日中は水面下で取引しているのか

今日はこの話題です。
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1.プロレスをやっているつもりが間違って大怪我をすることはある


8月3日、経済アナリストの森永卓郎氏が、ニッポン放送『垣花正 あなたとハッピー!』に出演。アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問について、戦争へ発展する可能性や、日本への影響について危惧を示しました。

緊張感が高まる米中関係はどうなっていくのかについて、森永氏は「ペロシ米下院議長のポジションは、大統領、副大統領に次いで、ナンバー3……彼女は中国のことが大嫌いなんですよ。昔から筋金入りの対中姿勢……"超重要人物"であるペロシ氏が台湾を訪れるということは、米軍が彼女を警護、サポートをして入国するということ。これに対して中国は、『中国の主権と領土保全を侵害した!』と激怒している」と述べた上で、「習近平主席はこの秋、3期目を目指す。それまでに、なるべくいざこざを起こしたくない。ただ、今回の一件で、習近平氏は国民に対して弱腰の姿勢は見せられない……これから米中プロレスが開幕する。ぶつかりはしないが、お互い軍事演習をして牽制しあう……プロレスをやっているつもりが、間違って大怪我をすることはある。私はそれが一番心配」と指摘しました。

そして、万が一、中国が本気になってしまったらどうなるのかについて、森永氏は「日本は集団的自衛権の行使を決めているのでで、自衛隊も入って戦争になる。そうなったらどこから自衛隊機が出るのか、沖縄の嘉手納基地だと私は読んでいる……沖縄を犠牲にするのはもうやめるべき」と見解を述べました。

けれども、台湾有事で、沖縄から自衛隊機が出るなんて、距離を考えたら自明の理であって、読む以前の問題です。何を今更感が満載です。


2.ペロシ訪台で動揺する市場


米中が偶発的に衝突する懸念については、著作家の山本一郎氏が台湾のニュースメディア「The News Lens」の連載コラム「第5回:「ペロシ訪台」で米中プロレスの面白ネタにされる台湾」で次のように述べています。(一部抜粋)

・一番動揺しているのは安全保障方面というよりは経済・市場方面でありまして、結論から先に申しますと「その訪台、どういうメリットや利益を求めて実現させてしまったの?」というのはあります。単純な話、それなりに危険があるところで訪台を米下院議長が敢行するというのは、ちゃんとした訪台の目的が誰の目から見ても明らかであるべきなところ、実際には「何で訪問してんのか良く分かんない」のでみんな動揺しとるわけですね、相場関係者が。

・何でペロシさん台湾訪問でこんなに市場が動揺するのと言われれば、それなりに大人の関係としてアメリカと中国との間の政治的・外交的駆け引きの文脈で見てきた台湾海峡問題が、具体的な安全保障リスクとして見えてしまうことにあります。どこまで中国が踏み込んでくるのか衆人環視の中でペロシさんが台湾を訪問すること『そのもの』に事件的価値があるってことなんですよね。

・一部外交筋では「ペロシのようなアメリカ政治の大物が台湾に足を踏み入れたことそのものに価値がある」と評価する声もある一方で、そもそも台湾というのは火種であるだけでなく、経済的に重要な地域であって、そこに争議のネタが転がり込むということは不要な経済的、相場的、市場的混乱が起きることは避けられません。それだけのことをしておいて、行ったから価値があるんだと言われても何を言ってるんだお前はという話になるかもしれません。

・いわば、偶発的な台湾有事はアメリカも中国も台湾も望んでいないのに、あたかも何かが起きかねない事態をペロシさん自身が政治的信念によって引き起こしている、とも言えます。実際に紛争地になっているウクライナの首都キエフに欧州やアメリカの首脳が訪問して大統領のゼレンスキーさんと対談することは「ウクライナはロシアによる主権が及ばない」という前提で進んでいるものに対し、台湾においてこれだけ問題となるのは「中国はロシアではない」上に「台湾のデリケートさはウクライナ以上である」ことを示唆するものです。

・なんかこう、ますます台湾が実態をはるかに超えて、台湾の意志とは無関係に重要な存在になってしまうのではないかと怖れているのですが、大丈夫なのかなあ。

このように山本氏はペロシ議長の訪台は、それが引き起こす事態に対してどんなメリットがあったのか分からない。台湾の意思とは無関係に事態が推移するのではないかと疑念を呈しています。

こちらもプロレスの積りが本気になってしまうかもしれないと危惧している訳です。


3.日中は水面下で取引しているのか


先日来、中国は、ペロシ議長の訪台を受け、台湾を包囲した"怒り"の軍事演習を行いましたけれども、アメリカは非難するだけで直接の対応は控えています。

ホワイトハウスの国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は、8月1日と2日の会見で「アメリカはエサに食いついたり武力誇示に巻き込まれはしない」と述べ、ジェイク・サリバン大統領補佐官も、3日のNPRのインタビューで「私たちは緊張が高まるのを望まない」という立場を強調しています。

その割にはペロシ議長訪台後の14日、超党派議員団が台湾を訪問するなどしていますから、アメリカこそが餌を撒いているのではないかという気がしないでもありません。

巷の一部では、これらについて、米中双方は裏でプロレスをやっているだけなのだという意見がありますけれども、そのプロレスが偶発的な衝突につながる危険があるというのは先に紹介したとおりです。

台湾を巡って、米中が衝突すると、必然的に日本も巻き込まれることになりますけれども、これについて、米中ではなく、日中が水面下で手を握っていることはないのか。

8月7日のエントリー「内閣改造前倒しと日本の戦略」で、アメリカが日台を米中対立の尖兵とする「バックパッシング」戦略を仕掛けていて、岸田総理がそれを見破っていた場合、その手に乗るものかと、改造内閣の閣僚に媚中派を並べることも考えられなくもないと述べたことがあります。

その観点から今回の改造内閣を見てみるとどうなのか。

これについて、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、当初、防衛相に財務省出身の寺田稔総務相や福田達夫前総務会長の横滑り案が取り沙汰されていたのを、「岩盤保守層」の猛反発と、林外相に加えて、防衛相まで親中派で固めてしまうと、アメリカからも懸念する声が予想されることから、すんでのところで「親中派・防衛相」の誕生を思いとどまった印象があると述べています。

ただ、それでも、岸防衛相が改造内閣で外れたことは事実です。

前述の長谷川氏は「岸信夫前防衛相は、中国の挑発に大規模な日米合同演習で対抗するなど、重要局面で国民に安心感を与えていた」と述べていますけれども、安倍元総理無き今、岸前防衛相も内閣から抜けているのですね。

ここからは、筆者の単なる妄想ですけれども、中国が水面下で日本と交渉していて、岸田総理に対し、台湾進攻時に、日本が介入しないのなら、尖閣や沖縄にミサイルなど撃ちこむことはしない。日本は巻き込まないと持ち掛けられたのではないか。そして、その答えが今回の内閣改造だったのではないか、と。

そう考えると、岸防衛相を外し、後任に防衛費GDP比2%ありき論に否定的な浜田氏を充てたことも、そして何より、内閣改造を急に前倒ししたのも辻褄があうといえなくもありません。

また、8月15日のエントリー「台湾有事シミュレーションの衝撃」で、改造から2日後の12日に中国の孔鉉佑駐日大使が、台湾周辺で実施した大規模軍事演習に関して「米国の政治的挑発と『台湾独立』勢力への対抗措置だ。日本とは関係ない……日本の利益に影響が及ぶものではない」と主張する談話を出してきたことを取り上げましたけれども、これなども、岸田改造内閣で岸防衛相を外したことに対する返答だと捉えることも可能です。

更に、17日には、中国の楊潔チ共産党中央政治局委員・中央外事工作委弁公室主任と日本の秋葉・国家安全保障局長とが天津で、第9回日中ハイレベル政治対話を行い、関係修復に歩みより、と報じられています。

その中で楊氏は「中日の2000年余りの交流史と国交正常化50周年の歴史的過程が示しているように、双方の平和共存と友好協力が両国関係の唯一の正しい選択である。双方は指導者の重要共通認識を政治の指針、行動のよりどころとし、高い責任感と使命感を堅持し、歴史を深く総括し、定見をぶらさず、内外の妨害を排除し、新時代の要請にかなった中日関係構築に共に尽力しなければならない」と述べたそうですけれども、「定見をぶらさず、内外の妨害を排除し」などという言い回しは、アメリカの誘いに乗るなよと釘を刺しているようにも感じてしまいます。

一方、アメリカはアメリカで、そのような日中の裏取引を察知して、更に超党派議員団を訪台させて、緊張を高め、日本に防衛力強化と憲法改正を促しているのだとしたら。

まぁ、これは勿論、筆者の妄想ですけれども、一つの可能性として記しておきたいと思います。




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