ノルドストリーム爆発に関与したウクライナ人とスジャ占領

今日はこの話題です。
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1.ノルドストリーム爆発でウクライナ人の男を指名手配


8月14日、ドイツの公共放送ARDなど複数のメディアは、2022年9月、ロシアとドイツを結ぶ海底の天然ガスパイプライン、ノルドストリームで起きた爆発について、ドイツの複数のメディアは、ウクライナ人の男が関与していたとして、検察当局が逮捕状を取ったと伝えました。

男は、ウクライナのダイビングスクールでインストラクターとして働いていた経歴があり、その後、隣国のポーランドで暮らしていたとみられるものの、最近、行方をくらましたということです。

検察当局は、この男に加えて、ほかにも2人のウクライナ人が海に潜ってパイプラインに爆発物をしかけた可能性があるとみていると伝えています。

ドイツのARD、ツァイト、南ドイツ新聞は共同調査の結果、この男の逮捕状が6月にポーランド政府に送付され、承認を得ていたと報じました。

ポーランド検察庁の広報官アンナ・アダミアク氏は、ポーランドがドイツから、ヴォロディミル・Zという名のウクライナ人男性の逮捕状を受け取ったことを確認したとのことで、指名手配者データベースに載っていなかったため逮捕されなかったとしています。

ドイツ連邦検事総長はこの件についてコメントしていないのですけれども、ニューヨーク・タイムズ紙は 2023年、 アメリカ当局が検証した情報として、ウクライナに忠誠を誓っているがキエフ政府とは独立して活動しているグループが作戦に関与していたことが示唆されていると報じています。

一方、ウクライナ政府は爆発へのいかなる関与も一貫して否定しています。




2.ウクライナの越境攻撃


8月13日、ウクライナ軍トップのシルスキー総司令官はロシアへの越境攻撃によって74の集落を制圧したと、ゼレンスキー大統領に報告しました。

これを受け、ゼレンスキー大統領はビデオメッセージで、ウクライナがロシアのクルスク州への越境攻撃を進める中で、「主導権を握れると再び証明した」と強調。外務省報道官は「ロシアと違って、ウクライナは他人の財産を必要としていない……クルスク州の領土に関心はない」と述べ、クルスク州にロシア軍を引き付けることで、「ロシアが追加の部隊をドネツク州に投入することを防いでいる」と主張しています。

そして15日、シルスキー総司令官は越境攻撃で掌握したクルスク州の集落が82ヶ所になり、制圧面積も1150平方キロに達したとし、クルスク州に「軍司令部」を設置したとゼレンスキー大統領に報告しています。

軍司令部の設置に先立ち、米誌フォーブスは11日、ウクライナ軍が制圧地域で塹壕の構築を始めており、「とどまろうとしている兆候だ」との見方を報じていますけれども、軍司令部が現地で軍部隊の管理や地元行政当局との調整などを担う駐屯機関であることを考えると、ロシア領土の占領を長期化させようとしているのではないかと見られています。

一方、ロシアのクルスク州当局は14日、州内住民の避難を拡大すると発表。翌15日、ロシア国防省はクルスク州の国境周辺の集落クルペツを奪還したと主張。クルスク州での過去1日の戦闘でウクライナ軍に340人の損害を与えたとしています。


3.戦略的な目標に到達しつつある


こうしたウクライナの越境攻撃について、ゼレンスキー大統領は14日に公開したビデオ演説で、「クルスク州での前進は順調であり、戦略的な目標に到達しつつある……わが国の『交換の資金』も大幅に補充された」と述べました。

また、SNSでは「クルスク州の様々な地域で、1キロから2キロ前進し、100人以上のロシア兵を捕虜にした」と成果を強調しています。

ゼレンスキー大統領はビデオ演説で述べた「交換の資金」が何を意味するのか明らかにしていないのですけれども、越境攻撃の成果をロシアとの取引に利用したいとの狙いがあるとみられています。

筆者は14日のエントリー「ザポリージャ原発火災とプーチンが一番困ること」で、ウクライナが幾ばくかのロシア領土を占領することができれば、のちの和平交渉で、互いの占領地の交換を持ちかけることも考えられると述べましたけれども、「交換の資金」が、越境攻撃で掌握したクルスク州の集落を指すのだとすると、ドネツク、あるいは、クリミヤとの交換を持ちかける可能性はあると思います。

こうしたなか、ベレシチューク副首相がSNSで、クルスク州の一部地域に「緩衝地帯」を設けたうえで、民間人がロシアとウクライナのいずれにも避難できるよう「人道回廊」を設置する方針と、人道状況を確認するため、国際機関の立ち入りも計画していることを明かしていますけれども、これは、クルスク州の占領を国際的に既成事実化することで「交換の資金」の地位を固めようとしているとも考えられます。


4.天然ガスを巡る水面下の暗闘


8月14日、ウクライナ軍のシルスキー総司令官はクルスク州の町スジャでの掃討作戦を完了したと明らかにしました。

スジャは、クルスク州の要衝で、国境地帯のロシアのガス施設が隣接し、ロシアからウクライナ経由で欧州へ向かうガスの供給に重要な役割を果たしています。

このため、越境攻撃の目的の一つはロシアの資金源を断つことではないかとの見方もあります。

9日には、スジャのガス関連施設を制圧したとの情報が飛び、供給懸念からガスの相場が上昇しています。

ロシアのエネルギー専門家アレクサンドル・ソプコ氏によると、ロシアからウクライナ経由で欧州に供給されるガスは欧州の需要全体の約4.5%。主な購入国はハンガリー、スロバキア、オーストリアで、ソプコ氏はウクライナ経由の供給が止まったとしても「代替の供給元を確保できるだろう」と推測しています。

筆者の穿った見方だとは思いますけれども、これはウクライナからのEUに対する脅しの一環ではないかと思います。つまり、EUに対しい、武器供与含め、支援をもっと寄越せ、さもなくばガスを止めるぞ、という脅しです。もちろんロシアがやったことすれば、なんだってできます。

なにしろウクライナ経由でガスを購入しているハンガリー、スロバキアはEUでもウクライナ支援に消極的な国ですからね。脅す相手としてはもってこいです。

仮にそうだとしても、EUとて、ウクライナからの暗黙のメッセージは分かっていると思います。

というのも、冒頭に取り上げた、ノルドストリーム爆発にウクライナ人の男に逮捕状を出したなんていう報道が”今になって”出てきているからです。

昨年11月には、ワシントンポスト紙が「ウクライナの特殊作戦部隊に所属していたロマン・チェルビンスキー大佐が中心となって実行された」と報じていたのに、逮捕状は只のダイビングインストラクターです。

なにせ、その逮捕状のウクライナ人の男が指名手配者データベースに乗っていない上に、しかもその名が「ヴォロディミル・Z」ですからね。ゼレンスキー大統領も「ヴォロディミル・Z」と読めます。あまりにも出来すぎていて、この男が本当に実在するのか疑いたくなるほどです。

つまり、EUはEUで、もし天然ガスを止めようものなら分かってるな、と逆にウクライナを脅し返しているのではないか。もちろん、ドイツあるいはEUがゼレンスキー大統領の弱みを握っているという前提での話ですけれども、ちょっと怪しい匂いがします。

果たしてウクライナが、スジャのガス関連施設をどうするか、また、EUがウクライナ支援をどうするか。

水面下では激しい攻防が行われているのかもしれませんね。





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