

1.少なくとも過去500年で最悪の状況
昨日のエントリーでは中国の旱魃について述べましたけれども、旱魃被害に遭っているのは中国だけではありません。ヨーロッパもそうです。
この夏、熱波に襲われたヨーロッパでは各地で山火事が発生しています。
イギリスでは40度を超える暑さに襲われ、各地で山火事が発生。フランスは7月だけでも南西部のジロンド県の山火事だけで約2万ヘクタールの森林が焼失し、3.7万人の住民が避難を余儀なくされました。スペイン、ポルトガルでも最高気温が40度前後を記録し、ポルトガルでは250カ所を超える山火事による森林焼失面積が2017年以降最大となりました。
ドイツも各地で40度超えの記録的な暑さに見舞われ、7月25日ごろから東部ブランデンブルク州のチェコとの国境沿いで両国にまたがって大規模な森林火災が発生。本格的な消火活動が空と陸から行われたのですけれども、完全な鎮火には「数週間かかる」と当局はみているようです。とくに乾燥した松林に覆われたこの地域では、第2次世界大戦で残された不発弾などの弾薬が地中に多く埋まっていることから消火が難航し、住民も避難を強いられています。
2022年のヨーロッパ全土の森林焼失面積は、欧州森林火災情報システム(EFFIS)によると、7月23日までの集計で51.5万ヘクタールを超えました。これは2006~2021年の同期間平均の約4倍にあたる値です。
また、旱魃による農作物への被害は甚大で、欧州委員会の最新の報告書によると、欧州の47%で土壌の水分が不足し、17%では農作物に「悪影響が出ている」状態とのことです。特にトウモロコシの収穫量が過去5年平均と比べ16%、大豆は15%それぞれ減少すると推計しています。
フランスの農家は「水がなければ命はない」と失望を隠せない状況で「今後、熱波が毎年繰り返し襲ってくれば、将来に期待は持てない」と悲鳴を上げています。
そして更に、今回の少雨や熱波は、欧州全域で河川の水位低下を招いています。
イタリアでは70年間で河川の水位が最低に達したことから5つの地域で7月後半から非常事態宣言を出していますし、ヨーロッパの熱波の影響でドイツなどを流れる物流の大動脈、ライン川の水位も低下し、航行する船の積載量が通常の25%に制限されています。
報告書は、イタリアやフランス南西部の事例を基に「貯水量の減少が水力発電やその他発電所の冷却システムに深刻な影響を与えている」と説明。水位低下で船舶に搭載できる貨物量が減り、オランダでは燃料輸送に支障が出ているとしています。
ウクライナ情勢でエネルギー問題に直面するなか、輸送が滞ることで電力不足や工場の稼働停止などが懸念されています。
欧州委員会は「少なくとも過去500年で最悪の状況」と懸念を表明していることから、相当危機的な状況であることが窺えます。
2.ロシア、フランスへのガス供給停止
そんな欧州にロシアが追い打ちを掛けました。
8月30日、ロシア国営ガス大手ガスプロムは、フランスのエネルギー大手エンジーに対し、天然ガスの供給を9月1日から停止すると通告しました。エンジー側の料金未払いが原因としているのですけれども、需要が高まる冬を前に、欧州の天然ガス供給不足への懸念がさらに広がると見られています。
フランスでは国内の原発の原子炉56基のうち32基が点検などで停止しており、電気料金の値上がりを加速させ、フランスは周辺国からガスや石炭火力発電による電力の輸入を増加せざるを得ない状況に追い込まれています。
フランスのガス備蓄は現在9割の水準に達しているそうですけれども、フランス政府はさらに国内のエネルギー供給を安定させる方策を探るべく、天然ガス産出国であるアルジェリアとの関係強化を進めています。
8月27日、マクロン大統領はアルジェリアを訪問し、両国の協力を強化する「アルジェ宣言」に調印しています。訪問にはエンジーのトップも同行したようで、フランスのラジオによると、アルジェリアはフランス向け天然ガスの輸出を50%増加させる検討に入り、エンジーは、アルジェリア国営エネルギー企業ソナトラックと、フランス向けのガス供給増加の中期契約について議論しているそうです。
3.奔走するドイツ
ロシア以外のガス輸入先を模索しているのはドイツも同じです。
5月20日、ドイツ政府はカタールとエネルギー分野で協業することで基本合意しました。
LNGのほか、グリーン水素、再生可能エネルギー電力の分野で緊密に協業するとのことです。
カタールはペルシャ湾にあるノースドーム・ガス田の採掘能力を2026年までに現在の年7700万トンから1億2600万トンに拡大することを計画しているのですけれども、このことからドイツへの本格的なLNG輸出開始は2026年になるとみられていました。
ところが、カタールのムハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アール・サーニー副首相はドイツ紙『ハンデルスブラット』に、国営企業カタール・エナジーがアメリカのテキサス州に持つLNG輸出ターミナル「ゴールデンパス」からドイツ向けの輸出を2024年に開始する意向を表明しました。また、ノースドーム・ガス田からの供給も25年に開始できる可能性があるとしたようです。
一方、ドイツのショルツ首相は5月から開始したアフリカ歴訪の最初の国としてセネガルを訪問しています。こちらもガス狙いです。
セネガルから隣国モーリタニアにかけての大西洋沖では2014年以降、大規模な海底油田・ガス田が相次いで発見されています。
けれども、セネガルには採掘に必要な資金や技術はなく、開発は欧米などの外資頼みです。
大西洋に面した北部の港町サンルイの沖合約100キロでは、既にイギリス石油大手BPなどが天然ガス田を開発しています。
こちらは、水深3000メートルの海底に設置した井戸から天然ガスを採掘し、沖合10キロに建設中の精製施設までパイプラインで運んだ後、船上で液化して輸出するとのことで、2023年にも液化天然ガス(LNG)の生産が始まる予定としています。
ドイツはセネガルの未開発の鉱区に開発段階から関与することで、天然ガスの権益確保を狙っているとみられています。ショルツ首相は記者会見で、ガス生産での協力に向け専門家レベルで集中協議することを明らかにし、セネガルのマッキー・サル大統領も欧州向けのガス輸出に意欲を示しています。
こうしたことから、ドイツも将来的にカタールからもLNGを輸入する可能性が出てきました。
4.EUは冬を乗り越えられるか
ロシア国営天然ガス大手のガスプロムは、パイプライン「ノルドストリーム1」によるドイツへのガス供給量を減らしていますけれども、ドイツにとっては、今冬のガスの確保が焦眉の急となっています。
ただ、カタールのガスは、前倒しとはいえ2024年からの供給ですし、セネガルのLNGにしてもこれから開発です。仮にイギリスのBPから買い付けるにしても2023年からの話です。
そもそも現在、ドイツにはLNGターミナルがなく、カタールやセネガルのLNGを直接受け取ることができません。ドイツのショルツ首相は、LNGターミナルの建設を表明し、世界各地からの2022年末の輸入開始をすべく、既に建設を開始しています。
ドイツはLNGターミナルの建設に際し、約25億ユーロ(約3400億円)の資金を投入して、浮体式LNGターミナル4基をリースする計画っを発表。最終的には、ロシアからの輸入量のおよそ半分である270億立方メートルの天然ガスを確保できるとしています。
ただ、現在、ヨーロッパには37基のLNGターミナルがあり、うち26基が、EU加盟国のターミナルです。
このことから、「ドイツが自前のLNGターミナルを建設しなくとも、ベルギーやオランダ、あるいはフランスのターミナルを経由して輸入すればよいのではないか」とか、「政府は自国のエネルギー安全保障を主張しているが、EUのパートナーを信用していないのか」などといった、反対意見もあるようです。
更に、非政府組織「Food & Water Action Europe」によると、「2021年1月から2022年1月半ばにおける、EUにおける全LNGターミナルの稼働率はおよそ40%にすぎなかった」とのことで、これが本当であれば、ドイツのLNGターミナル建設が間に合わなくても、EU加盟国のターミナルを融通してもらうことでなんとかカバーできるのかもしれません。
残る問題は、そのターミナルに入れるLNGをどう確保するかです。
今年3月、日本は自身が確保したLNGの一部を欧州に融通していましたけれども、今年の冬もまたぞろ、同じく融通することになるかもしれませんね。
この記事へのコメント
aki
大変恐縮に存じますが、この危機をどうか皆様に知って頂きたいです。
中国のミサイルが初めて日本のEEZに着弾する深刻な危機の中、
敵国が望む改憲阻止の為、中韓と連携し野党メディアが倒閣へ扇動をかける状況にどうか気付いて頂きたいです。(09年は扇動が成功)
統一教会員を公認候補の野党の癒着は黙る一方、
立民は殺人を犯している革マル、北と韓国政府から資金投入されている朝鮮総連や民団等、反社勢から献金を受けながら、野党が全体に北と密接な事には触れず、
宗教規制にも要改憲の中、霊感商法無力化の法改正や、統一の北朝鮮への送金に規制をかける等、反共から親北に変節した統一協会潰しに安倍元総理が取り組んでいた事も報じず倒閣一色の裏で、
中朝は核を日本に向け、9条の様なウイグル等へ虐殺を拡げながら近年日本の尖閣へ侵犯を激化、
ロシアは昨年北海道侵攻予定であった事も明かされ、改憲せず攻撃力を持たずの現防衛力では、
多くの日本人を銃殺した韓国の竹島不法占拠、北の日本人拉致、中国の尖閣侵犯にも、9条により日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ない事が示しています。
中韓の間接侵略は、野党が法制化を目指す外国人参政権や戸籍廃止への夫婦別姓、日本分断を図る維新の道州制や日本人のみ弾圧対象ヘイトスピーチ法等、多様性と言う"中韓の声反映"に始まっており、
野党の反対によりスパイ防止法が無い日本で、制度の危険性を隠し世論を誘導する現状からも、中韓浸透工作は最終段階である事、
日本でウクライナの悲劇を生まぬ為、一人でも多くの方に目覚めて頂きたいと切に思い貼らせて頂きます。
pachitou.com/2022/07/23/%e6…
長文、大変申し訳ありません。