

1.凶弾に斃れた安倍元総理
安倍晋三元総理が奈良市で演説中に暗殺された衝撃の事件から一夜明けた9日、銃撃現場となった近鉄大和西大寺駅北口には、早朝から献花に訪れる人が相次ぎました。
安倍元総理が倒れた現場付近にあった献花場所は、深夜に歩道部分へ台を設けて移設。始発とともに花を持って訪れる人が後を絶たず、献花台が花でいっぱいになるたび、スタッフが段ボール箱に移し替えたが、その数は午前10時前で20箱を越えたそうです。
安倍元総理の死去には世界各国の首脳から次々と弔意が寄せられ、国連でも8日に行われた安保理会合の冒頭、今月の議長を務めるブラジルのコスタ国連大使は「不条理な暗殺に悲しみ、衝撃を受けている」と述べ、遺族や日本国民、日本政府に哀悼の意を表しました。その後、コスタ国連大使の呼びかけで、安保理理事国15ヶ国の代表ら全員が起立し黙祷が捧げられました。
安倍総理の死去が与えた世界に与えた衝撃は物凄いものがあります。
第2次安倍政権で内閣官房参与を務めた京都大の藤井聡教授は、「日本を取り戻すと言われ、戦後リジームからの脱却という、政治における最も難しい課題に取り組む希有な政治家。10年以上お仕事をご一緒した……まさに昨日の午前中もお電話を差し上げて、選挙後にどういう展開が必要かも話した……長期的にとらえながらも今日何をするかを考えてくださる唯一の政治家だと僕は思っています……とてつもない喪失感を深く感じています」と肩を落としました。
また、嘉悦大の高橋洋一教授は「びっくりしました。怒りもありましたけど、脱力感がすごく強かった」と力なく語りました、
更に、安倍元総理の大学生時代を知り、父の安倍晋太郎氏の番記者を務めた国政専門家の泉宏氏は、「毀誉褒貶ありますが、インドのモディ首相は国で喪に服すと言っている。そういうことを言われるような外交をやった人はいない……戦後の政治家では吉田茂、田中角栄、そして安倍晋三さん。その中でも安倍さんんの業績は、批判もしてきましたが、ピカイチだと思います」と述べています。
2.SNSが作り出した闇
今回の事件について、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「与党の人が『野党の言うことは一切聞きません』と演説で言ってしまうのが現実の政治だ。そうすると『じゃあ少数派の人って何を言ったって聞かれないじゃん』と。それを政治家が言っても、悪いことを言ったふうになっていない。だから『少数派や弱者はどれだけ声をあげても聞かないよ』と政権中枢の人が言っているわけで『言論じゃ変えられないよね』と考えてくる人が一部出てくるのは当然だ……そうなってしまうと社会に対して希望が持てない。日本では生きるのがつらくなって、年間に自殺する人が2万人ぐらいいる。その2万人の中から社会に対して『一発やり返してから死のう』『死刑とか刑罰って怖くないよね』という人が出てきちゃう。それが最近起きているテロ的な事件なのかなと思う……だいたいそういう思想に染まる人ってまず友達が少ない……社会の人とのつながりをなるべく、赤の他人でもつながりを持つようにする、金を配って食えない状態をなくすことが、事件を減らす上では早いんじゃないかなと思う」と弱者が希望を持てない社会になっていることが遠因だと述べています。
また、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏は「SNSの影響とかで安倍さんを悪者扱いしているようなですね。SNSあるいはマスコミでの扇動。こういったものをを煽ってる人達、まぁいわゆるアベガーって、言われる人たちですけれども、僕はその人たちの影響が非常に大きかったんじゃないかなという風に。まあもちろん断定はできないですけれども、私はそういうふうに予測しております。雰囲気すごく悪くなってくると思うんですけれども、これもSNSが作り出した闇なのかな」と述べています。
3.「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である
この"アベガー"が原因になっているという見方は他の識者もしていて、評論家の八幡和郎氏は「安倍狙撃事件の犯人は反アベ無罪を煽った空気だ」というアゴラに掲載された記事で次のように述べています。
安倍元首相狙撃事件の犯人がいかなる人物かは、あまり重要でない。そもそも、テロに甘い日本の社会風土が糾弾されるべきであるが、安倍晋三氏については、特定のマスコミや「有識者」といわれる人々が、テロ教唆と言われても仕方ないような言動、報道を繰り返し、暗殺されても仕方ないという空気をつくりだしたことが事件を引き起こしたのであって、犯人が左派でも右派でも個人的な恨みをもった人であろうが、精神に障害を抱えた人であってもそれが許されると思わせた人たちが責められるべきである。このように、八幡氏は安倍元総理暗殺を引き起こしたのは「暗殺されても仕方ないという"空気"をつくりだしたこと」だと述べています。
その意味で、犯人像がわかるまで政治的議論をすべきでないというのは間違っている。
「安倍をたたき切れ」といったのもいた。国会で狂ったように憎悪を煽った議員もいた。ヒトラーにいわれなくたとえた市民運動家と称する人もいた。暗殺教唆をした覚えのある人々はどう償うのか?
モリカケサクラなど過去の政治家とスキャンダルと桁がいくつも違うし、私服を肥やしたわけでない些事で執拗に憎悪を煽られた。
今回の参議院選挙でも血塗られた言動をした何人かを当選させたら日本の恥だ(与党、野党という問題でなく個人の言動が厳しく洗われるべきだ)。
ウクライナ紛争からみでも、プーチン大統領の暗殺を願うような論説を、立派な肩書きを持った人たちが平気でしているが、それらの言動もテロに対する感覚をマヒさせたといえる。
また、私のFacebook「奈良県警の警備体制に北海道警の選挙妨害排除を違法とした地裁判決が影響している可能性は極めて高いと思います」と言うコメントをいただいた方あり。
日本の癌の一つは司法である。司法で、個別事件における独立性は大事だが、検察幹部人事はどこの国でも行政の権限だし、最高裁裁判官任命も政治を通じた国民の意思によって行われるのが民主主義なのに日本ではそれがないから唯我独尊になる。
”空気”といえば、山本七平の「空気の研究」を想起する人もいるかもしれません。
山本七平は「感情移入を絶対化して、それを感情移入だと考えない状態」に陥ることで「空気」の支配が起きると主張しましたけれども、八幡氏がいう「暗殺されても仕方ないという"空気"」によって安倍元総理が命を落としたのだとすれば、日本人は当時から何も変わっていないことになります。
もっとも、山本七平はその「空気」とて、事実や状況を提示するという「水を差す」行為によって一瞬で崩壊するとも述べています。
確かにマスコミは、「アベガー」を執拗に繰り返し、そういう「空気」作ろうと躍起でした。朝日などは今だに「森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡」などという見出し記事を出している程です。
勿論、それに対し、ネットの一部は反論し、「水を差す」行為が行われていましたけれども、それによって「崩壊」した"空気"は多数派を形成するまでにはまだまだいかなかったのかもしれません。
4.安倍ロスにより円高に向かう
8日午前11時43分にネットニュースで「【速報】安倍元総理が銃撃され心肺停止 発砲は背後から散弾銃2発『左胸や首に命中』ドクターヘリで病院へ搬送」の記事が公開されると、為替相場は一転して円高に振れ。わずか17分で前日午後5時時点よりも57銭円高ドル安の1ドル=135円54~56銭に振れました。
安倍元総理は今回の参院選の応援演説で各地を回り「金利を上げると悪夢のような時代に戻ってしまう」と政策金利の引き上げに猛反発。次期日本銀行総裁人事についても言及するなど、利上げを強く牽制してきました。安倍元総理は自民党最大派閥を率いていたこともあり、安倍元総理の意向は、利上げのネックと見られていました。
その安倍元総理の影響力がなくなれば政府と日銀は利上げに舵を切るとの見方から、今回の円高の誘因になったとの声が出ています。
双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏も、参議院選挙後、次に自民党内で生じるのは積極財政を求める若手グループと、財政規律を重視するベテラン勢の対立があり、前者を束ねていたのが安倍元総理であったことから、今回の事件で党内バランスは大きく変わることになると指摘。
参議院選挙後の経済政策は、財政規律重視とアベノミクスの見直しということになっていくとし、為替相場は、明らかに円高方向となるだろうと述べています。
同じ見方はホリエモンこと実業家の堀江貴文氏も指摘しており、どうやら、安倍ロスにより金融政策が利上げに触れるとの見方が強いようです。
5.岸田の春は来るか
岸田総理が次の内閣をどう組閣するか分かりませんけれども、参院選を大勝して国政選挙二連勝。党内最大派閥の領袖であった安倍元総理もいなくなったとなれば、岸田総理はかなり自由な組閣をできる可能性も出てきます。我が世の春ならぬ、岸田の春といったところでしょうか。
ただ、これから本当に「春」がやってくるのかというと、それは分かりません。
というのは、内政も外交も、そして党内も不安定になる一方であるからです。
内政はエネルギー問題に物価高。外交は安全保障。これらを岸田内閣で乗り切っていけるのか。
今回の参院選では、岸田総理に不満を持つ自民の岩盤支持層が離れて一部が参政党に流れたとも囁かれていますけれども、政治ジャーナリスト・石橋文登氏は「はたして今後、岸田総理は安倍元総理がいない中、選挙ができるのか。逆に言うと、自民党支持層の一番コアな保守層、安倍元総理の岩盤支持層は3割くらいいる。彼らをどうやって押さえるのか。慰安婦問題、日韓合意、日露交渉をどうするのか。安倍元総理だから抑えられていた層だったのが、彼がいなくなって非常に自民党が不安定になるのでは。岸田総理も制御できないし、党自体も制御ができない時代が来てしまうのではないか」と指摘しています。
確かに、安倍元総理が凶弾に斃れた今、党内最大派閥である安倍派がどうなるかは注目されるところです。
今回の自民の大勝も、安倍元総理の弔い合戦的な票の力があったとすれば、それを無視すればそれなりの反動がくると思います。つまり、岸田総理が組閣するにしても安倍派のみならず、党内保守派への配慮がなければ、自民党への支持が更に離れてしまう可能性があるということです。
6.追う者から追われる者へ
更に、今回安倍元総理が亡くなったことで、岸田総理自身にも心境の変化があるかもしれません。
というのは、岸田総理にとって、常に自分の前を歩いていた安倍元総理が居なくなったからです。自分の目標であり、ライバルであった存在が突然いなくなった。
つまり岸田総理は、「追う者から追われる者へ」と立場が変わったということです。今までは自分の前にいる存在があったから、「その反対」をしてみせることで自分の存在をアピールすると同時に心の安定も得ていたのではないかと思うのですね。
2009年3月、当時総理だった麻生副総裁は、高知大など地元3大学が主催した学生との意見交換会で「心が折れそうになったことはありますか」と問われ「首相の条件は何ですかとよく聞かれる。先見性とか外交とか統率力があるとかいろいろある……知事にしても会社の社長にしてもみんな共通で、仕事をやる。これは絶対に孤独」と答え「どす黒いまでの孤独に耐えきれるだけの体力、精神力がいる」と述べています。
安倍元総理を失った岸田総理は、今後真の意味で総理の重圧を感じてくるのではないかと思うのですね。全ての最終責任は総理の肩に掛かってくる。誰も助けてくれない。どす黒いまでの孤独。
もしかしたら、岸田総理の「顔つき」も変わってくるかもしれませんし、希望的観測ですけれども、保守として「覚醒」することすらあるかもしれません。
はい、そして、岸田さん、目つきが変わりましたよ。 ウクライナ侵攻、GW外交後、明らかに変化し、安倍総理の死でさらに RT @Mas40825684: @daitojimari @mattari_mypace 岸田とハサミは使いよう!ですね。
— 渡邉哲也 (@daitojimari) July 11, 2022
7.できない理由を考えるのではなく
安倍元総理が凶弾に斃れてから、筆者は一体どういう意味があったのだろうとずっと考えていました。天意は国民に何を示したかったのだろう、と。
その末に、筆者が出した答えは「人任せにするな。自分で考え、自分のできることをせよ」です。
いままで、悪夢の民主党政権だろうが、「何もしない」岸田政権だろうが、保守の人達の心の中に「安倍さんが居るからなんとかなるだろう」という安心感見たいなものがあったのではないかと思うのですね。どこか、安倍任せ、人任せにしていた気持ちがあったのではないか。
安倍元総理が亡くなったこれからも、反日マスコミやら特亜三国やら、様々な情報戦、認知戦を仕掛けてくるでしょう。既にマスコミは、十数年も前にたった3年しか任官していなかった犯人を、元海自自衛官といい、自衛隊が彼に対し銃の作り方と狙撃の仕方を教えたなどと報じています。実際は、教育隊で2週間ほどライフル銃の分解と結合の仕方を学び、3年間で3日間だけ銃を撃った程度の経験しか得られないのですね。それをあたかも自衛隊が自作で銃を作れるかのように報じている。
そのようなマスコミ等が作っていく「空気」をそのままにして飲まれていくことは止めよ、そうした空気には、山本七平のいうところの「水を差して」、個人個人で打ち破っていけ、自分の頭で考え行動せよ、ということを教えているのではないかという気がしてなりません。
安倍元総理の最期の言葉は「できない理由を考えるのではなく」だったそうです。出来ない理由を考えるのではなく、まず自分の手の届く範囲で、出来ることをやっていく。
けれども、それは何も大々的に政治活動やら何やらを行う必要なんて少しもありません。
情報操作、印象操作に騙されない。自分で考え、行動する。そのように国民の大多数がなることが、安倍元総理への手向けになるのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
橘
これから反日自称リベラルがあれこれ仕掛けてくるでしょうが、そういったものとは別にバカ丸出しの妄想陰謀論にかぶれた連中も少なからずいます。(アメブロガー吉野奏美など)
少しでも読めば分かりますが、(時間の無駄ですが)日本人の劣化が著しいと感じます。