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1.原発再稼働指示
7月14日、岸田総理は総理官邸で記者会見を行い、冬の電力の安定確保のため、最大9基の原発稼働を進めるよう経済産業相に指示したと述べました。
記者会見での件の部分の発言を抜粋すると次の通りです。
第2に、国民生活に大きな影響があるエネルギー対策と物価高対策です。ちなみにガスについては次のようなやり取りをしています。
まず、エネルギーの安定供給確保です。この夏の電力供給については、政府からの要請も踏まえ、関係の皆さんの御努力により、全国で10以上の火力発電所の運転が次々と再開し、電力の安定供給を確保する見通しが立ちました。
熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら乗り越えていただきたいと思います。
しかしながら、この冬については再度需給逼迫が起こることが懸念されています。何としてもそうした事態を防いでいかなければなりません。私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示をいたしました。
これらが実現されれば、過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できます。政府の責任においてあらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組みます。
そして、記者質問で原発再稼働について問われ、次のように答えています。
(記者)
時事通信の石垣です。
先ほど原発の再稼働のところで、冬に最大9基の原発を動かしたいということでしたけれども、原発をめぐっては、まだ国民の世論が割れている状況にあると思います。核のごみの最終処分場をどうするかという問題もあります。そういう中で、総理は、原発の再稼働について国民に対してどういうふうに理解を求めるお考えでしょうか。よろしくお願いします。
(岸田総理)
まず、我が国のエネルギーということを考えた場合に、資源が乏しい我が国において、単一で完璧なエネルギー源はないというのが、まず基本的な我が国の置かれている状況であると思っています。その中で、安価で安定的な、かつ脱炭素に対応していく、こうしたエネルギーをということを考えますと、結論として、多様なエネルギー源をバランスよくミックスさせていくしかないと考えています。
そして、その中において、御指摘の原発、原子力ということですが、原子力発電に対する基本的な考え方は、これはもう従来どおり安全性を大前提にしていく、これは変わることはありません。その上で、地元の皆さんの意見も聴きながら再稼働を進めていく、最大限の活用を図っていく、こうした方針、これからも維持していきたいと思っています。
先ほど原子力発電所については、この冬、最大で9基を稼働させるよう取り組んでいくというふうに申し上げましたが、これも安全性を大前提として進めていくということであり、だからして最大というふうに申し上げたところであります。是非、こうした取組を進めることによって、日本全体の電力消費量の少なくとも約1割に相当する量、これを確保していきたいと思っています。そして、そうした再稼働が円滑に進むよう、原子力規制委員会においては審査効率化の取組を着実に実施していくと承知していますし、また、国も前面に立って、立地自治体など関係者の理解と協力が得られるよう粘り強く取り組んでいく、こうしたことも大事だと思っています。
以上です。
(記者)
毎日新聞の高橋です。
先ほど総理の方から電力のお話があったと思うのですが、ガスの安定供給についてもお伺いしたいと思います。
先月、ロシアのプーチン大統領がサハリン2の資産などを新たな運営会社に引き継ぐ大統領令に署名しましたが、日本の権益維持に向けた取組の現状と国内のガスの安定供給策、節ガスは難しいという国民の声もありますけれども、国民の生活への影響について伺いたいと思います。
(岸田総理)
まず、ロシアの対応については、予断を許さないと考えています。そして、日本としては、世界の自由と平和、秩序を守るために、ロシアの脅かしには屈せず、毅然(きぜん)と対応する。こうした基本方針は譲れないと考えています。
その上で、サハリン2について申し上げるならば、サハリン2は日本の電力やガスの安定供給の観点からも、これは重要なプロジェクトです。今回の大統領令によって、サハリン2からのLNG(液化天然ガス)輸入が直ちに止まるわけではないと考えますが、引き続き日本の企業の権益を守り、LNGの安定供給が確保できるよう官民で一体となって対応したいと思っています。
また、万が一の事態に備えて、既に電力、ガス会社が2週間から3週間程度のLNG在庫を有していますが、事業者間の融通の促進など、更なる対応も検討してまいります。
なお、現在、都市ガスの需給は逼迫しておらず、国民の皆様に節ガス等をお願いする状況にはありませんが、万一の状況に備え、必要なあらゆる対応、これを政府としても検討していきたいと考えております。
2.計画通りの再稼働
もともと、原発再稼働の声はいろんなところから上がってはいました。
7月11日、経団連の十倉雅和会長は記者会見で、「原発の再稼働を急ぐべきだ……黄金の3年間。思い切ったことができる」と述べた上で、国内の電力需給が一時逼迫するなど不安定な状況が続いている点を踏まえ、「国民に科学的、論理的、客観的な議論をしてもらいたい」と、参院選で自民党が大勝したことを受け、岸田政権にエネルギー安全保障の観点から原発活用を加速するよう要望しました。
14日の記者会見で岸田総理が今冬に最大9基の原発再稼働などとその時期まで明言したのは、あるいは経団連への回答だったのかもしれません。
今回、岸田総理は「再稼働を指示した」といかにもリーダーシップを発揮したかのような発言をしていますけれども、この最大9基というのは、もともと計画されていたものであり、指示したなどど大威張りしていう類のものではありません。
こちらのサイトに原発の稼働状況が公開されていますけれども、2022年7月14日9時現在で運転中(発電中):6基 停止中:27基となっています。
運転中の6基は調整運転も含め次の通りです。
関西電力一方、停止中の原発は27基あり、その殆どが2012年以前、つまり東日本大震災前後に停止になったものばかりです。それでもいくつかの原発は2021年ないし2022年と最近定期点検で停止となっているものがあります。それは次の4基です。
大飯3号 1,180MW PWR 営業運転中(2021.07.30〜)(福井県)
大飯4号 1,180MW PWR 調整運転中(2022.07.17〜2022.08中旬予定)(福井県)
四国電力
伊方3号 890MW PWR 営業運転中(2022.01.24〜)(愛媛県)
九州電力
玄海4号 1,180MW PWR 調整運転中(2022.07.10〜)(佐賀県)
川内1号 890MW PWR 営業運転中(2022.01.17〜)(鹿児島県)
川内2号 890MW PWR 営業運転中(2022.07.11〜)(鹿児島県)
関西電力このうち、高浜3号は来年の予定ですし、玄海3号は6/22現在「燃料取出・検査」のフェーズで、冬に間に合うかは微妙な状況です。従って、今年の冬に再稼働が見込めそうなのは美浜3号機と高浜4号機くらいであとは年越しの公算大です。
美浜3号 826MW PWR 第26回定検停止中(2021.10.23〜2022.09上旬予定)(福井県)
高浜3号 870MW PWR 第25回定検停止中(2022.03.01〜2023.06.03予定)(福井県)
高浜4号 870MW PWR 第24回定検停止中(2022.06.08〜2022.11上旬予定)(福井県)
九州電力
玄海3号 1,180MW PWR 第16回定検停止中(2022.01.21〜)(佐賀県)
それでも、現在運転中の6基と冬までに再稼働できそうな2基を足すと8基になりますし、玄海3号が間に合えば9基になります。
従って、岸田総理の「最大9基」というのは、計画通りというか、確度の高い発言だということです。
ですから、冬までに9基再稼働というのは最低限レベルであって、本命は10年以上も停止中のまま、ほったらかしにされている23基の方だと思います。
ですから、筆者としては、そちらの方の再稼働計画とその見込み、そしてなぜ10年も停止したままになっているのかを記者や野党の方々に追及していただきたいと思いますね。
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