トランプの艦艇派遣要請 《イラン情勢シリーズ#15》

今日はこの話題です。
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1.トランプ大統領の艦艇派遣要請


3月14日、アメリカのトランプ大統領は、石油輸送​の要衝ホルムズ海峡の安全確保のため多くの国が‌軍艦を派遣すると自身のSNSに投稿しました。

件の投稿は次の通りです。
多くの国々、特にイランによるホルムズ海峡封鎖の試みによって影響を受ける国々は、米国と協力して軍艦を派遣し、海峡の安全と通行を確保するだろう。我々はすでにイランの軍事力を100%破壊したが、イランはどれほど敗北したとしても、ドローンを1、2機飛ばしたり、機雷を敷設したり、近距離ミサイルをこの海峡沿い、あるいは海峡内に投下したりすることは容易だ。

中国、フランス、日本、韓国、英国など、この人為的な封鎖によって影響を受ける国々が、ホルムズ海峡に艦船を派遣し、完全に壊滅した国家による脅威がなくなることを願っている。その間、米国は沿岸部を徹底的に爆撃し、イランのボートや船舶を撃沈し続けるだろう。いずれにせよ、我々は間もなくホルムズ海峡を開放し、安全で自由な海峡にするだろう。

ドナルド・J・トランプ大統領
日本も名指しされています。翌15日、トランプ大統領は15日、ホルムズ海峡の安全確保に向けて艦船派遣を求めた国は「7ヶ国程度」に上ると大統領専用機内で明らかにしていますけれども、日本もその7ヶ国に入っていることはほぼ確実とみてよいでしょう。

更に、同じく15日、アメリカのライト・エネルギー長官は、ABCテレビの番組に出演し、日本や中国・韓国などアジアの各国はホルムズ海峡を通過して輸送される原油に大きく依存していると指摘し「ホルムズ海峡の再開のため世界各国が協力するのはきわめて合理的だ」と強調しました。

更にライト長官は「軍事作戦は数週間以内に終わる……原油の供給と価格はその後すみやかに元に戻るだろう」と付け加えています。

艦艇派遣を要請された7ヶ国は相当圧力を受けていると予想されます。


2.ホルムズ海峡派遣は非常にハードル高い


トランプ大統領の艦艇派遣要請発言について、CNNが名指しされた各国にコメントを求めたところ、中国とイギリスから回答があったと伝えています。

在米中国大使館の報道官は、艦艇派遣について言及を避け、中国は敵対行為の即時停止を要請するとし、「安定的で滞りのないエネルギー供給を確保する責任は全当事者にある……中東諸国の誠実な友人、戦略的パートナーとして、中国は紛争当事国を含む関係各方面との意思疎通を引き続き強化し、緊張緩和と平和の回復に向けて建設的な役割を果たしていく」との認識を示しました。

また、イギリス国防省の報道官も同様に、イギリスは「この地域の海上輸送の安全を確保するため、現在、同盟国やパートナー国とさまざまな選択肢を協議している」と述べるにとどめ、ホルムズ海峡へ軍艦を派遣するかどうかは明言しませんでした。

日本はというと、こちらも明言していません。

15日、NHKの討論番組に出演した、自民党の小林鷹之政調会長はたホルムズ海峡への日本の艦船の派遣について、法的な枠組みについて問われ、次の様に答えています。
ーー自民党の小林さん、この艦船への派遣への期待がありますけれども、この法的な枠組みというのは、どういうふうにお考えになりますか?

小林鷹之氏:
『非常にハードルは高い』と考えておりますが、

はい、現時点では政府としては、存立危機事態でも、あるいは重要影響事態でも、それに当たるという判断は行っておりません。

この艦船をこの船舶護衛のために送るかどうかという事につきましては、両論、この海上警備行動、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令するかどうか、というところにありますけれども、これは法理上、それは可能性を排除しませんけれども、今の紛争が続いている状況において、これはやはり慎重に判断すべき話なのかなと、『非常にハードルは高い』と考えておりますが、今後、このイランを含めた中東情勢がどのように変化していくのか、そうした方向を冷静に見極めて適切な対応をしていただきたいと考えております。……トランプ氏の発言は時々で変化するので、個人的な信頼関係の中で、真意がどこにあるのか見極めていただきたい」
このように、ハードルは高い、と否定的なニュアンスを醸し出しています。


3.トランプの罠


今回のトランプ大統領の艦艇派遣要請について、独立系アナリストのシャナカ・アンスレム・ペレラ氏が自身のXで次の投稿を行っています。
速報:トランプ氏が中国に対し、ドルに代わる水路の保護のために軍艦を派遣するよう招待しました。彼のTruth Social投稿を注意深く読んでください。これは戦争における最も戦略的に含意の深い一文です。

「中国、フランス、日本、韓国、英国、その他、この人工的な制約の影響を受ける国々が、ホルムズ海峡が完全に無力化された一国による脅威でなくなるよう、その地域に船舶を派遣してくれることを願っています。」

この招待は罠です。中国のあらゆる可能な対応が中国に損害を与えます。

北京が軍艦を派遣すれば、それはアメリカ主導の連合を正当化し、中国海軍の力を米国の指揮体系に従属させ、イランとの外交的中立を放棄することになります。現在、中国だけが人民元決済での海峡通過を許可されている国です。中国は影の艦隊の優位性、安価なイラン産原油、CIPSのレバレッジを一回の展開で失います。

北京が拒否すれば、それはワシントンが世界に見せたいことを確認するだけです:中国は自国原油輸入の45%を運ぶ水路の安全保障に貢献するよりも、グローバル経済を燃やし尽くすことを厭わない、ということです。1バレル96ドルを支払うすべての国が、人民元決済の影の艦隊による割安輸送で中国が支払う額より多くを支払っている中で、誰が現れ誰が現れなかったかを注視するでしょう。フリーライダーの物語は自ずから書き上げられ、アメリカはその物語でドル覇権の次の章を執筆します。

トランプ氏は6カ国を名指ししました。そのうち5カ国は同盟国またはパートナーです:日本は5日後にゴールデン・ドームに署名します。フランスはジブチから作戦を実施し、英国はバーレーンから、南韓国はホルムズのエネルギーへの直接露出を持っています。彼らの参加は予想されます。中国の参加が問題で、その問題こそが武器です。

2月28日以降、1600万バレルのイラン産原油が人民元決済の影のタンカーによって中国に輸送され、CIPSが2025年に43%成長で24.5兆ドルを処理し、イランが人民元貨物専用に海峡を再開することを提案している中で、トランプ氏は中国に影の経済か公的正当性かの選択を強いる一文を投稿しました。

この投稿には、どのブリーフィングも伝えていない告白が含まれています。「私たちはすでにイランの軍事能力の100%を破壊しましたが、彼らにとっては簡単です。ドローンを1、2機送り、機雷を投下し、またはこの水路のどこかで近距離ミサイルを届けるのは簡単で、彼らがどれほど惨敗しようとも。」アメリカ合衆国大統領は、完全な軍事的勝利が完全な水路安全保障に等しくないことを今、認めました。イランの軍隊は破壊されました。海岸線は破壊されていません。33キロメートルの海岸線、500ドルの機雷、2万ドルのドローンを持つ敗北した国は、世界で最も重要なチョークポイントを通る通行を無期限に拒否できます。なぜなら、拒否の武器は支配の武器より安価だからです。

「その間、アメリカは海岸線を徹底的に爆撃します。」海岸を爆撃する。船を撃つ。そして、6カ国が軍艦を派遣して、無保険でP&Iカバレッジがなく、民間セクターの意志もないタンカーを護衛することを願うのです。大統領自身が敗北した国がまだ脅威にできると認める水路を通過させるために。

連合の呼びかけはイランについてではありません。イランの軍隊は破壊されました。連合の呼びかけは、イラン後の世界についてです。アメリカが単独でタンカーを護衛すれば、海峡はアメリカの支配下で再開され、ドル価格設定が生き延びます。連合が護衛すれば、海峡は国際的合意の下で再開され、人民元対ホルムズ提案は死にます。誰も護衛しなければ、海峡は閉鎖されたままとなり、中国の影の艦隊だけがそれを通る唯一の交易となります。

トランプ氏は助けを求めているのではありません。彼はすべての国に、戦争が終わったときに海峡をどの通貨システムの下で運用するかを宣言するよう求めています。軍艦が投票用紙です。海峡が投票所です。そして、通貨が投票です。
なんと、艦艇派遣を要請した国に中国を入れたことが罠であり、「北京が軍艦を派遣すれば、それはアメリカ主導の連合を正当化し、中国海軍の力を米国の指揮体系に従属させ、イランとの外交的中立を放棄することになる。中国は影の艦隊の優位性、安価なイラン産原油、CIPSのレバレッジを失う」というのですね。

この通りだとすれば、恐ろしい戦略です。対中のみならず、ドル覇権の維持まで睨んだ戦略にさえみえます。




4.慌てず冷静に見極めを


また、15日、SAKISIRUの新田氏が「トランプ大統領、日本の軍艦ホルムズ派遣期待!慌てず冷静に見極めを」という動画を挙げています。

この中で、トランプ大統領の艦艇派遣要請について触れた部分について引用すると次の通りです。
ということで、トランプ大統領は日本に期待をしているようですが、さすがに大丈夫かなと思います。要は「ホルムズ海峡に軍艦を派遣しろ」ということです。その時、中国、フランス、韓国、イギリスと一緒に名前を挙げたのですが、その背景には「人工的な制約」、つまりイランによるホルムズ海峡の封鎖があるわけです。その影響を受けている国々に対して、希望的には艦船を派遣してほしいという期待ですが、SNSで投稿した以上、事実上の要求と見ていいでしょう。なかなか大変なことになってきました。

皆さんもご存知の通り、35年前の湾岸戦争後、1991年4月下旬から海上自衛隊がホルムズ湾に派遣され、イラクが敷設した機雷を撤去した実績があります。日本にとって海外の紛争リスクがある場所への自衛隊派遣は初めての事例で、大変な注目を集めました。当時は戦闘終了後ということもあり、任務を無事に終えて帰国しました。

しかし、今回は「軍艦」、しかも「艦隊派遣」と言っています。ガチの軍艦派遣ですかという話です。機雷掃海とも言っていない。トランプさんの真意はまだ分かりませんが、あれだけ見ると軍艦です。

一応、イージス艦の金剛型などを想定すれば、2001年の同時多発テロ後に当時の小泉政権が「テロ特措法」を作り、インド洋海域にイージス艦を派遣した実績があります。当時は法的な枠組みがなかったため派遣の根拠を作るために特措法を作りましたが、今回は法的要件の問題がやはり大きいです。

安倍さんが2015年の安保法制審議中に「ホルムズ海峡における機雷掃海は、存立危機事態に該当する場合もあり得る」と言及していました。ただ一方で「現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」とも打ち消しており、どっちなんだという感じではあります。

今のところ高市政権は、この件に関して「存立危機事態には当たらない」と言っています。左派メディアはもちろん、それ以外のメディアからも突っ込まれるポイントです。ちなみに存立危機事態とは、日本国の存立を脅かす事態のことです。ホルムズ海峡が止められ、日本のエネルギー供給が大打撃を受けて存立が危うくなるのであれば要件は成立するでしょうが、現状は他の確保ルートもあるため、米国に対して「お手柔らかに」と調整を図るしかないのでしょう。

【中略:前述のシャナカ・アンスレム・ペレラ氏のX投稿を紹介】

日本としては、冷静に見極める必要があります。イランもすかさず「アメリカ・イスラエル以外の船は通過できる」と声明を出していますが、問題は革命防衛隊が政府と足並みを揃えているかです。昔の日本のように統帥権がバラバラで、政府の影響力が及んでいない可能性がある。革命防衛隊が暴走する「関東軍化」が非常に懸念されます。

日本としては、トランプ政権の真意を読み解く必要があります。ただ、まさか本当に機雷掃海に行くわけにはいかないでしょう。国益にも関わるため完全に無視もできません。小泉進次郎さんのようなパイプを使いつつ、後方支援や給油支援などでお茶を濁す方向に持っていくしかないのかもしれません。

いずれにせよ、日本国内でもトランプさんの意図を冷静に議論することが重要です。
後方支援や給油支援で許して貰えるかどうか分かりませんけれども、軍艦が投票用紙で、ホルムズ海峡が投票所。そして、通貨が投票なのであれば、投票しないという選択肢はないと思います。

19日の日米首脳会談は非常に重要になると思いますね。





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