

1.下落した岸田改造内閣支持率
第2次岸田改造内閣発足を受け、共同通信が8月10、11両日に全国緊急電話世論調査を実施しました。
それによると、岸田内閣の支持率は54.1%(不支持率は28.2%)と昨年10月の内閣発足以来最低となった7月30、31両日の前回調査から3.1ポイントの微増にとどまりました。
そして、今回の内閣改造と自民党役員人事を「評価する」は44.0%で、「評価しない」の41.6%をわずかながら上回った程度と、内閣改造で政権浮揚を狙う目論みは期待外れに終わりました。
また、今回の内閣改造で岸田総理が重視した旧統一教会と自民党国会議員との関わりについて、自民や所属議員の「説明が不足している」との回答が89.5%に上り、政治家が旧統一教会や関連団体と関係を絶つべきかどうかについては「関係を絶つべきだ」が84.7%と「関係を絶つ必要はない」の12.8%を大きく上回りました。
期待したほど政権浮揚効果が見られなかった内閣改造ですけれども、調査によっては逆に支持が下落したところもあります。
同じく8月10、11両日に実施した読売新聞の全国世論調査では、岸田内閣の支持率は、改造直前の前回調査(今月5~7日実施)から6ポイント下落の51%と過去最低。不支持率は34%(前回32%)と過去最高となっています。
ただし今回の内閣改造全体については「評価する」が45%と「評価しない」の34%を上回っています。
それでも、岸田総理が新閣僚らに対し、旧統一教会との関係を自ら点検し、見直すよう求めたことについて、十分な対応だと「思わない」は55%と旧統一教会との関係には厳しい目が向けられています。
また、支持政党については、自民党が35%と前回調査から3ポイント減となり、岸田内閣が発足してから最も低くなっています。7月の参院選で自民党が大勝直後の44%から比べると9ポイント減と下落が続いています。
一方、その他の政党支持率は、立憲民主党6%(前回6%)、日本維新の会5%(前回5%)、公明党3%(前回3%)、共産党3%(前回3%)、れいわ新選組2%(前回1%)、参政党2%(前回2%)など野党の支持率に大きな変化がなく、無党派層も37%(前回36%)と大きな変化がないところをみると、岸田政権以上に自民党そのものに対して、旧統一教会との関係をちゃんとしろという世論の声が高まっているといえるのではないかと思います。
2.九割が説明が足りないと回答した
8月11日のエントリー「第二次岸田改造内閣」でも触れましたけれども、岸田総理は、内閣改造に当たって、旧統一教会との関係が指摘された閣僚7人は交代させ、「自分自身で点検して、今後、関係を断つように」と支持を出して政権にダメージが及ばないように配慮していました。
各派閥から閣僚を選び、更に菅前総理や菅氏を支持する無派閥議員を取り込むため、菅氏に近い河野太郎氏をデジタル相に起用するなどもしてみせました。
それでも政権浮揚には結びつかず、自民党の支持率が下がったということは、総理というよりは総裁としての働きを求められているということです。あるいは、今後、副大臣政務官以下の人事を一生懸命弄ってみても、思ったような効果は上がらないかもしれません。
それ以前に、そもそも、自民党から旧統一教会の影響を完全排除できるのかという観点もあります。
今回の改造内閣では、寺田稔総務相、加藤勝信厚労相、西村明宏環境相、岡田直樹地方創生担当相、高市早苗経済安保担当相、林芳正外務相、山際大志郎経済再生担当相の少なくとも7人が、旧統一教会と関係があったことが報じられています。
これについて、8月11日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、事前の取材で「これぐらいの数かなと思っていました」とした上で「前の内閣で8人だったわけです。今回もほぼ同じ。閣僚数19ポストです。そのうち公明党にひとつ渡しているので18。18のうちに8人。これが自民党全体の縮図かもしれませんね。自民党議員が三百数十人いるんですけど」と指摘。これに司会の羽鳥慎一アナウンサーが「じゃぁ半分近く?」と応じると、田崎氏は「半分近く。百数十人いらっしゃるんでしょう」と付け加えています。
もし、この通りだとすると、完全排除など夢のまた夢。あとは、それでも問題ないと世論を納得させなくてはなりません。岸田総理自身「丁寧に説明」と言っているのに、世論調査で9割近くが「説明が足りない」と回答し、8割以上が「関係を絶つべきだ」と答えているところを見る限り、岸田総理はその声に今のところ答えられていないということになります。
3.岸田内閣の三重苦
岸田改造内閣について、政治ジャーナリストの清水克彦氏は、「今後、閣僚の中から旧統一教会との濃い関係が明るみに出れば、かつて第2次橋本改造内閣が、ロッキード事件で有罪が確定した佐藤孝行氏を入閣させたばかりに崩壊したのと同じ轍を踏む危険性もはらんでいる」とした上で、難題は旧統一教会問題だけではなく、大きな「3つの壁」があると指摘しています。
それが次の3つです。
・国内問題。新型コロナウイルス対策、経済対策、衆議院選挙区の「10増10減」まず、最初の国内問題について、清水氏は、武漢ウイルス対策について、「BA.5」によるコロナ感染者の爆発的な増加は、もはや「行動制限はしない」「メリハリのきいた対策をとる」などといった口先介入では出口が見えない状況だと指摘。
・安倍元総理の国葬問題
・中国が、台湾だけでなく日本も標的にし始めたこと。
経済対策も、ガソリン代や電気代の高騰、食料品の価格上昇も出口が見えず、10月には6000品目もの値上げが生活を直撃する見通しの中、非常にしょぼいと批判しています。
そして衆議院選挙区の「10増10減」にしても、選挙区の変更は衆議院議員の利害が激突するため遅々として進まない上に、公明党から早くも上がる「選挙区が増える東京などの一部は、うちの候補で統一してほしい」という要求をどうするかの答えが出ない間は、「解散」すらできないと指摘しています。
2つ目の安倍元総理の国葬問題については、国会での議論や国民への十分な説明もないまま閣議で国葬を決めたことや費用の問題もさることながら、清水氏は、各国からの弔問が相次ぐ点に着目。特に台湾について、中国の猛反発を招く恐れを挙げ「もし国葬に蔡英文総統が出席したいと言えば、岸田首相は腹を括れるだろうか」と疑問を呈しています。
要するに、安倍元総理の国葬は、弔問外交としてプラスになる反面、国内外で批判や反発を呼ぶリスクも高いというのですね。
そして最後の中国の問題について清水氏は、先日のアメリカのペロシ議長の訪台が、中国共産党長老の「国益を考えればアメリカと協調すべき」との声を封じることになり、習近平主席の3選が決まれば、更に日台に対して攻勢に出てくるだろうと述べ、今年9月29日の日中国交正常化50年という節目に、岸田総理は「動き出した巨大なトラ」と対峙しなければならなくなった、と指摘しています。
筆者はこれまで、国内世論は「現状維持」を支持し、岸田総理は「何もしない」ことでそれに応えることが出来ていたかもしれないけれども、これからは、何かしなくては現状維持できない状況になるだろうと述べてきました。
上述の清水氏が指摘する3つの壁は、「何もしない」ことで突破できるものではなく、まさに「何かしない」と超えられないものばかりです。
岸田改造内閣は「何をするのか」。これが今後の焦点になってくるのではないかと思いますね。
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深森