岸田ショックが現状維持を破壊する

今日はこの話題です。
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1.auの大規模通信障害


7月2日未明、携帯電話のauなどで大規模通信障害が発生しました。

復旧作業は西日本では3日午前11時ごろに終了したとする一方、東日本では午後5時半頃に終え、ネットワークの試験を検証したうえで本格的な再開時間を決めるとしています。

KDDIは、通信障害の原因について、設備障害による音声通話(VoLTE)交換機での輻輳(ふくそう)であることを明らかにしました。

輻輳とは、さまざまな物が1箇所に集中する状態を指す言葉で、通信分野では、インターネット回線や電話回線にアクセスが集中することを輻輳と呼んでいます。インターネット回線や電話回線で輻輳が発生すると、通信速度が低下する、あるいは通信システムそのものがダウンするといった弊害が生じます。

KDDI側は輻輳を軽減するため、流量規制などを実施。そのため、個人・法人ともに、データ通信や音声通話が利用しづらい状況となりました。

これにより、auの回線を利用している事業者のサービスにも影響が出て物流面など暮らしの広い範囲に影響が及びました。

携帯が使えないという状況に状況説明やWi―Fiの電波を求める客がauショップに詰めかけ、東京都心部にあるauショップでは、通常の4~5倍も押し寄せたそうです。

また、別のショップでは午後3時半ごろ、若い男性客が「通信障害はいつ終わるの? 謝って済むレベルじゃねえだろ」と怒りながら店員に詰め寄るなど、かなり混乱が起きたようです。

連日の暑さで電力が逼迫し、節電が呼びかけられていますけれども、携帯が使えないだけでこれだけの騒ぎになるのですから、もしも電力足りなくなって大規模停電になろうものなら、その比ではありません。

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2.千葉火力発電所火災


その電力問題ですけれども、また火力発電所で事故が発生しました。

7月2日正午頃、千葉火力発電所で3号系列第2軸の蒸気タービンの蒸気弁付近より火災が発生。発電会社側はただちに消防に通報するとともに、3号系列第2軸を停止。初期消火活動を行い、消防により13時15分に鎮火しました。

復旧時期は未定で、最大で50万キロワットの発電に影響があるということです。

この千葉火力発電所3号系列第2軸は、2014年に増出力ならびに発電効率を向上させるため、すでに運用されているガスタービン発電設備に、蒸気タービンと排熱回収ボイラなどを追加設置するコンバインドサイクル発電方式へ変更しています。

コンバインド・サイクルとは、ガスタービンを利用する発電機から得た動力と、ガスを燃焼させるときに発生する熱の両方を利用して発電する方式のことです。まず、空気を圧縮してガスと一緒に燃焼させてガスタービンを回し、この回転力で発電機を回して発電します。

そして、ガスを燃焼させたときの熱を利用して水蒸気を作り、その水蒸気で蒸気タービンを回して発電するため、「熱効率」が高くなります。熱効率が高ければ高いほど、少ない燃料で発電設備を動かすことができ、その分燃費も上がります。

最新式のコンバインド・サイクル発電では、熱効率が50%を超え、1950年代の火力発電と比べると2~3倍も高い値となるそうですけれども、実際、千葉火力発電所は3号系列第2軸をコンバインドサイクル発電に代えたことで、新たな発電用燃料を使用せずに出力を33.4万kWから50.0万kWに増出力。熱効率は39.0%から約58%まで約5割向上しています。

更に、燃料の使用量およびCO2排出量を約30%抑制し、最新型の低NOx(窒素酸化物)燃焼器および高性能脱硝装置等、環境にも配慮した発電設備です。勿論、老朽化した設備という訳ではありません。

けれども、これが火災を起こしたとなると、同種のコンバインドサイクル火力発電は大丈夫かという話になりますし、もちろん先日停止した勿来火力発電所9号機などの老朽化などで停止させた火力発電の再稼働にも影響すると思われます。

つまり、電力逼迫はまだまだ続く危険があるということです。

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3.サハリン2の無償譲渡の大統領命令


それ以前に火力発電燃料も安定調達という問題もあります。

6月30日、ロシアのプーチン大統領は、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、ロシアが新設する会社に移管し、現在の事業会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名しました。事実上、ロシア政府が接収するもので、ウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁への報復とみられています。

サハリン2の事業会社サハリンエナジーには、ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムが約50%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%をそれぞれ出資。液化天然ガス(LNG)生産量の約6割が日本向けとなっています。

大統領令は今回の対応を「幾つかの国などによる非友好的行為に関する特別経済措置」としていることから、事業会社が新会社に移管された後、日本企業が事業を継続できるか不透明となりました。

7月1日、これを受けて、木原誠二官房副長官は記者会見で、「一般論として、我が国の資源にかかる権益が損なわれるようなことはあってはならない」と述べ、サハリン2の日本企業の権益の扱いやLNG調達への影響を精査する考えを示しました。

また、岸田総理も同じく1日、プーチン大統領の大統領令署名によって「すぐに液化天然ガス(LNG)が止まるものではない……契約内容がどのようなものを求められることになるのか注視しなければならないし、事業者ともしっかり意思疎通を図って対応を考えていかなければならない」と述べています。

けれども、対露制裁に足を踏み入れた時点でこうなることは分かっていた筈です。それを今頃になって慌てて、影響を精査するとか契約内容を注視するだとか、いままで何をやっていたのですか、こうなることを想像することすらできなかったのですか、と聞きたくなります。

先日岸田総理は原発再稼働を明言しましたけれども、原発再稼働は今日いえば、明日運転再開というものではありません。タイムラグが発生することを考慮すれば、他の調達先の手配をしておくべきなのですし、その備えがあれば、他の調達先を確保していると言えたはずです。けれども、そんな話は全然聞こえてきません。

2月末、サハリン2から早々に撤退を表明したイギリス石油大手シェルは、サハリン2で保有する約27.5%の権益を巡り、インドの石油天然ガス公社(ONGC)や天然ガス供給大手ゲイルと協議に入っているようですけれども、岸田総理が「事業者ともしっかり意思疎通を図って対応を考えていかなければならない」といっている時点で、三井物産や三菱商事に対し、日本政府がそのようなサポートを考えていなかったことは明らかです。


4.岸田ショック


7月1日、総務省が発表した東京都区部の6月の消費者物価指数は、前年同月比2.%上昇の101.6となりました。

エネルギー価格は21.7%と大幅な上昇となり、電気代は22.3%、ガソリンは11.1%上昇。生鮮食品を除く食料も3.1%上がっています。

こうしたエネルギーや原材料価格の上昇に伴う仕入れコストの増加を受け、企業が販売価格に転嫁する動きが広がっています。6月は即席麺などの加工食品や調味料、アイスクリームのほか、一部の外食チェーンで価格が改定。帝国データバンクが約1700社を対象に6月に行った調査によると、約7割の企業が4月以降に値上げを実施、または行う予定だと回答しています。

7月1日未明、iPhoneやiPad、Apple Watch等の公式オンラインストアで、iPhoneシリーズで最も高価なiPhone13 Pro Maxが従来の194800円から4万円値上げされ、234800円で販売されるなど、各機種の大幅な値上げが発表されており、円安の影響だとされていますけれども、あたかも、今の日本の状況を象徴する現象に見えます。

ネットでは「外交、経済、安保、エネルギーなーーんにもできない岸田政権。これで参院勝ったら増税になるよ」とか「経済がまわっている状態での物価上昇ではないから全然いいことない」とか「無為無策、無能の岸田政権、本当にもう辞めてくれ・・・」とか批難轟轟の状況です。

エコノミストは今後もこの傾向が続くと見ているようで、大和総研経済調査部の瀬戸佑基研究員は次のように述べています。
・コアの上昇率拡大は生鮮を除く食料の伸びが大きい。輸入物価の影響はエネルギーに遅れて転嫁され、食料品の値上げの影響が本格化した
。今後も食品中心に値上げが続くだろう。エネルギーは原油価格が一時的に落ち着き、ガソリンも政策影響で伸び率の加速が抑えられている
・輸入物価だけでなく政策を十分見ていくことが重要だ。9月期限の激変緩和措置の延長やGOTOトラベルの先行きに注目
・家計のマインド的には値上げの痛みはあるが、マクロ的に貯蓄は積み上がっており、景気が腰折れするような大幅な消費の減退は見られないだろう。値上げ報道も相次ぎ、注意すべきはマインド面
・現状はコストプッシュインフレという認識は間違っていない。物価を原因に金融政策を変更すると整合性が取れない
ここで、瀬戸研究員は、マインド面に注意すべきと指摘していますけれども、今は、ちょうど参院選という国民に直接語り掛けるチャンスを迎えています。

岸田政権は、この機会を活かして、国民の心をぱっと明るくするようなメッセージ出すとまた違ってくるのですけれども、先日、どこかの幹事長が、減税したら年金3割カットするぞと脅しているようではそれも望み薄です。


5.何もしないが裏目に出るとき


ここにきて、岸田政権に対する支持率が急落しています。

6月25~26日に行われた毎日新聞の世論調査で岸田内閣の支持率は41%と、前月に比べて12ポイント下落。読売新聞の調査でも、同じく57%と前回から7ポイント下落しました。

更にNHKの調査でも1週間で4~5ポイントずつ支持が落ちて、2週前の調査に比べて、9ポイント下落しています。

その理由について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、ガソリン代や電気代、食料品などが急激に値上がりし、消費者の家計を直撃していることや、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、安倍元総理が「アメリカと核共有の議論を始めるべきだ」と提言のをいち早く否定したこと。

更に、防衛費を「5年間でGDP比2%」の目標を掲げる一方で、安倍元総理の強い反対を振り切って、防衛力強化の要となる防衛事務次官を交代させる人事を断行するという姿勢が、国民に「一体、どこまで、やる気があるのか」と疑念を抱かせているのだ、と指摘しています。

長谷川氏は、岸田内閣は国民に「何もしない」本質を見抜かれたのだと述べていますけれども、インターネット放送チャンネルの文化人放送局は、岸田内閣支持率低下の原因を問うネットアンケートを行っています。

その結果(7/3現在)は「何もしないこと」が1位の49.6%、続いて「電力逼迫に節電ポイントの愚策」が34.4%となっています。文化人放送局は、これまで岸田政権の支持率が高い理由として「何もしないことで批判を受けなかったからだ」だったのが、今度は同じ「何もしない」が支持しない理由になっていると笑っていました。

なぜ同じ「何もしない」が支持になったり、不支持になったりするのかというと、「現状維持」できるかどうかに繋がるからです。

6月8日のエントリー「暗雲垂れこめる資産所得倍増プラン」で筆者は、岸田政権の支持率が高い理由について「岸田支持ではなく現状維持を支持しているからだ」と述べました。

これまで、岸田政権は、何もしなくても現状維持できていたので支持されていたのですけれども、今や、何かしなくては現状維持できない状況に追いやられています。外部環境がそれだけ変わった。

にも関わらず、岸田政権は何もしない、あるいは何も出来ないと、国民から見做されてしまっているが故に、今度は「何もしないこと」が不支持の理由になってしまった。そう思います。

長谷川氏は「いったん歯車が逆回転し始めると、元に戻すのは難しい。何もしないで、マスコミや国民の目を欺いてきただけなので、人気回復に何かをしようとしても、抜本的対策は出てこないからだ」と述べていますけれども、岸田総理が誰の目にも「現状維持」できると思わせるような強いメッセージを出すことができなければ、参院選当日まで内閣支持率が回復することはないのではないかと思いますね。




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