

1.岸田総理の武漢ウイルス罹患
8月21日、内閣官房は岸田総理が武漢ウイルスに感染したと発表しました。20日夜から微熱やせきなどの症状があり、21日午前にPCR検査を受け、午後に陽性が確認されました。日本の総理が武漢ウイルスに感染するのは初めてのことです。
感染について、岸田総理はリモート会見で次のように語っています。
(岸田総理の新型コロナウイルス感染症の罹患(りかん)について)岸田総理は、幸いにも軽症であることから、公邸で隔離療養しながら、執務を取るようです。
内閣総理大臣の岸田文雄です。皆さん御存じのとおり、私は、昨日21日に行ったPCR検査の結果、新型コロナウイルス陽性であると診断されました。一昨日20日から咳(せき)や微熱といった症状を生じ、急遽(きゅうきょ)PCR検査を行ったものです。幸いにして、感染防止策を徹底して行ってきたことから、私の同居家族以外に濃厚接触者に該当する方はおりません。
そして、少し咳は出ますが、既に熱は平熱に戻り、このとおり普通に生活できていることから、医師にも相談の上、首相公邸において自宅療養を行いながら、リモートで仕事を続けることにいたしました。私は、自分が新型コロナに感染するという事態も想定し、テレワークで職務を継続できるよう、官邸と公邸との間に光ファイバーによる専用会議システムを整備させ、万が一の場合に備えてきました。
こうした準備をいかし、早速、本日からリモートでの執務を開始しました。今のところ大きな不便を感じることなく仕事を行うことができています。今週の閣議にもオンラインで出席することといたしました。27日から開催されるTICAD(アフリカ開発会議)へのオンライン出席を始め、可能な限り、通常同様の対応を行っていきたいと思っています。災害対応など、危機管理についても、松野官房長官を始めとする官邸スタッフのサポートを頂きながら万全を期してまいります。このまま状況が順調に推移すれば、発症翌日から10日目となる30日まで自宅待機を続け、31日から出邸することになります。
今回、幸いにして軽症で済んでいるのは、先日、4回目のワクチン接種を行った効果もあったと考えています。高齢者の皆さんや基礎疾患をお持ちの方など、重症化リスクをお持ちの皆さんを始め、引き続き、感染防止対策、そして3回目、4回目のワクチン接種に取り組んでいただきたいと思います。足元では、3年ぶりに行動制限がなかったお盆休みが明け、引き続き、高い感染状況が続いています。引き続き、病床の確保など、保健医療体制の確保に万全を期します。医療従事者の方、保健所の方、高齢者施設の方など、エッセンシャルワーカーの皆さんにおかれては、感染症との戦いの最前線に立ち続け、大変な御苦労をされていることと思います。改めて敬意と感謝を表し申し上げます。
保健所や医療機関の負担軽減については、HER-SYS(ハーシス)入力の簡素化、健康フォローアップセンターの全国整備、検査キットのOTC(Over The Counter:医師による処方箋を必要とせずに購入できる医薬品)化などを進めているところですが、更なる負担軽減策を一両日中にお示しするようにしたいと思っています。新型コロナの感染症法上の措置の見直し、水際対策の緩和など、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行についても、専門家、自治体の御意見も踏まえ、併せて早急に方向性をお示しいたします。変化する新型コロナウイルスの特性を踏まえながら、できる限り、感染防止と社会経済活動の両立を実現していくため、対応を加速させてまいります。
今回の私の感染について、国民の皆さんから頂いている様々な御指摘については真摯に受け止めなければならないと思っています。国の内外で課題が山積する中、リモートでの対応になりますが、国政に遅滞が生じることがないように全力を尽くしてまいります。
2.抗体価4160
けれども、ワクチンの4回め接種を受け、国民にも接種を勧めていた岸田総理が武漢ウイルスに罹患したことで、やはりというか、ネットの一部では、「娘と私がワクチン3回目を躊躇しているところだから複雑な気持ちにもなる」とか「しょせんワクチンの効果ってそんなもんか」とか「つまり4回目ワクチンは無意味ってことね」など、ワクチンの効果に疑問の声が挙がっています。
けれども、ワクチンを打ったらその瞬間から抗体ができてOKという訳ではありません。中和抗体が十分に出来るまでおおよそ一週間から10日くらいは掛かると言われています。
下図は、ある医療機関で、ワクチン接種して4週間後の中和抗体価を測定したものなのですけれども、だいたい接種すると抗体価が10000以上になっていることが分かります。

臨床データによると、抗体価4160で罹患リスクが約20分の1以下になる(有効性95%)とのことなので、抗体価4160をいつ超えるかが罹患するしないの分かれ目になるとみることもできます。
岸田総理が4回目のワクチンを接種したのは8月12日。罹患が分かったのが21日と2週間も経っていませんから、抗体価4160を超えておらず、罹患してしまった可能性も考えられます。
もちろん、抗体価の上がりについても個人差があり、千葉大学病院の「コロナワクチンセンター」の調査では、「抗体価が上がりやすくワクチン接種で抗体ができやすい人」の特徴として次の3つがあるそうです。
①過去に新型コロナウイルス感染をした人また、逆に「抗体価が上がりにくい人」の特徴は次の4つです。
②女性
③抗アレルギー薬の内服あり(花粉症の薬など)
①免疫抑制剤の内服をしている岸田総理が抗体価の上がりやすい人か上がりにくい人か分かりませんけれども、ワクチンが効果を発揮するまでの期間や条件がその時の状況によって異なる以上、4回目ワクチンを接種した岸田総理が感染したからといってワクチンに予防効果がないとは一概にはいえません。
②副腎皮質ステロイドをのんでいる
③高齢者
④飲酒の頻度が高い。
逆にワクチンで本当に予防したければ、毎月のように血液検査をして抗体価をチェックし、その値が4000を切る一週間以上前にワクチンを打たなければならなくなります。けれども、これは現実的ではありません。
3.感染予防と重症化予防
岸田総理は政府CMで「自分が感染しない為に、大切な家族に感染させない為に4回目のワクチン接種をしましょう」と推奨していますけれども、世の中一般で、今、自分の抗体価がいくつあって、あどどれくらい抗体が保つかを把握している人がそれほどいるとは思えません。
おそらくはワクチンを打てば、感染しない、あるいは重症化が防げるのだといった1か0で考えている人が多いのではないかと思います。
その意味では、岸田総理のCMでの呼びかけはミスリードとは言わないまでも、話が違うじゃないか、と誤解や批判を呼ぶ可能性はあると思います。
ある記者は、「たしかに、ワクチン接種のおもな目的は重症化を予防することであって、岸田首相が感染すること自体は不思議ではありません。とはいえ、とくに若い人のなかには、ワクチン接種の際の副反応が強く出る人も多く、接種は進んでいません。今回の感染判明が、こうした傾向にさらにブレーキをかけてしまう可能性があります」とコメントしたそうですけれども、4回目接種のスピードは鈍るかもしれません。
4.リアクションでは現状維持できない
ネットではワクチンに対する疑義だけでなく、岸田総理への「要望」も噴出しています。
例えば「今回の感染を機に、岸田総理にはもっとコロナ感染拡大に対する危機感を持っていただきたい。岸田総理は症状が出てから比較的早くPCR検査を受けたとのことですが、一般市民はPCR検査にしても抗原検査にしてもすぐに受けることはできません」とか「国民がコロナにかかり、その影響で健康面も経済面も苦しいことを、わかってくれたらいいな。コロナにかかると、身体もきつい、だけど仕事をしないと生活に支障がでる。聞く耳があるのなら、こんな国民の声を聞いてほしい」などです。
要するに感染対策、医療体制の整備がなってないという声です。
これについて、元参議院議員で政治評論家の筆坂秀世氏は次のように述べています。
【前略】ブチ切れてます。これまで筆者が述べてきたように、国民は「現状維持」を支持しているのであって、そこから少しでも外れると支持率低下の要因になると見ています。
だが岸田内閣が何か有効な手立てを講じてくれただろうか。まったく無策と言うしかない。
オミクロン株によりコロナ感染者が激増している。岸田首相まで感染してしまった。1日の感染者数が20万人を超え続けている。世界で最多の感染数という事態が何週も続いている。行動制限なしに踏み切った以上、この結果は誰にでも予測できたことだ。この方針自体を否定するつもりはない。経済や社会生活を回していくためには、やむを得ないことだ。
問題は感染者が急増することは、分かりきったことであるにもかかわらず、それへの対応ができていなかったことだ。発熱外来を設けている病院、クリニックは殺人的な忙しさになって、テレビでも連日紹介されているように悲鳴が上がっている。なぜこんな事態になるのか。発熱外来を設置している病院・クリニックがあまりにも少ないからだ。だから一部の発熱外来を設置している病院・クリニックにだけ過重な負担がかかっているのだ。
一部の自治体では、医師会などと協力し、発熱外来を大幅に増やしたところもある。こういう取り組みは、新型コロナウイルスがまん延し始めた2020年からやるべきことであった。だが安倍、菅、岸田の3内閣は取り組んでこなかった。この責任は大きい。新しい波がやってくる度に「医療逼迫」と叫んでいる光景は愚かと言うしかない。1波から6波までの経験がまったく生かされていないのだ。
どこの病院・クリニックでも診察を受けられるよう新型コロナウイルスの感染症法の分類を現在の2類から、季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げよ、という意見もある。だが果たしていま発熱外来を設けていない一般の病院・クリニックがコロナ患者を受け入れるのだろうか。受け入れるためには導線の確保なども必要になる。医師、看護師などの訓練も必要になるだろう。
発熱外来を受診する患者の増加に伴い、発熱外来の診療体制を強化すると共に一般外来の機能を縮小している病院もある(東京・八王子市の南多摩病院など)。そうした病院のノウハウ、経験を全国に広げることも政府の責任である。
この間、岸田内閣が唯一打ち出した新型コロナウイルス対策が「BA.5対策強化宣言」なるものだ。これは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などをとれば経済や社会活動を止めてしまうため、自治体側の判断で「強化宣言」を出させ、その責任を丸投げしようというものである。
7月29日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の決定によれば、この「強化宣言」なるものの中身は次のようなものだ。
(1)病床使用率がおおむね50%を超え、昨冬のピーク時を超える場合。
(2)入院患者がおおむね中等症以上等の入院医療を必要とするなど、医療の負荷の増大が認められる場合。
この2つの要件を満たした場合、都道府県が「BA.5対策強化宣言」を行えるという。
だがその中身は、市民や企業などに感染症対策の基本に立った行動をするよう要請するだけのことである。これに一体どれほどの意味があるのか。
しかも宣言を行った都道府県に対して国が行うのは、「都道府県の感染対策がより効果的・効率的に実施できるよう、関係省庁及び各所管団体等との連携・調整、好事例の提案・導入支援、感染対策に関する助言・指導」「必要に応じて国からのリエゾン職員の派遣」を行うことだという。「リエゾン職員」とは、国と自治体のパイプ役ということだ。金は一切出さないのである。
世界で毎週最多の感染者を出している国の最新の対策がこれなのだ。あきれ果てて、開いた口がふさがらない。
全数把握についても、一体いつまで検討するつもりなのか。名前など必要ない。年齢、性別、重症度くらいでよいだろう。また医師ではなく事務局が入力しても構わないようにする方法もある。ともかく遅すぎる。
【後略】
ともかく今、私が岸田内閣に言いたいことは1つだけ。もっと働け!
「何もしない」と批判されている岸田政権も実際は、何かをやっているのでしょう。けれども、それで「現状維持」が出来なければ、残念ながら「何もしていない」と批判されることになります。
その為には、先を読んで、予め手を打って「現状維持」を保つか、「現状維持」が難しければ、出口戦略を示して、しばらくの辛坊を国民にお願いするしかないと思うのですけれども、今の岸田政権にはどちらもありません。
であれば、最後に残るのは、国民の為に取り組む真摯な姿勢くらいかもしれませんけれども、夏休みを取った後の感染では、岸田総理もバツが悪いのではないかと思います。
官邸関係者は「一般の国民が新型コロナに感染するのは仕方ない。でも、一国のトップは細心の注意が必要です。トップの危機管理は、国家の危機管理です。とくに岸田首相は外交を控えていたのだから、逆算して1週間程度は、旅行などリスクのある行動は控えてもよかったと思う」と零し、自民党幹部は「五輪やパラリンピックがあったからだが、菅総理は業務を優先して会食などそれ以外の活動は自粛した……2大国政選を乗り切った岸田総理には油断があるようだ。菅さんのような緊張感が足りない」と苦言を呈したそうですけれども、いつまでも、リアクションの政策ばかりでは、中々事態を収めることは難しくなっていくかもしれませんね。
この記事へのコメント
アメリカでは日本のコンビニ並みに仮設のPCR検査場があり、体調不良の人はそこで検査して陽性であれば自己判断で隔離生活に入るのだとか。
所謂インフルエンザや風邪と同じ扱いですね。
実際に感染者数ではなく死亡率を見ると例年のインフルエンザの方が多いかと思います。
政府のかじょう反応を見ても分かる通り、日本人は国に頼りすぎなのです。
いざとなれば国が助けてくれるだろうという甘い考えはそろそろ捨てなければ、紛争も含め生き残れない世界情勢なのではないかと思います。