G7サミットと国際公約した原発再稼働

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2022-06-29 212001.jpg


1.ウクライナ問題とエネルギー問題


6月28日、G7首脳会議は、ロシアへの圧力の強化を盛り込んだ共同声明を採択して閉幕しました。

ドイツのショルツ首相「G7は一体となってウクライナを支援する。われわれは、プーチン大統領がこの戦争に勝利してはいけないという点で一致している」と述べ、厳しい姿勢を示しています。

共同声明の要旨については、こちらで報じられていますけれども、前文でウクライナ問題と世界のエネルギーと食料安全保障の確保を支援を掲げ、次の項で気候・エネルギーについて取り上げています。

要するにウクライナ問題とエネルギー問題が、今のG7、ひいては世界にとっての焦眉の急という訳です。

上述の記事から前文と気候・エネルギーの部分を引用すると次の通りです。
【前文】

▽ウクライナ政府と国民を支援するため結束し、世界のエネルギーと食料安全保障の確保を支援する。プーチン大統領の体制に厳しく、即時の経済的コストを課し続ける。

▽気候変動、パンデミック(世界的大流行)といった喫緊の地球規模の課題への解決策を見いだすため世界中のパートナーとともに取り組む。

【気候・エネルギー】

▽パリ協定への揺るぎない関与を再確認する。現在のところ目標を達成するのに十分ではないことに留意する。

▽開放的かつ協力的な国際気候クラブを2022年末までに設立するためにパートナーと連携していく。

▽ロシアへのエネルギー依存をフェーズアウトすることで妥協しない。ロシアが侵略戦争から利益を得ることを防ぐために更なる措置を追求する。

▽エネルギーの価格高騰を軽減し、経済・社会への更なる影響を防止するための追加措置を探求する。市場の緊張を減らすために生産国の増産を奨励する。

▽化石燃料への全体的な依存を低下させ、遅くとも50年までの温暖化ガス排出ゼロ実現に向け、クリーンエネルギー移行を加速させる。
要するにロシアへのエネルギー依存を減らし、他のエネルギー産出国への増産を呼びかけるとしていますけれども、同時に化石燃料へ依存を低下させ、クリーンエネルギーに移行する、とも述べています。

なんだか、ブレーキとアクセルの両踏みのような政策に聞こえなくもありませんけれども、ここの文言だけでエネルギー問題が深刻かつ難しい現状を示しているともいえます。


2.飛び回る岸田


G7首脳サミットの初日の討議で岸田総理は、「ウクライナ情勢から誤った教訓を導き出す国が出ないようにしなければならない」と厳しい対ロ制裁の継続を主張。ロシア軍による黒海沿岸の港湾封鎖がもたらした食料危機への対応でも「各国の国民生活を守るため、G7が結束しなければならない」と述べたそうです。

というのも、ロシア産エネルギーに依存してきた欧州では物価高が国民生活を直撃し、「制裁疲れ」からウクライナに譲歩を求める世論も目立ち始め、G7の足並みに乱れが見え始めたからです。

ウクライナ危機での譲歩は「力による一方的な現状変更の試み」を容認することにつながりかねないことから、岸田総理は、中国を名指しして、尖閣諸島沖の中国公船による領海侵入や、東シナ海・日中中間線付近の中国によるガス田開発という具体例を挙げて、東アジアでの懸念を首脳らに伝えたようです。

実際、共同声明でも外交・安保政策として「インド太平洋」「中国」「北朝鮮」「ウクライナ情勢」に言及されています。

中国については、「南シナ海における中国の拡張的な海洋権益の主張には法的根拠がない」、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに両岸問題の平和的解決を促す」、「中国における人権状況について深刻に懸念」と指摘。台湾そのものではなく「台湾海峡」であり「両岸問題」と、台湾の国家承認と受け取られないギリギリのラインながら台湾の文言まで入れてみせています。


3.火力発電所再稼働


ロシアへのエネルギー依存を減らしつつもエネルギーを確保し、さらにクリーンエネルギーへ移行するとなると、解決策はほぼほぼ原子力しかないと思われますけれども、岸田総理はサミット後の内外記者会見の冒頭発言でエネルギーについて次のように述べています。
エネルギーについては、ガソリンについて、リッター40円程度の引下げ効果のある激変緩和措置を継続します。

電力については、まずは供給力の確保が重要です。ここ数日、東京電力エリアにおいて、需給逼迫注意報が出ましたが、政府として、今後、2つの火力発電所の再稼働を確保するなど、この夏の供給力の確保に万全を期してまいります。熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使って乗り越えていただきたいと思います。

こうした供給力確保に向けた努力を継続しつつ、電力需給ひっ迫と電気料金高騰の両方に効果のある新たな枠組みを構築し、電気代負担を軽減していきます。
岸田総理は、この夏の電力需給逼迫対策として、火力発電所2基を再稼働すると発言しています。

再稼働するのは、千葉県市原市の姉崎火力5号機(出力60万キロワット)と、愛知県知多市の知多火力5号機(出力70万キロワット)です。

姉崎火力発電ですけれども、もとは1~6号機で構成されていて、そのうち4号機までは運転から40年以上経過し2021年末に廃止となっていました。その代替とそて2023年にLNG燃料による新1~3号機が稼働予定なのですけれども、それまでのいわば繋ぎとして5号機を再稼働させるということです。

また、知多火力発電所もの1~4号機が老朽化を理由に3月31日に廃止。5号機は4月から運転を停止して2026年度に廃止する予定だったところを再稼働するとのことです。

これにより、130万キロワットが補充されることになりますけれども、この2基の再稼働で、東北・東京・中部電力管内の予備率は4%程に改善される見通しだそうです。


4.国際公約した原発再稼働


では、原発についてはどうかというと、記者質問で言及されています。記者とのやり取りは次の通りです。
(産経新聞 田村記者)
内政についてお伺いします。G7では世界的な物価高騰やエネルギーというのがテーマになりましたけれども、日本でも参院選では物価高対策というのが争点になっています。ただ、政府が打ち出した「節電ポイント」については、猛暑というのがあって、野党などからも批判が出ていると思います。冒頭発言でも言及されましたけれども、電気代の負担軽減を含めて、具体的にどのような対策をお考えでしょうか。また、電力需給が今、日本でもひっ迫しているわけですが、原発の早期の再稼働に向けて審査の迅速化など、政府として何らかの対応を考えておられるのか、それについて教えてください。

(岸田総理)
まず、物価高騰対策については、先ほども冒頭発言の中で申し上げましたが、電力ということを考えましても、御指摘の新たな枠組みに加えて、供給力の確保、さらには個人の電力料金については上限制度が用意されるなど、様々な、電力価格に対しても対策を用意しています。併せて、先ほど申し上げました様々な物価高騰対策を用意することで、万全な対策を進めていきたいと思っています。
その上で原子力について御質問いただきましたが、原子力発電所については、政府の方針として新規制基準に基づいて安全が確保されること、これが大前提であり、そしてその上で地元の理解を得られた原子力発電所の再稼働を進めていく。こうした形で供給力の確保に向けて最大限原子力を活用していく、これが基本的な方針です。その際に、原子力規制委員会において、過去の審査における主要論点の公表などによる事業者の予見性の向上、あるいは審査官の機動的配置など、審査の迅速化の取組、これは着実に実施していく方針です。原子力については今言った方針に基づいて最大限の活用を行い、供給力の確保に資する取組を進めていく、こうした方針で臨んでいきたいと思っています。
原発再稼働については、安全性の確認されたものについて、地元の理解を得た上で順次再稼働していく、とこれまでの政府方針を繰り返した形にはなりますけれども、G7サミット後の記者会見で発言したことから、一部からは「国際公約になった」との指摘もあります。

まぁ、国際公約にでもしないと原発再稼働できないというのも少し情けない気もしないでもありませんけれども、それでも再稼働を明言したことは評価できます。

もっとも、原発の稼働には、規制委の審査で福島第一原発事故を踏まえてできた新規制基準をクリアしなければなりません。

この基準は2013年に設定されたのですけれども、それ以降16原発27基の審査申請があり、これまで10原発17基が適合。うち、西日本に立地する6原発10基が再稼働しています。

今後、再稼働が計画されているのは、2020年に新基準に適合し、地元同意手続きも済んだ東北電力女川2号機で、2024年2月の再稼働予定です。まだあと1年半以上あります。

更に、審査が通ってまだ再稼働していない原発は女川2号機を除いても6基もあることを考えると、日本にはまだまだ十分な電力を供給できる余地があります。

果たして岸田総理がどこまで残りの原発を再稼働するところまでもっていけるのか。岸田総理がきちんと「決断と実行」が出来るのか。よく見ていきたいと思います。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント

  • 深森

    何故、海外の場で「原発再稼働の方針」を発表したのか?
    じっくり考察すると、岸田首相ならではの意図が見えて来ますね。
    海外の某・諸国へのメッセージですとか(周辺の関連記事・特に海外時事をさぐってみると、興味深い動きが見えて来ます)

    岸田首相は、つくづく政治と外交の名手であると、うならされます。今回のG7での驚くような成果も含めて。
    答えは、今後の海外情勢の変化の中で、明らかになってゆきますね。
    2022年07月01日 06:46

この記事へのトラックバック