

1.日米韓首脳会談
6月29日、岸田総理はアメリカのバイデン大統領、韓国のユン大統領とおよそ5年ぶりとなる日米韓3か国の首脳会談を行いました。
その模様は外務省のサイトで公開されていますけれども、概要は次の通りです。
1)冒頭、岸田総理から、核実験を含め、北朝鮮による更なる挑発行為の可能性も排除されない中、バイデン大統領の訪日・訪韓で確認されたとおり、日米同盟・米韓同盟の抑止力を高めることを含め、日米韓の連携強化は不可欠である旨述べ、三か国の首脳は、北朝鮮への対応に関する日米韓協力を一層推進していくことで一致しました。会談の冒頭で、アメリカのバイデン大統領が「われわれ3か国の協力は朝鮮半島の完全な非核化と自由で開かれたインド太平洋の実現という共通の目標を達成するために不可欠だ。今後もこの形式での対話を行うことを楽しみにしている」と述べているように、この会談を一言でいえば、日米間3ヶ国の安全保障協力を推進していくということかと思います。
2)三か国の首脳は、北朝鮮の核・ミサイル活動について深刻な懸念を共有した上で、北朝鮮の完全な非核化に向けた今後の対応についてすり合わせを行いました。
3)具体的には、地域の抑止力を一層強化する重要性について認識を共有した上で、日米韓の安全保障協力を推進していくことで一致しました。また、国連安保理決議の完全な履行を確保するとともに、国連安保理での対応について引き続き連携していくことで一致しました。さらに、外交の重要性についても認識を共有し、この観点からも日米韓で一層緊密に連携していくことを確認しました。
4)岸田総理から、拉致問題について、バイデン大統領及び尹大統領の引き続きの理解と協力を求め、両首脳から支持を得ました。
ただ、会談時間がわずか20分を3人、更に通訳の時間を考えると一人当たりでは20÷3÷2=3分ほど。こんな時間では、議論など出来る筈もなく、次官らによる実務協議で詰めた内容を確認するのが精一杯だったと思われます。
2.バイデンのノールック握手
6月28日、スペイン国王フェリペ6世がNATO首脳会議に出席した各国首脳を招待する晩餐会を行ったのですけれども、そこでアメリカのバイデン大統領が、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領と「ノールック握手」する映像が韓国で拡散し、話題となっているようです。
尹大統領と夫人はこの日の夜、晩餐会が開かれるスペイン・マドリード王宮に到着。スペイン国王から歓迎を受けました。
ところが、晩餐会直前の各国首脳らが写真撮影を行う際、壇上にやって来たバイデン大統領に対し、尹大統領が握手しようと手を差し伸べると、バイデン大統領は尹大統領の顔を見ることなく「ノールック」で握手。にこやかな表情で握手しようとする尹大統領とは対照的に、バイデン大統領は目を合わせることなく、その視線はブルガリアのルメン・ラデフ大統領に向けられていました。
このシーンが拡散すると、韓国ネットユーザーらは「ノールック握手か」、「表情の差が…」、「アメリカが韓国を軽視している証拠」などと批判コメントが相次ぎました。
バイデン大統領は、尹大統領と今回が初対面という訳ではありません。
5月21日、韓国を訪れたバイデン大統領は尹錫悦大統領とソウルで初の首脳会談を行っています。
会談では、軍事演習拡大のほか必要なら新たな兵器配備を行うことで合意。北朝鮮の脅威に対応するだけではなく、「自由で開かれた」インド太平洋地域の維持と世界的なサプライチェーン(供給網)保全に向け、両国の数十年にわたる同盟関係を発展する必要性を強調しています。
ホワイトハウスは会談後の共同記者会見について、「Remarks by President Biden and President Yoon Suk Yeol of the Republic of Korea in Joint Press Conference」で公開していますけれども、記者から悪化する日韓関係についてアメリカはどういう役割を果たすのかと問われたバイデン大統領は「一般論として議論した(we discussed that in generic terms.)。これから東京に行って、これについても議論することになる」と答えています。
「一般論として議論した」とは、なにやら突き放したような言い方です。これは要するに「日韓の個別具体的な案件についてアメリカは仲介することはない」ということです。この問題は日韓両国で解決しろ、と。
そして、23日に行われた日米首脳会談で、岸田総理は、いわゆる徴用工訴訟や慰安婦問題を抱える韓国について、国家間の合意を無視してきた過去の経緯を挙げながら、日韓の関係改善に前のめりになるバイデン大統領を説得したと報じられています。おそらくバイデン大統領は岸田総理に対しても「一般論」として日韓関係の改善を求めたのでしょう。けれども、岸田総理に反論され、あえなく撃沈したのだと思います。
これが背景にあり、今回、日米韓の首脳会談が行われ、晩餐会での「ノールック握手」があったということです。
通常、晩餐会という超オフィシャルの場で「ノールック握手」なんてありえません。これはアメリカの韓国に対する不満の表れとみるべきだと思います。
おそらく、5月の米韓首脳会談で、バイデン大統領は、日韓関係の改善を尹大統領に強く求めたのではないか。にも関わらず、1ヶ月後の日米韓脳会談で、その「宿題」がまったくされていなかったことに腹を立て、あのような露骨な態度に出たのではないかと思います。
3.韓国の言うことは全部罠
ここまで露骨に不満を表された尹大統領としては、何が何でも日韓関係の改善に乗り出さなければならなくなりました。バイデン大統領が激怒しているとなると、先の米韓首脳会談で合意したとされる北朝鮮への対応レベルをうんと引き下げるか、取り下げる可能性だって考えられるからです。
6月30日、尹大統領は、NATO首脳会議から帰国する飛行機機内での懇談会で、「両国間で過去史の問題が進展しなければ、懸案や未来の問題についても議論できないという考え方は避けなければならない……すべて一緒に議論できる……韓日両国が未来のために協力できるのなら、過去史の問題も十分に解決されるという信頼を持っている」と述べ、日韓関係改善の意欲を示しました。
けれども、この言い方は罠だという識者の指摘があります。
韓国ウォッチャーの鈴置高史氏は、尹錫悦政権が様々な罠で日本を嵌めようとしていると指摘した上で、「尹錫悦大統領本人が提案している一括妥結方式もそうです。要は、韓国が条約違反を是正する代わりに日本は譲歩せよ、というのですから。韓国が言ってくることは全てが罠なのです」と述べています。
鈴置氏のいうように、韓国のいうことは全て罠だと考えて望むべきだと筆者も思いますし、そもそも尹大統領がいう「日韓関係の過去も未来もすべて一つのテーブルに上げて一緒に解決する」という方式はとっくに日韓の間で行われています。
日韓基本条約がそれです。
日韓基本条約は、1965年6月22日に締結した条約ですけれども、そこで両国の外交関係の樹立、過去の韓国併合条約などの失効などを約し、日本は韓国を「朝鮮半島唯一の政権」であると認め、更に日本が無償3億ドル、有償2億ドルの経済援助を行いました。
この条約では、過去の問題として韓国併合条約、未来の問題として、両国の外交関係の樹立、朝鮮半島の政権の問題が挙げられ、そそれらを韓国を「朝鮮半島唯一の政権」であると認め、多額の経済援助を行うことで一緒に解決したのですね。
それを破ったのが韓国の文在寅政権です。
ですから、岸田総理は「日韓関係の過去も未来も一緒に解決した日韓基本条約を一方的に破ったのは韓国だ。現状変更の試みは捨て、現状復帰せよ。それもないまま一括妥結するなどあり得ない」と突き放すべきです。
鈴置高史氏が指摘するように今後、韓国はあの手この手で岸田総理を罠にかけようとすると思いますけれども、微塵も揺らぐことなく、韓国の条約違反を直させることを求め続けるべきだと思いますね。
この記事へのコメント