103万円の壁引き上げの焦点

今日はこの話題です。
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1.野党内一強となった国民民主


2月9日、横浜市南区の市議補選が投開票され、国民民主党新顔の熊本千尋氏が、共産党前職の荒木由美子氏や立憲民主党新顔の佐藤啓治氏、日本維新の会新顔の小西大貴氏を破り、初当選しました。当日有権者数は16万5035人、投票率は23.80%。

各候補の得票数は次の通りです。
15,250 熊本千尋  30 国民新
11,316 荒木由美子 65 共前
6,386 佐藤啓治  42 立新
5,342 小西大貴  31 維新
補選は自民党の遊佐大輔氏の辞職に伴うものだったのですけれども、遊佐氏が取材に「世界を舞台に活躍することを目指す」などと説明したことから、各党から批判が噴出し、自民は後任候補の擁立断念に追い込まれていました。

その為、この補選は主要野党同士が争う構図となり、立民は野田佳彦代表を、維新も前原誠司共同代表を現地に投入。国民民主は玉木氏や榛葉幹事長が街頭に立つなど力を入れたのですけれども、結果は国民民主の大勝。

国民民主は、1月の北九州市議選などでも議席を獲得し、夏の参院選に向けて野党内での「1強」が鮮明になってきました。

国民民主の古川元久代表代行は10日の党会合で、市議補選の勝利について「大きな成果だ。わが党に対する期待の重みをしっかりとかみしめたい」と評価。幹部の一人は、いわゆる「年収103万円の壁」の引き上げなどの政策が有権者に浸透していると分析し、「どこに応援演説に行っても想像以上の反響だ。こんなに反応が良いのは、政権交代前の民主党以来だ」と驚き、国民民主を支える労組幹部も「手応えを感じる」と顔を綻ばせています。

一方、最下位に沈んだ維新の青柳仁士政調会長は記者団に「今回の選挙一つをとって党勢が上向いているとか、下向いているとかは考えていない」と唇を噛みしめました。

そして、立民内には「ヤバい負け方だ」と危機感が広がり、旗幟を鮮明にすべきだとの意見も出始めています。党内では、地方選での敗北や国会論戦での埋没は消極的な経済政策にあるとし、消費税減税を訴える減税派が勢いを増しています。

けれども、野田代表ら主流派は財政規律を重んじており、立民重鎮は「消費税減税とかふらふらしているから選挙に負ける。選挙で強い人はみんな財政規律派だ」と、党内の減税派を牽制しています。

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2.公明の連立離脱発言


一方、世論の風向きを感じ、立ち位置を微妙に変えようとしているのが公明党です。

1月22日、公明党の斉藤鉄夫代表は朝日新聞の単独インタビューに応じ、いわゆる「連立離脱発言」をして注目を集めています。

インタビューで斉藤代表が語ったポイントは次の通りです。
・衆院選は大変厳しい結果となった。結党60年の節目だったが重く受け止め、結党の原点に立ち返って再スタートしたい
・公明党は与党の時も野党の時も合意形成の要になってきた自負がある。野党の賛成が得られなければ予算案も法案も通らない中、国民生活本位という視点から合意形成の要になり、存在感を示す。
・国民民主が訴える178万円は厳しいと思うが、123万円にこだわるものではない。
・高校授業料の無償化を4月から実施するには準備時間が足りないと思う。ただ方向性は理解できるので、建設的に議論したい
・(政治とカネの問題解明のための旧安倍派元会計責任者の国会への「参考人招致」問題について)「民間人の参考人招致を多数決で決定することは、民主主義のあり方として危険性をはらんでおり、あくまでも全会一致を主張している。ただし、もう一つ同じように大切なことは全容解明への姿勢だ。だからこそ自民には『自浄能力を発揮してください』と言っている。
・連立を選択した最大の理由は政治の安定で、長期的視野に立って政策実現もできた。ただ、自民に寄りすぎとの批判はある。衆院選の結果は、その指摘が当たっていたところもあるだろう。
・(次期参院選での自公連携について)自民と公明が選挙協力して改選過半数を目指すことが基本的な姿勢だ。(裏金関連議員の推薦については)疑念を払拭(ふっしょく)する努力をしているのか、地元の意見を聞いて判断する」と選挙時の状況次第との考えを表明。
・(「選択的夫婦別姓」の導入問題について)、今国会で結論を出さなければいけない時が来ている。法制審議会が答申をしてから、幅広い議論が20年来されてきた。公明が最も大切にしている人間の尊厳に関わることであり、実現したい
・通称使用拡大なら公明はオッケーと言わない。自公でまとめるのが第一原則だが、仮に自民と案がまとまらないという事態になれば、実現するためにいろいろなことを考える段階に入るだろう。
・(「実現しなければ、連立離脱もあり得るか」との問いに)何があっても自公連立は崩しません」ということはない。我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に連立離脱というのはあり得る。そういう緊張感をもって自民もやってくれていると思うし、我々も緊張感をもってやっている
・(選択的夫婦別姓が「譲れないもの」に入るのかとの問いに)これからの議論次第だ。この場で『入る』と言っても『入らない』と言っても、問題だから
・(「衆参同日選」について)「解散は首相が考えることだが、衆院選から数カ月しか経っておらず、まだ次の選挙のタイミングについて考えることはない。衆院選と参院選は選挙制度が違う。いろんな民意はわけて聞いた方がいい。その大原則から、衆参同日選には反対する
この発言に自民では、「自民への牽制球」との受け止めが大勢である一方、「今後の与野党攻防を見据えると、状況は思った以上に深刻」との危機感も広がっています。

ただでさえ少数与党であるのに、公明にまで抜けられてしまったら、もうどうにもならなくなります。

ある政治ジャーナリストは「まさに、自公関係の危うさを際立たせるためあえて語ったもの」、「今後は石破、斉藤両氏の協力関係の可否が政権維持への重要なカギとなる」「目前に迫る夏の政治決戦は、公明党・創価学会にとって『結党以来最大の難局』とされるだけに、参院選までの“中継ぎ”を託された斉藤氏は『強い覚悟』で臨むしかない」と分析しています。

自民幹部は「石破首相に、都議選について参院選と切り離す日程を強く求めたのは斉藤氏」と明かした上で、「その席で石破首相が年末年始に言及した『同日選』や『大連立』を巡る強い不満を突き付けたはず」とコメントしています。




3.百四十万円台後半


斎藤代表は、このインタビューで「国民民主が訴える178万円は厳しいと思うが、123万円にこだわるものではない」と「年収103万円の壁」の更なる引き上げを示唆しましたけれども、2月7日、自民党の宮沢税制調査会長と公明党の赤羽税制調査会長ら両党の税制調査会の幹部が国会内で会談し、「年収103万円の壁」の見直しをめぐって所得税の控除額や財源のあり方について意見を交わしました。

公明党は、政府・与党が123万円にするとしている所得税の控除額をさらに引き上げる案として食料品の物価上昇率や生活保護費を基準とするものなど複数の考え方を示し、国民民主党との税制協議の再開に向けて、来週半ばにも再度会談し調整を進めることになりました。

会談後、公明の赤羽税制調査会長は記者団に対し「控除額の引き上げにあたっては財源確保や理屈が大事だ。頭の体操として示した」と述べました。

また、公明党の岡本政務調査会長は、7日夜、BSフジの「プライムニュース」に出演し、「去年12月に交わした、自民・公明両党と国民民主党の3党の幹事長合意は大変に重い。約束した相手は国民民主党の幹事長だが、その後ろにいる国民との約束だと捉えているので、しっかり答えを出さなければならない……税制なので理屈が必要だが、食料品だけの物価上昇率をとると控除額は140万円台後半くらいになる。最後、合意する時には国民に理屈をきちんと説明して納得いただけることが大事だ」と述べました。

公明から、140万円台後半という具体的な額が出てきました。

約束した相手は国民民主党の幹事長の後ろにいる国民だという言い回しに、世論の風を感じていることが窺えます。


4.焦点は生存権


これについて、国民民主党の玉木氏は、今後、自民・公明両党との税制協議が再開されれば、生活保護費の支給額も念頭に控除額の引き上げに向けた議論が進む可能性があるという見解を示しました。

国民民主党内では政府・与党が123万円にするとしている「年収103万円の壁」の引き上げについて、生存権を保障する観点から、生活保護費の支給額を念頭に少なくとも156万円程度とする意見も出ているそうです。

これについて、国民民主党の玉木氏は、2月10日、訪問先の新潟県刈羽村で「物価が高騰する中、123万円の控除額では生存権を保障できる水準ではないので、さらなる引き上げを求めていきたい。123万円では新年度予算案に賛成することはできない」と述べた上で「控除額について党内で156万円ならいいと決めたことはないが、他の制度と整合性をとるうえで、最低でも生活保護の給付水準ぐらいの額は必要ではないかという提案はある。具体的な数字でどう体現していくのかがこれからの協議で考え方の軸の1つになっていくのではないか」と述べました。

1月28日のエントリー「自民を超えた国民民主」で、国民民主の榛葉幹事長が、国民民主が主張する引き上げ幅の8割から7割5分でも妥協の余地があると述べたことを紹介しましたけれども、156万への引き上げ幅53万は178万への引き上げ幅75万の約7割です。

筆者はこの件のエントリーで、国民民主は、103万の壁引き上げについて、政府の「国民の生存権」を認めさせるだけの額でなければならないと述べましたけれども、国民民主は156万であっても生活保護費の支給額水準を持ち出すことで、「国民の生存権」が守れるというロジックを立てようとしているようです。

自民は、物価上昇高を根拠に150万円以内だ、と「国民の生存権」ではない根拠を出していますけれども、実は、公明がだした140万円後半は、150万以内と物価上昇高を根拠にした額でもあり、自民に配慮もしているギリギリの額だともいえます。

140万円台後半と156万円。額にすればわずかの差ですけれども、その土台となる思想・論拠については、しっかり認識してチェックしておくべきだと思いますね。





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