安倍の影から抜け出さないことが韓国を遠ざける

今日はこの話題です。
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1.日韓外相会談


7月18日、林芳正外相は、韓国の朴振外相と東京都内の外務省飯倉公館で、夕食会を含めて約2時間半会談しました。

外務省によると、その内容はおおよそ次の通りです。
日韓外相会談及びワーキングディナー

・朴長官から、今般の安倍元内閣総理大臣の逝去に関し、衷心よりの弔意が伝えられました。これに対し、林外務大臣から、朴長官の弔意に謝意を述べました。

・両外相は、現下の戦略環境に鑑み、日韓・日韓米協力の進展が今以上に重要な時はないとの認識で一致しました。また、ロシアによるウクライナ侵略に対する非難で一致しました。

・両外相は、北朝鮮への対応における更なる連携を確認しました。また、朴長官から拉致問題について改めて支持を得ました。

・林外務大臣から、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を発展させていく必要があり、そのためには旧朝鮮半島出身労働者問題を始めとする日韓間の懸案の解決が必要である旨述べました。

・朴長官から、現金化が行われる前に、望ましい解決策が出るよう努力する旨述べました。その上で、両外相は、この問題の早期解決で一致しました。

・両外相は、両国間の協議を加速させることで一致しました。また、両外相は、両国間の人的交流の再活性化を進めていくことでも一致しました。
今回の会談について、韓国SBSは次のように報じています。
・韓国外交部は、朴長官が強制動員問題と関連して4日に発足した民官協議体議論案を日本側に説明しながら、韓国内の日本企業資産の現金化が行われる前に望ましい解決策が出るように努力すると述べたと明らかにした。

・外交部は、会談の結果、韓日両側がこの問題の早期解決が必要だという認識を共にしたと説明した。

・ほかにもジーソミア運用正常化と輸出規制緩和問題、両国国民のビザ免除事案も議論された。
これについて、韓国の著作家、ブロガーのシンシアリー氏は「今回も、なんだかんだ言ってるけど、結局は11月のG20またはその前の首脳会談をセッティングするための訪日でしかありません。それが出来るか、または相応の進展を成し遂げられるかどうかで、成否が分かれるところでしょう。そのために、朴外交部長官は、例の『民官協議体』の2回の会議結果と、北朝鮮など安保関連問題、例えばジ-ソミアなどで積極的な協力姿勢を示すことで、日本を説得しようとするはずです」と指摘していますけれども、日本の外務省の発表を見る限り、懸案の解決が必要だというだけで、何か具体的な合意があったようには見えません。

その意味では、少なくとも、成功したとはいえないのではないかと思います。


2.これまで以上に慎重に進めなければならない


韓国側は今回の訪日で岸田総理への表敬訪問を強く希望していたそうなのですけれども、18日の段階でも事務方での合意に至らず、官邸の判断に委ねられていたそうです。

ところが、最終的に、官邸は表敬を受ける判断を下し、19日の午後2時15分から約20分間、岸田総理が朴振(パク・チン)韓国外交部長官による表敬を受けることになりました。

表敬について外務省のサイトでは、「朴長官から、今般の安倍元内閣総理大臣の逝去に関し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領からの衷心よりの弔意が伝えられました。これに対し、岸田総理大臣から、尹大統領からの弔意に謝意を述べました」とだけさらりと書かれています。

表敬で20分、通訳を考慮して半分の10分としても、弔意を述べるだけでは10分は間が持ちません。おそらくその他の話、要望が韓国側から伝えられたと思いますけれども、それについて全然触れられていないところを見る限り、言質が取らせなかったのではないかと思われます。

韓国に対して岸田政権が慎重でいるのは、これまで散々韓国が日本を騙してきたことは勿論のこと、先日の安倍総理の死去も無関係ではないとする見方もあります。

政府関係者は「安倍氏が不在となった今、韓国に甘い態度を取れば保守層から一層批判を受ける。これまで以上に慎重に進めなければならない」と語っているそうです。

6月22日のエントリー「日本の尊厳と国益を護る会の提言と岸田総理の答え」で、岸田総理は意外と韓国に厳しい見方をしていることを取り上げましたけれども、表敬を受けた上で韓国の要求を突っぱねたとするのなら、一応は、その対韓姿勢は崩してないと期待したいところです。


3.安倍談話の威力


もっとも、岸田総理が厳しい対韓姿勢を持っていたとしても、安倍総理の死去は、それ以上に韓国を期待させている向きもあります。

7月11日、韓国の中央日報は「韓日関係、「安倍氏の影から抜け出す」にはこの3年がゴールデンタイム」という記事を掲載しています。

その概略は次の通りです。
・これまで日本国内の保守右翼志向を代弁し、韓国に強硬な声を上げてきた自民党内「安倍派の影」が参議院選挙以降強まり、尹政府の関係改善構想が短期的には推進力を得ることができないかもしれないとの懸念が出ている。

・反面、相対的に韓日関係改善に積極的な岸田文雄首相が安倍氏の陰から抜け出して自分のカラーを打ち出す力を強化する場合、中長期的に韓日関係に青信号が灯るだろうという期待も少なくない。

・韓日関係の改善が短期的に難しいだろうという展望は「派閥政治」に規定される日本の政治地形に起因する。単純に見れば自民党内安倍派が力を失えば、安倍氏の陰から抜け出した岸田首相の今後の国政運営動力がそれだけ強くなりそうだが、状況はそんなに簡単ではない。

・これまで岸田首相と安倍氏の間には適切なバランスがあった。政策やスタイルには温度差があるものの、お互いを一定部分配慮して牽制(けんせい)する関係だった。安倍派内タカ派の声は、それでも安倍氏が強弱を調節しながらメッセージを出していた。

・今後安倍派の他の重鎮が想定外の言動に出て「どちらが強いか」の競争を繰り広げることになれば、岸田首相の立場でも統制するのが難しい状況になりうる。

・世宗(セジョン)研究所日本研究センターの陳昌洙(チン・チャンス)センター長は「岸田首相が直ちに韓日関係改善に主導的に出るのは難しい」としながら「一歩間違えれば『安倍氏がいなくなったことに乗じて、韓国との関係改善で利益を得ようとする』という批判が出てきかねないため、当面は安倍氏の政策を批判したり覆したりするような決定はしないだろう」と述べた。

・安倍氏死去以降、自民党特有の保守右翼的色彩が深まり、これに伴って韓国に敵対的な雰囲気が弱まらない場合もあるという懸念も出ている。さしあたって、平和憲法を改正して自衛隊(日本軍隊)の保有を明文化する改憲作業に弾みがつくかもしれない。安倍氏自ら「ライフワーク」と明らかにしていたことから彼の遺志を尊ぶ意味もある。

・峨山(アサン)政策研究院のチェ・ウンミ研究委員は「今回の襲撃事件は日本で治安に対する国民的な懸念とともに軍事力と安保強化の要求につながる場合がある」とし「結局『自分のことは自分で守る力が必要』と強調してきた日本極右勢力の声が大きくなる契機になるかもしれない」」と述べた。

・今すぐは難しいが、岸田首相の自民党内のリーダーシップが次第に強化される場合には状況が変わる可能性もある。

・今回の参議院選挙後、日本は2025年まで大型選挙がない。岸田首相がこの「3年の黄金期」に主導権を握り、対外政策を展開することに活用することができる。

・岸田派の内情に精通しているある要人は「岸田首相は韓国か日本での首脳会談の早期開催には今も慎重だ」とし「9月末にニューヨークで開かれる予定の国連総会のようなところで初めての単独会談をするのも一つの方法」と話した。
岸田総理なら関係改善できると期待すると同時にそう簡単にはいかないのでは、と警戒もするというなんとも微妙な文章です。

これについて、韓国ウォッチャーの鈴置高史氏は「「自民党の宏池会は言うことを聞いてくれる」というのが中国と韓国での定説です。実際、佐渡金山の問題で韓国は岸田政権を騙すことに成功しかけました。……「推薦(登録申請)に動いたら“拒否権”を発動する」と韓国に脅された日本の外務省はそのままメディアにリーク……新聞に書かせ「登録断念」の空気を作りました」と指摘した上で「外務省の陰謀を見てとった安倍元首相が岸田首相を説得、日本は一転して登録申請に踏み切ったのです。そもそも、韓国に拒否権などありません。登録申請に動く日本を見て韓国政府は大慌てしました」と述べています。

鈴置氏は岸田総理が外相時代もしばしば韓国に騙されたことを取り上げ、安倍元総理がいなくなった今、「しめた!」と韓国の外交専門家は小躍りしたそうなのですけれども、その直後に岸田総理が改憲に意欲をみせたことで韓国人はショックを受けたと指摘しています。

そこで韓国は再び、「日本は謝罪していないから」との理屈を持ち出して、改憲の動きを牽制し始めたと鈴置氏は述べています。

鈴置氏は「尹錫悦政権は「日韓共同宣言の再確認」というオブラートにくるんで日本にもう一度、謝罪させることを狙っている」とした上で「キシダなら韓国の言いなりになる」という楽観論を否定したら、韓国には打開策がないことになってしまうという苦しい状況を説明しています。

それも、元をただせば、安倍政権時に韓国、中国に対する謝罪外交を止めたことが大きな要因となっています。

2015年8月のエントリー「安倍談話が中国を包囲する」で筆者は、安倍談話で「国策を誤ったのは「国際秩序の挑戦者」になったからだ」と明言したことに着目し、これによって戦後にケリをつける談話でもあると述べています。

今になって振り返ってみれば、戦後レジームからの脱却は、この時既に行われていたということです。

鈴置氏はこの安倍談話によって、韓国の外交カードは粉々に打ち砕かれてしまい、それが故に、安倍元総理が韓国で蛇蝎の如くに憎まれているのだと述べています。

このように、丹念かつ戦略的に、戦後レジームからの脱却を行ってきた安倍路線を岸田総理がどれだけ理解しているのか分かりませけれども、ここはブレることなく貫いていただきたいと思いますね。



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