ジョンソン首相辞任

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2022-07-12 073002.jpg


1.新たなリーダー必要


7月7日、イギリスのジョンソン首相は、ロンドンで記者会見を行い、辞任すると表明しました。

ジョンソン首相は、「議会の保守党が、新しい党首が必要だと考えている、その意思が明らかになったため、新党首を選ぶプロセスは直ちに開始する必要がある……2019年の総選挙で保守党に投票してくれた皆さんに、感謝したい」と述べ、新党首と新首相が決まるまでは「自分が仕える」と首相に留まる方針を示しました。

ジョンソン首相の辞任声明のポイントは次の通りです。
・新しい首相が誕生することは「今や明らかに議会党の意志」である。
・新首相選出のタイムテーブルは来週発表される予定だ
・有権者の付託を直接実現したいとの思いから、この決断を長く待っていた。約束したことを実行することが自分の義務であり、責務であると感じている
・ブレグジットを成功させ、イギリスをパンデミックから救い、プーチンのウクライナ侵攻に西欧を率いて立ち向かったことなど、自分の功績を非常に誇りに思う。
・イギリスは「レベルアップし続ける」必要がある。そうすることで欧州で最も繁栄した国になる。
・我々がこのような責務を負ったときに政権を変えるのは「おかしい」と同僚を説得しようとしたが、うまくいかなかった。
・ウェストミンスターでは群れ本能が強く、群れが動けば動く。
・世界最高の仕事を手放すことがどれほど悲しいことかを国民に伝えたかったが、仕方ない。
・妻のキャリー、子供たち、NHS、軍隊、そしてダウニング街のスタッフに感謝する



2.辞任ラッシュ


ジョンソン首相が辞任することになったのは、政権や党幹部の不祥事が続き、求心力が一気に低下したことが原因とされています。

ジョンソン首相は、武漢ウイルスの感染対策で厳しい規制が続いていた中、首相官邸などでパーティーが繰り返された問題で大きな批判を浴びていました。今年1月には、一昨年5月に首相官邸で開かれたパーティーに参加していたことを認め謝罪しています。

6月6日に行われたジョンソン首相に対する信任投票では、信任が211票、不信任が148票で、ジョンソン首相の続投が確定したものの、6月23日に行われた、ウェイクフィールド、ティバートン・アンド・ホニトンの2選挙区での補欠選挙で、二つとも保守党は惨敗しています。

それでも、ジョンソン首相は続投を表明していたのですけれども、先週になってみずからが任命した与党・保守党の幹部が性的なスキャンダルで辞任したことをめぐり、対応が不誠実だと党内からも一気に批判が強まり、複数の閣僚を含むおよそ50人の政府高官が辞任を表明するという異例の事態となっていました。

信任投票を切り抜けたジョンソン首相は、党規則により、少なくとも向こう1年間は再度信任投票は行われないとされていたのですけれども、与党内では規定を変更し、信任投票再実施を目指す動きも出ていました。

こうしたことから、ジョンソン首相は側近を含む閣僚などから直接辞任を迫られていたのですけれども、7日朝には、数日前に任命したばかりの閣僚が辞任を表明したのに加え、任命したばかりの財務相からも辞任を求める書簡を公表される事態となっていました。

つまり、このままジョンソン首相が職を続けたいと思っても、ついてくる人は僅かであり、辞任を選ぶしか道は残されていなかったという見方が有力のようです。


3.彼はいつだってその座にふさわしくなかった


ジョンソン首相の辞任表明に対し、イギリスの最大野党、労働党のスターマー党首は、7日、自身のツイッターに声明を投稿し「辞任は、国にとって良いニュースだ……彼はいつだってその座にふさわしくなかった。数々の嘘やスキャンダルなどの責任を負っている」として、もっと早い段階で辞任を表明すべきだったと厳しく批判しました。

実際、イギリス世論は、辞任は当然の結果だという受け止めをしているようで、武漢ウイルス規制で誰も我慢を強いられる中でパーティーをしていたことへの怒りや、続出するスキャンダルによって、国民の間には、またか、というという呆れにも似た思いも広がっていたと伝えられています。

海外では、ウクライナのポドリャク大統領府顧問が7日、「ミサイル攻撃の最中にもかかわらず最初にキーウに来てくれた。常に最前線でウクライナを支援してくれたことに感謝する」とツイートし、これまでの対応に謝意を示しました。

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は同じく7日、記者団に対し「注視はしているが、イギリスの政治危機はわれわれの優先事案ではない……ジョンソン首相は我々のことが全く好きではないようだ。われわれも同様だ……いつかは対話を通じた問題の解決を理解できるプロフェッショナルな人々がイギリスで政権を担うことを期待しているが、今のところそれはありそうにない」と、イギリスとの関係に悲観的な見通しを示しています。

日本はというと、外務省幹部は「報道に接し驚いている。ジョンソン首相と日本との間ではこれまで首脳間の会談などを重ね、信頼関係を構築してきただけに残念だ。ただ保守党による政権が変わるわけではなく、誰が次のリーダーになっても日英両国の関係は変わらない。安全保障協力などにも影響はないだろう」と様子見の構えのようです。


4.揺らぐ欧州


これまで、ジョンソン首相は積極的にウクライナを支援してきました。プーチン大統領を批判し、ロシアに対して強硬な姿勢を示す一方で、ウクライナの首都キエフを訪問するなど存在感を示し、ウクライナにもっとも理解ある指導者の1人だとも評価されてきました。

プーチン大統領に対する厳しい姿勢はヨーロッパのなかでは際立っており、先月開かれたG7やNATOの首脳会議でも、ウクライナを軍事的にも積極的に支援する姿勢を示していました。

それがここにきての辞任。ロシアへの圧力で結束を目指してきたヨーロッパで、ロシアにとりわけ厳しい姿勢を示してきたジョンソン首相が抜ける影響は軽くない筈です。

もちろん、次のイギリス首相がジョンソン首相と同じく対露強硬派である可能性もありますけれども、それだけで片付く状況ではなくなってきています。

7月7日のエントリー「北欧2国のNATO加盟と揺れる欧州」でも触れましたけれども、これまで対露制裁を主導してきたフランス、ドイツ、イタリアなど他の欧州各国の政権もその足元が揺らいでいる状態です。

今後の状況がどう展開していくのか。要警戒だと思います。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック