ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.アメリカ超党派議員団の訪台
8月14日、アメリカ超党派の議員団が台湾を訪問しました。
訪問したのは、民主党から、エドワード・マーキー上院議員、ジョン・ガラメンディ下院議員、ドン・ベイヤー下院議員、アラン・ロ―ウェンタール下院議員の4名と、共和党のアマタ・コールマン・レイドワーゲン下院議員1名の計5名です。
ナンシー・ペロシ下院議長が8月2日深夜に訪台してからわずか12日でのアメリカ議員団の台湾訪問となりました。
マーキー議員は自身の公式ウェブサイトで、台湾への訪問は、台湾関係法などに基づきアメリカの対台湾支援を再確認するとともに、台湾海峡の緊張緩和、半導体への投資を含む経済協力の拡大など台湾の政治家やビジネスリーダーと議論すると表明しました。
議員団は翌15日に蔡英文総統と会談。蔡総統は、台湾海峡の安定した現状維持にコミットしていると表明しました。
蔡総統は会談で、中国の軍事演習は地域の安定と平和への深刻な影響を与えたと指摘。「我々は国際的な同盟国と緊密に協力し軍事状況を綿密に監視している。同時に、台湾が台湾海峡の現状維持と安定を守る決意であることを世界に知ってもらうため、できることを全てやっている」と述べ、マーキー議員は不必要な衝突を防ぐために全力を挙げる「道義的義務を、われわれは負っている……台湾は厳しい時期に卓越した自制と思慮を示してきた」と述べています。
2.アメリカのサラミスライス戦術
この米超党派議員団の訪台に中国は反発。中国人民解放軍は、15日に台湾周辺で新たな軍事演習を実施したと発表。人民解放軍東部戦区司令部は「米国と台湾が政治的な術策を弄し、台湾海峡の平和と安定を損ない続けていることに対する厳しい抑止力」だと主張しています。
中国の反発について、アメリカ国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は12日、記者団へのブリーフィングの中で、「中国は過剰に反応し、その行動は挑発的で攪乱的で、前代未聞」と非難する一方で、台湾に対しては、「貿易協議のロードマップを作成しており、数日中に発表する予定がある」と関係強化の姿勢を示しました。
更に15日には、アメリカ国務省のプライス報道官が、中国がペロシ下院議長の台湾訪問に反発して軍事演習をしたことに関し「過剰反応だ」と批判。
議員団の訪台は「これからも続くだろう」と明言した上で議員の平和的な訪問に軍事演習や挑発で対応するのは全く不要だ」と強調し、アメリカは台湾海峡の現状維持を求めているのに、中国が一方的に現状変更を試みていると非難しました。
プライス報道官はこうした訪問は「『一つの中国』政策と合致する」と述べていますけれども、訪台を繰り返す裏で、中国は過剰反応しているという批判は、尖閣を領海侵犯した中国に日本が抗議すると「騒ぎ過ぎだ」というのと同じ言い分であり、要するにアメリカによるサラミスライス戦術だといってよいのではないかと思います。
3.慎重に計画された挑発
このようなアメリカの行動は、東アジアを不安定化させるだけだという見方も当然あります。
事実、ペロシ下院議長の訪台について、共和党議員から「訪台の目的は何だったのか」「せっかく、米中の政府間レベルにおける対話の可能性が開かれていたのに、このタイミングで台湾に訪問することで、何を目指していたのか」「政権と丁寧な調整があってしかるべきだった」等々、批判的な反応も多くでており、身内の民主党からも、中国が台湾に対してより圧力をかける言い訳を与えてしまった、という批判が出ています。
バイデン政権が中国に対してサラミスライスを仕掛けているのなら、分かっていて意図してやったことになるのですけれども、米中以外にもそうした目線で見ている首脳がいます。ロシアのプーチン大統領です。
8月15日、モスクワ郊外のクビンカでロシア国防省主催の国際軍事技術フォーラム「アーミー2022」が開催されました。
これは、ロシアが兵器輸出国として、影響力を維持する狙いがあるとみられているのですけれども、会場には150以上の企業や組織が最新の兵器を展示。更にウクライナ軍から奪った軍事車両が戦利品として展示されるなど、長引く軍事行動を正当化したい意図もあるのではないかと囁かれています。
ロシア国防省によると、「アーミー2022」の見本市には、70ヶ国以上が来場し、1兆1000億円以上の商談が纏まる見込みとしています。
この「アーミー2022」の開会式でプーチン大統領が挨拶しているのですけれども、プーチン大統領は、ウクライナ紛争について、アメリカがウクライナの民間人を大砲の餌食として利用しながら、紛争を引き出そうとしていると非難。更にペロシ下院議長の台湾訪問について「無責任な政治家個人の旅行ではなく」、世界のその地域の状況を不安定化させるためのワシントンの努力だと批判しました。
そして、この訪問は「慎重に計画された挑発」であり、他国の主権を無視したものであると主張しました。
自分がウクライナに侵攻してウクライナの主権を無視しておいて、この言い草も自分勝手だなとは思いますけれども、以前取り上げたようにプーチン大統領にとっての主権国家が米露中くらいしかないのであれば、こんな思考になるのかもしれません。
4.東側経済圏を睨むプーチン
ただ、注意すべきは、プーチン大統領のこの発言が、「アーミー2022」という国際軍事技術フォーラムで行われたことです。
つまり、この発言には、"中国"の主権を無視したアメリカに武力、あるいはそれに類する手段で対抗するというメッセージが含まれているのではないかということです。
プーチン大統領は、この開会式での挨拶で、アメリカ主導の「一極世界秩序」に反対し、その時代は終わりを迎えたと述べ、世界的な緊張を分散させる唯一の方法は「現代の多極世界システム」を強化することだとした上で「ロシアは、南米やアジア、アフリカの国々との歴史的に強固で、友好的で、真に信頼できる関係を心から大切にしている。小火器から装甲車、大砲、戦闘航空機、無人機まで、最も近代的な種類の兵器を同盟国に供給する用意がある……様々な大陸に、多くの同盟国やパートナー、志を同じくする人々がいるということを高く評価している」と語っています。
プーチン大統領はまた、ロシアで外国人兵士を訓練することの利点を強調し、ロシアは同盟国が合同軍事演習に参加するよう招待していると述べたそうですけれども、これはやはり以前述べた、アメリカのドル覇権に対する東側経済圏の構築を狙っているように思えてなりません。
また、台湾有事に際しても、ロシアが中国のバックアップをして、北海道侵略の動きをみせるなどして日本を牽制して、自衛隊の米軍支援の足を引っ張る、あるいは、通信網をハックして、国内を大混乱に落とし入れ、台湾支援どころでなくしてしまうといったことも考えられます。
果たして、岸田政権にそういった想定があるのか、準備をしているのか。今は既に有事であり戦時あるという認識を持った上での対応を願いたいと思いますね。
この記事へのコメント