日中外相会談取りやめと台湾有事

今日はこの話題です。
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1.日中外相会談取りやめ


8月4日、中国は、この日予定していた日中外相会談を中止すること発表しました。

これは、3日からカンボジアで開かれているASEANの一連の外相会議で、王毅外相が林外務大臣と会談する予定だったのを中国からキャンセルしたのですけれども、それが決まったのは開始予定のおよそ2時間前でした。

取りやめについて中国外務省の華春瑩報道官は4日の記者会見で「日本はG7とともに中国を不当に非難する共同声明を発表した。中国の主権を侵害するアメリカの行為を助長するもので、中国国民は極めて不満だ。日本は台湾問題において歴史的責任があり、台湾に関連してあれこれ言ういかなる資格もない」と述べ、日本以外のG7各国との今後の関係についても、「台湾問題での間違った立場を変えないかぎり、われわれは対話の意義がどこにあるのか考え直さねばならない」と牽制しました。

これに対し、日本政府関係者は、「具体的な事情は、まだはっきりしない。中国による台湾周辺での大規模な軍事演習に、日本を含めたG7の外相が懸念を表明する声明を出したことが影響しているのではないか」と述べました。

中国外務省によると、王毅外相は「挑発しているのはアメリカであり、危機を引き起こしているのもアメリカで、依然、緊張を高め続けているのもアメリカだ……G7の誤った行動は中国人に極めて大きな憤りを引き起こした。中国とほかの国の主権と独立は人々の血みどろの奮闘によって獲得されたものであり、いわれなく侵害されることは絶対にあってはならない」と批判しています。

更に、5日に行われた東アジアサミットの外相会議(EAS)でも、日本の林外相が発言中に、中国の王毅外相が退室したそうで、あからさまな不満表明といえます。


2.軍事活動の口実として訪問を利用することは正当化できない


では、中国が不満を表したG7外相声明には何が書かれていたのか。件の声明は外務省のサイトで公開されていますけれども、次の通りです。
台湾海峡の平和及び安定の維持に関するG7外相声明
令和4年8月4日

8月4日、G7外相は、標記声明を発出しました。

(声明仮訳)
 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国及び米国のG7外相並びにEU上級代表は、台湾海峡及びその他の地域において、ルールに基づく国際秩序、平和及び安定を維持するという我々の共通のコミットメントを再確認する。

 我々は、不要なエスカレーションを招く危険がある、中華人民共和国による最近の及び発表された威嚇的な行動、特に実弾射撃演習及び経済的威圧を懸念する。台湾海峡における攻撃的な軍事活動の口実として訪問を利用することは正当化できない。立法機関に属する者が我々の国から国際的な渡航をするのは通常かつ日常的なことである。中華人民共和国のエスカレートした対応は、緊張を高め、地域を不安定にさせる危険がある。

 我々は中華人民共和国に対し、地域において、力による一方的な現状変更をしないよう求め、また、両岸の相違を平和的手段で解決するよう求める。G7メンバーそれぞれの、一つの中国政策(該当する場合)と台湾に関する基本的立場に変更はない。

 我々は、台湾海峡の平和及び安定の維持に対する我々の共通かつ確固たるコミットメントを改めて表明し、全ての当事者が冷静さを保ち、自制し、透明性を持って行動し、誤解を防ぐために開かれた意思疎通を維持することを促す。
政府高官が訪台するのは通常かつ日常的なことであるのに、それを口実に実弾演習をするのは容認できない、と、多少上から目線かつ、中国が一方的に暴れているだけのような印象を与える物言いですけれども、内容自体は至極当然です。

この声明で、日中外相会談をキャンセルし、東アジアサミット外相会議でも途中退席するとは、相当余裕がないことの表れです。台湾を一度も統治したことがないくせに、「主権と独立は人々の血みどろの奮闘によって獲得された」などと王毅外相はよく言えたものです。


3.弾道ミサイル5発が日本EEZに着弾


8月4日、中国軍は台湾を取り囲む6ヶ所の海空域で、弾道ミサイルなどの発射を含む「重要軍事演習」を開始しました。無論、先日、アメリカのペロシ下院議長が台湾訪問したことへの対抗措置ですけれども、今回は台湾封鎖などを念頭に置いた異例の大規模演習となっています。

4日正午、複数の中国メディアは演習開始を一斉に伝えました。

これに対し、台湾国防部は、中国軍が台湾の北部、東部、南部の海域へ弾道ミサイル11発を発射したと発表。演習の中核となっている中国軍の「東部戦区」の報道官は、ロケット軍部隊が台湾東部沖に向けてミサイル発射訓練を行い、「すべて正確に目標に命中させた」としています。

この中で中国軍は日本の排他的経済水域(EEZ)内にもミサイルを撃ち込んでいます。

防衛省によると、日本が確認したミサイル9発は4日午後2時56分頃から午後4時8分頃にかけて中国の内陸部と浙江省、福建省の計3ヶ所から発射。浙江省からの1発と福建省からの4発の計5発が与那国島南方の日本のEEZ内に落ちています。

日本に最も近い落下地点は与那国島の北北西約80キロメートルのEEZ外でした。航空機や船舶への被害情報は確認されていないものの、福建省から発射された4発は台北周辺の上空を通過したとみられるようです。

日本側の抗議に対し、これまでのところ中国政府の公式な反応はありませんけれども、日本側が演習区域に日本のEEZが含まれているとして懸念を伝えたことについて、中国外務省の華春瑩報道官は、記者会見で「両国は関連海域で境界を画定しておらず、演習区域に日本のEEZが含まれるという見解は存在しない」と主張しています。

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4.ICBM発射実験を延期したアメリカ


同じく4日、アメリカ国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は中国軍が軍事演習で弾道ミサイルを発射したことついて、「台湾海峡の平和と安全の維持という我々の長期的な目標と相いれない無責任な行為だ」と非難しました。

そして、カービー調整官は、中国が軍事的威圧をエスカレートさせ、台湾海峡の現状を新たに変更させる「ニューノーマル」を試みていると警戒感を示し、空母ロナルド・レーガンと同空母打撃群の艦船を状況監視を目的に展開を継続させると表明。

日本を含む地域の同盟諸国の安全のために「さらなる措置を講じる用意がある」とした上で、米中間の判断ミスなど不測の事態につながるリスク回避を念頭に、アメリカ軍が今週予定していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を延期させると発表。延期はアメリカの核抑止態勢への影響はないとし、中国当局との対話のラインは維持しているとも強調しています。

これは、アメリカが米中でミサイルの撃ちあいはしたくないと思っているというと、自ら一歩引いて、中国の面子を立てておくから、これ以上のエスカレートはしないでおこう、というアメリカからのメッセージではないかと思います。

果たして、アメリカが弾道ミサイルの発射を延期した程度で、中国の潰れた面子が戻るのかどうか分かりませんけれども、中国が日本のEEZにミサイルを撃ち込んだという事は、アメリカに回答する代わりに、日本に対して、台湾有事の際、手を出すな、というメッセージを送ったとも取れます。


5.ペロシ下院議長と会談した岸田総理


8月5日、岸田総理は、アメリカのペロシ下院議長と総理公邸で会談しました。

概要は次の通りです。
1 冒頭、岸田総理大臣から、ペローシ下院議長一行の訪日を歓迎するとともに、一行から寄せられた安倍元総理大臣御逝去に関する弔意メッセージへの謝意を述べました。

2 また、日米同盟の強化や「自由で開かれたインド太平洋」についてやりとりを行い、岸田総理大臣から、これらの実現に向けたペローシ下院議長の引き続きのリーダーシップと米国議会の支援を期待している旨述べました。

3 さらに、中国、北朝鮮やロシアによるウクライナ侵略などの地域情勢、「核兵器のない世界」への取組を含む国際情勢について意見交換を行いました。

4 その中で、岸田総理大臣から、今回、中国の弾道ミサイルがEEZを含む我が国近海に落下したことは、我が国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であり、中国に対し、強く非難し、抗議した、今般の中国側の行動は、地域及び国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものであり、軍事訓練の即刻中止を求めた旨述べました。

5 岸田総理大臣から、台湾海峡の平和と安定を維持するため、引き続き、日米で緊密に連携していくことを確認しました。
ここで両者は、中国軍が台湾周辺で「重要軍事演習」を開始したことに対し、台湾海峡の平和と安定を維持するため、日米が緊密に連携していくことを確認しています。

更に、岸田総理は、中国軍のミサイルが日本のEEZに着弾したことについて、「わが国の安全保障および国民の安全に関わる重大な問題だ……中国に対して強く非難し、抗議した。今般の中国側の行動は地域および国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるもので、軍事訓練の即刻中止を求めた」と説明したとしています。


6.中国がほくそ笑む安倍派の崩壊


このように、日米は台湾について、より連携して対処することを確認していますけれども、中国からみれば、なんとしてでも日米関係を弱めようと離間工作をしてくるものと思われます。

いくら世界一の軍事力を持つ、アメリカ軍といえども、後方支援を担う日本の協力がなければ、立ちいきません。逆に中国からみれば、そここそが付け入る隙で、他のG7主要国と同様、なんとしてでも中国包囲網を作らせないように動くはずです。

今、自民党は、旧統一教会問題で叩かれまくっていますけれども、なぜか安倍派の議員ばかりが槍玉に上がっています。

今の状態で、解散総選挙をしようものなら、安倍派議員が多く落選しないとも限りません。

中国にとってこんな美味しい餌はない。

つまり、日本のマスコミに工作して旧統一教会問題を騒ぎ立てては、自民党、とくに安倍派議員の評判を落として、攪乱。あわよくば安倍派を四分五裂させることだって出来るかもしれません。

安倍派が崩壊すれば、党内保守の発言力が弱まり、憲法改正はもちろん防衛費の増額云々すら反故になることだってないとはいえません。

そう考えると、9月にあるとされる岸田改造内閣の陣容、とりわけ外相、防衛相に誰を持ってくるか等は、そのまま米中に対して、日本のスタンスを示すメッセージになるでしょう。

日本にとっても台湾にとっても重要な局面が近づいてきたように思いますね。



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