジオ照明を落とすと同時に、男性キャスターがノーネクタイで放送する姿が見られました。

TBS系「Nスタ」では、井上貴博アナがノーネクタイに、ノージャケット姿。スタジオについては「後ろの照明を切りました。モニター1つ、電源落としました」と説明すると「見ている皆さんにも暑苦しいということで、エアコンの設定温度を少し高くして、ワイシャツスタイルでやってみようかと」とコメントしました。

また、日本テレビ系「news every.」では、藤井貴彦アナウンサーがノーネクタイ。「東京電力管内で電力需給ひっ迫注意報が発令されています。熱中症に注意しながら節電を心がけるため、今日はスタジオの照明を落としまして、私もネクタイを外してお伝えしています」と語ると「系列の後輩のニュースアナウンサーから『藤井さん、クールビズでいつからネクタイを外しますか』とよく聞かれるんですが、連絡する時間ありませんでした」と述べて放送をスタートしました。

更に、フジテレビ系「イット!」でも加藤綾子アナが「節電のため今日はスタジオの照明を抑えて放送しています」と冒頭で説明しています。


2.朧げながら浮かんできた室温28℃


日本の電力消費量は、戦後、ほぼ一貫して伸び続けてきました。その理由は、情報化の進展やエアコンの普及にみられるような快適な生活へのニーズが高まった影響なのですけれども、2011年の東日本大震災以降、企業や家庭での節電の取り組みが進み、伸びは鈍化から減少傾向となっています。

その一方、コンピュータや通信など高度情報化社会の進展によって、産業、生活のあらゆる側面で、電気が使用される割合は増加の一途をたどり、エネルギー消費のなかで電気の形で使われる割合、すなわち電力化率は、50%に迫る勢いです。

ここで注目すべきは、2010~14年の電力化率が44%であったのに対し、2020年には48%に迄上昇していることです。

電力化率が高くなっているのに関わらず、電力消費量が2011年以降減少傾向にあるということは、既にそれだけ節電に取り組んできたということです。

それはそれで是とすべきことなのでしょうけれども、いつかは限界がきます。

今回、都庁やニュース各局がエアコンの温度を上げたり、照明を暗くしたり、落としたり、エレベーターを間引きしたりして節電をアピールしていますけれども、裏を返せば、そうした目に見えるレベルで節電しないともう節電する余地がなくなっているということではないかとも思います。

そもそも、がクールビズで推奨する「冷房時の室温28度」にしても、明確な科学的根拠がないことが明らかになっています。

クールビズは2005年夏、地球温暖化対策のため始まりました。毎年5月1日から9月30日まで、上着やネクタイを着用しないなど軽装で過ごすことで、官公庁やオフィスで冷房を節約しようと、冷房時の室温を28度にするよう促しているのですけれども、2017年5月11日、首相官邸で開かれた副大臣会議で、導入当時に担当課長として関わっていた盛山正仁法務副大臣が「科学的知見をもって28度に決めたのではない。何となく28度という目安でスタートし、それが独り歩きしたのが正直なところだ。働きやすさの観点から検討しては」と述べたのですね。

どっかの環境相が温室効果ガスの2030年迄の削減目標46%を「おぼろげながら浮かんできた数字」だったと白状したことで騒ぎになったことがありましたけれども、何のことはない、エアコン温度28度もそれと大差なかった訳です。

日本気象学会によると、熱中症に注意すべき気温は25℃以上で、28℃以上というのは運動量が少ない場合でも、熱中症に気をつけるべき温度とされています。それを考えると室温28℃に拘る理由などまったくなく、自らの身を護ることを最優先にすべきかと思います。

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3.放送やめればいいじゃないか


6月21日、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」は政府が7年ぶりに全国的に節電を要請する方針を出したことを受けて、節電方法などを特集したのですけれども、コメンテーターの玉川徹氏は「節電っていうのはお金だけじゃなく脱炭素って意味では火力発電で作っている電気を節電するということで善だと思う。ただ、政府が節電要請をしてきているのは若干引っかかっている……東日本大震災の後、原発全部止まっても電気は足りました。あれから10年経って逼迫するって何ですかって話ですよ。設備投資するならもっと早い段階で再生エネルギーを増やせばよかったのにやらなかったのは、原発を動かせると思ってたからだと思う」と批判しました。

番組はその後も冷蔵庫や炊飯器、テレビなどの節電を意識した使い方を紹介したのですけれども、玉川氏は「嫌味な奴はこういうのやると『放送やめればいいじゃないか』とか言う奴がいる。うるせえよ」と言い放っています。

放送を止めればいい、というのは、根拠のない話ではありません。

ネットの一部で話題になっていますけれども、2011年4月15日に野村総合研究所が4月15日に発表した『家庭における節電対策の推進』によると、エアコン1台を止めることで期待できる節電効果(1時間あたりの消費電力)が130ワットであるのに対し、液晶テレビを1台消すと220ワットと。テレビを消す節電効果は、エアコンの約1.7倍にもなるということが報告されています。

放送を止めればテレビを見ることも無くなる訳ですから、必然的に節電にも繋がるという訳です。

それを玉川氏は「嫌味な奴」といい「うるせえよ」と罵倒した。これは、反論できないということを自分の口で白状したも同じです。

その昔、芸能人か誰かが「嫌なら見るな」と発言して話題になったことがあったように記憶していますけれども、梅雨が明けたこれからは「死にたくなければ見るな」でもいいのではないかと思います。

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4.安定電源はストックからしか生まれない


玉川氏は「設備投資するならもっと早い段階で再生エネルギーを増やせばよかったのにやらなかった」と政府を批判していますけれども、石油や石炭のような既に貯金というか、ストックを取り崩して電気に変えるのとは違って、風力とか太陽光とか、その場の自然を頼りにするというフローを電気に変えるやり方は、安定したベース電源にはなり得ません。

現在、都が新築戸建てに設置を義務付けようとしている太陽光パネルにしても、たとえ昼日向であっても発電量が安定するとは限りません。

それどころか夏は発電量が減るという話さえあります。

太陽光発電は、パネルに太陽光が当たることで電気を作り出す仕組みです。発電量は太陽光の量と比例しているため、パネルに影が落ちたり、汚れたりしていると、その部分の発電量が落ちてしまいます。このとき発電量が落ちるのがそのパネルだけで収まっていればいいのですけれども、現在主流となっている結晶シリコン型太陽電池モジュールは、太陽電池が直列に繋がっているため、どこか一つの太陽電池の発電量が落ちると全体の発電量も落ちてしまうのだそうです。

太陽電池パネルの発電量は温度や日射強度などいろんな要素によって決まってきます。次は太陽電池が発電する直流電流と日射強度および温度と直流電圧の関係を表した式です。
I=Istc×G
V=Vstc×(1+β×(T-25))

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電流は温度と共に増えるのですけれども、電圧の方はそうではありません。

電圧の式の出力温度係数βの値は、太陽電池が結晶系であれば概ね -0.4%/℃、アモルファス系であれば概ね -0.2%/℃ と言われています。つまり、太陽電池パネルの温度が10℃上昇すると、概ね2~4%、直流電圧が下がり、その分、発電量が目減りするという訳です。

次の図は、ある夏の日に、太陽光発電システムで実際に発電された電流、電圧の1日の変化の例なのですけれども、昼にかけて日射が強くなると、それに伴って発電される電流が大きくなっていくことがわかります。

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一方、夏の太陽電池パネルは日中、60℃を超えるような高温となり、それにより電圧は抑えられ、1日を通じた電圧の変化は、図-1のように「M」字型の特徴ある形になります。

通常、太陽光パネルの性能は、国際的に定められた測定時モジュールの温度が25度の条件で記されています。これがもっとも効率よく電気を生み出すことができる温度なのですけれども、今年のように時には40℃を超えるような日差しでは、パネル温度は70~80℃にもなり、電圧にして10~20%も落ちてしまいます。

気温によって発電量が変わるものをベース電源としてあてにするのは非常にリスクが高いことはいうまでもありません。

先にも述べましたけれども、政府は、電気には安定したストックから作るものと、成り行き任せのフローから作るものの2つがあり、最低限の安定電源はストックからしか作れないことを周知徹底した上で安定電源の確保に努めていただきたいと思いますね。


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この記事へのコメント

  • みどりこ

    テレビの放送を止めるのは大賛成です。
    緊急に放送することがあるかもしれないことに対しては、二、三局残しておけばいいです。
    一度に全部止めるのではなく、どこか数局は放送している、というのでもずい分節電できます。
    それと、パチンコも営業を短縮させてはどうですかね。
    もちろん、どちらも補助金はなしで。
    普段、十分稼いでるんですから。
    2022年06月29日 15:49

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